人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

乾緑郎著「完全なる首長竜の日」を読む~胡蝶の夢の世界

2013年06月20日 07時00分50秒 | 日記

20日(木)。昨日は当社の定時株主総会と取締役会があり、大過なく無事終了したので、地下の焼鳥Rで打ち上げをやりました 普段は飲まないU専務をはじめOBのS氏も交えて11人で飲みました その後、専務が「テナント店舗のもう1軒にも寄らないと不公平になる」と珍しく主張したため焼鳥0に場所を移してさらに飲みました もう飲めない!といったところで解散、OBのS氏、X部長と3人でタクシー に乗り込み上野に向かいました。言うまでもなく、カラオケ歌合戦 を展開し10時半まで歌いまくりました。という訳で、今日も朝から頭が頭痛ですまんねん

 

 閑話休題  

 

17日の日経「夕刊文化」欄に文化部の関優子記者が「クラシック もっと気軽に~交響楽団・劇場、30~40代取り込む」という記事を書いています 要約すると、

「読売日本交響楽団は後楽園の文京シビックホールで”読響カレッジ”を始めた 開演を午後8時と遅くし、上演時間も休憩なしの1時間にして働き盛りの30~40代を取り込もうとする 新国立劇場は39歳以下向けの割引制度”アカデミック39”を2月にスタートさせた 26~39歳を対象に、残席があるオペラ・バレエ公演のチケットを原則半額とする 多くの劇場やオーケストラには若者向けの割引料金があるが、25歳前後を区切りとする例が多い 新たな取り組みはさらに一つ上の世代を取り込み、将来にわたって聴衆を育てる狙いがある

クラシックのコンサートやオペラに行って常々感じるのは、聴衆の高齢化です 記事にも「新国立劇場の友の会”ジ・アトレ”の平均年齢は約60歳」とありました。今の聴衆がこのまま持ち上がって超高齢化していき、下の世代がコンサートに通うようにならないと、コンサートやオペラの公演が成り立たなくなる恐れがあります

いまから10年数年前、NHKホールを会場とするN響の定期会員だったのですが、N響の会員はその時点ですでに「ここは老人ホームか」と思うほど超高齢化が進んでいました 古典派、ロマン派のプログラムの時は会場がいっぱいになるのですが、ストラヴィンスキー、シェーンベルクといった近現代のプログラムになると途端に来なくなってしまうのです 極めて保守的な聴衆の集まりだと思いました

新聞業界の場合は、「ニュースペーパー・イン・エデュケーション(教育に新聞を)」という運動があり、小中学校の教材として新聞を活用することで、子どもの時から新聞に親しみをもってもらい、将来の読者を増やそうと努力しています

一方、クラシック音楽業界では、一時、25歳未満の若者層を取り込もうと割引料金を導入してきたのが、ここにきて、その上の30~40歳代の年齢層をターゲットに加えて聴衆を増やそうとしている訳です

そうした新たな試みは大いにやって欲しいと思います しかし、いつも思うのは、定期会員制度は、一回ごとにチケットを買うよりもかなり割安な料金設定になっている一方で、単発のチケットは高すぎるということです N響(NHKホール、サントリーホール)を例にとればS席=8,500円、A席=7,000円、B席=5,500円、C席=4,500円、D席=3,500円です どのランクも定期会員が優先的に良い席を押さえているので、良い席が残っているはずはなく、よほどのことがない限り単発でS席を買う気持ちは起こりません。どんなに良くてA席です もっと安くすれば1ランク上の席を買うでしょう

目を海外の来日オーケストラに転じると、交響曲と言えばドヴォルザークの第9番「新世界より」かベートーヴェンの第5番「運命」、ヴァイオリン協奏曲と言えばメンデルスゾーンの「ホ短調協奏曲」、ピアノ協奏曲と言えばベートーヴェンの第5番「皇帝」かチャイコフスキーの「第1番変ロ短調」というステレオタイプのプログラミングが目立ちます いずれも名曲中の名曲であることは認めますが、日本の聴衆を馬鹿にするのもいい加減にしろと叫びたい気持ちで一杯です 「呼び屋さん」がいつまでもそういう経営効率優先主義を続ける限り、まともな聴衆は離れていきます

 

  も一度、閑話休題  

 

乾緑郎著「完全なる首長竜の日」(宝島社文庫)を読み終わりました この作品は第9回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です

植物状態になった患者とコミュニケートできる医療器具「SCインターフェース」が開発された。人気少女漫画家の和淳美(かずあつみ)は、自殺未遂により意識不明の弟の浩市と機械を通じて対話を続ける 淳美が知りたいのは、なぜ浩市は自殺を図ったのかということ。しかし、浩市は答えない。そもそも浩市は自殺未遂事件を起こしたのか

この小説のテーマは中国の「胡蝶の夢」です。荘周という人が夢の中で蝶になったが、それはもしかしたら蝶が見ている荘周の夢かもしれない、という中国の故事です この本を読んでいると、いま読んでいるところは現実のシーンなのか、淳美の見ている夢のシーンなのか、判然としない部分が数多くあります 過去と現在、夢と現実が混然一体となった物語です

推理小説を読んでいると、今まで被害者だと思っていた人が実は犯人だった、ということが往々にしてありますが、それに近い結末が待っています

この作品は「このミス」の審査員が満場一致で選んだブッチギリの大賞受賞作ということです 著者の優れたストーリーテラーぶりに、わずか1日半で読み終わりました この作品は黒澤清監督により「リアル~完全なる首長竜の日~」として映画化され、現在上映中とのこと。さて、あなたは読んでから観るか、観てから読むか

 

          

 

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ヴィヴィアン・ハーグナーのヴァイオリン・リサイタルを聴く~クールなブラームス

2013年06月19日 07時00分21秒 | 日記

19日(水)。昨日の日経朝刊に「新入社員の間違いやすい慣用句」が載っていました

「寸暇を惜しまず努力して、押しも押されぬ第一人者になって、汚名を晩回したのに、足元をすくわれた」

これを正しく言うと、

「寸暇を惜しんで努力して、押しも押されもせぬ第一人者になって、汚名を返上したのに、足をすくわれた」

となります。「日本語は難しい」というのは的を得た指摘です。これ、正しくは「的を射た」指摘です

 

  閑話休題   

 

昨夕、紀尾井ホールでヴィヴィアン・ハーグナーのヴァイオリン・リサイタルを聴きました プログラムは①シューベルト「ヴァイオリンとピアノのためのロンド ロ短調」、②リスト「悲しみのゴンドラ」、③同「協奏的大二重奏曲」、④ブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調”雨の歌”」、⑤同「ハンガリー舞曲集」より第17番、第19番、第3番、第6番。ピアノは高橋礼恵です

ハーグナーはミュンヘン生まれ。これまでベルリン・フィル、ミュンヘン・フィル、ゲヴァントハウス管弦楽団、ニューヨーク・フィルなど世界の主要オーケストラと共演している実力者です

 

          

 

自席は1階12列5番。左ブロック右通路側です。会場は8~9割の入りでしょうか ヴィヴィアン・ハーグナーは白地にゴールドの模様が入った衣装、高橋礼恵は黒を基調としたシルバーのラメ入りのドレスで登場です

1曲目のシューベルト「ヴァイオリンとピアノのためのロンド ロ短調」は1826年10月の作品です。導入部に続いてシューベルト特有のロンドが延々と続きます ハーグナーは身体の動きを最小限にとどめ淡々と演奏するので、始めはちょっとヴァイオリンが大人しいかな?と思いましたが、徐々に調子が乗ってきたのか熱を帯びてきます

2曲目のリスト「悲しみのゴンドラ」は1882年の年末頃ヴェネチアで作曲したと言われています 当時、ヴェネチアでは葬送の際に遺体がゴンドラで運ばれる例が多く、リストはその印象をもとに書いたと思われます 静かに重い足取りの音楽が奏でられます。ハーグナーは何故この曲を選んだのだろうか、とふと疑問に思いました

次いで演奏されたリストの「協奏的大二重奏曲」は1835年の作品です。超絶技巧を要する箇所もあることはありますが、曲のタイトルほど大げさな派手さはありません

休憩後の1曲目、ブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調」は「雨の歌」という副題が付けられていますが、これは、彼が数年前に作曲した歌曲「雨の歌」が第3楽章に引用されているところから付けられたものです

ハーグナーはこの有名な曲も淡々と弾いていきます。彼女の演奏を聴いていて、先日聴いた韓国のチョン・キョンファとは対局にあるヴァイオリニストだな、と思いました 一言でいえばハーグナーはクールです。実に冷静で過激に突っ走ることはありません それと、もう一つ思ったのは、この人は弱音を大切にする人だな、ということです。弱音部が非常にきれいです

最後はブラームスの「ハンガリー舞曲集」から第17番、第19番、第3番、第6番が演奏されました。同じ舞曲でも曲想に応じて見事に弾き分けていました

会場いっぱいの拍手に、「アリガトウ!(聴衆)。ハンガリー・ダンス・セブン」と言って、ブラームスのハンガリー舞曲第7番を鮮やかに演奏しました。

鳴り止まない拍手 に、シューベルトの「ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第3番Op137-3」を穏やかに演奏しました

この選曲が、彼女の演奏スタイルをよく現していると思いました。ヴァイオリンのテクニックをひけらかすのではなく、じっくりと聴いてほしい、そのために自分にふさわしい曲を選ぶ、という主張を感じます

最後に付け加えるとすれば、パートナーの高橋礼恵のピアノです。前半のシューベルトやリストなどは、むしろ高橋がハーグナーを励まし、後押ししていたように感じました この二人の相性は抜群に良いと思います。今後も注目したいと思います

 

          

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サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン フィナーレを聴く

2013年06月18日 07時00分34秒 | 日記

18日(火)。明日19日(水)12:05から内幸町の飯野ビル1階エントランスホールで「ランチタイムコンサート」があります 今回の出演者は国立音楽大学出身者、フルートの下払桐子さんとピアノの河野俊也さんです プログラムは①モーツアルト「ディヴェルティメント第17番K.334」から「メヌエット」、②バッハ「フルート・ソナタBWV1031」、③同「パルティータ・イ短調」より、④ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第21番”ワルトシュタイン”」より第1楽章、ジュナン「ヴェニスの謝肉祭」です

内幸町に勤務の方、飯野ビル方面にお越しの方は是非お立ち寄りください

 

          

 

  閑話休題  

 

16日(日)午後1時半からサントリーホールのブルーローズ(小ホール)で、同ホール・チェンバーミュージック・ガーデン・フィナーレ公演を聴きました

プログラムは①ドヴォルザーク「ピアノ三重奏曲第3番へ短調」、②サントリーホール・オペラ・アカデミー選抜メンバーによる歌曲、③ショスタコーヴィチ「弦楽八重奏のための2つの小品」、④ボッケり―二「2つのチェロのためのソナタ ハ長調」、⑤ポッパー「2つのチェロのための組曲」、⑥ブラームス「ピアノ五重奏曲へ短調」です

 

          

 

自席はRb7列3番、右ブロック左サイドです。さすがにフィナーレ公演は人気が高く、センターブロックのチケットは押さえられませんでした もちろん会場は満席

1曲目のドヴォルザーク「ピアノ三重奏曲第3番ヘ短調」は、アルク・トリオの演奏です。メンバーはヴァイオリン=依田真宣、チェロ=小野木遼、ピアノ=小澤佳永で、ともに東京藝大出身者です

第1楽章はまるでブラームスのようなほとばしる情熱を感じさせる曲想です 第2楽章はスケルツォ的なポルカ、第3楽章は穏やかな心休まる曲想、第4楽章は情熱的な音楽です。依田のヴァイオリンと小野木のチェロが実によく歌います

 

          

 

次にサントリーホール・オペラ・アカデミー選抜メンバーによる演奏がありました 2011年秋に開設した若い音楽家のための「プリマヴェーラ・コース」第1期を優秀な成績で修了したフェロー2名が選ばれました

一人目は東京藝大出身の保科瑠衣(ほしな・るい)です。淡いベージュのドレスでピアノの古藤田みゆきとともに登場します トスティの「よそ者(異邦人)」とザンドナーイの「けがれなき女(ひと)」をドラマティックに歌い上げました

二人目は東京音大出身で二期会会員の佐藤優子です。朱色のドレスで登場します ちょっとみ「舟歌」の矢代亜紀に似ています

最初にロッシーニの「約束」を軽やかに歌い、次いでオッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」から有名なアリア「森の小鳥は憧れを歌う」を、ネジまき人形オランピアのユーモラスな動きを表現しながら見事に歌い上げました この日配られたプロフィールを見ると、今年8月に二期会公演「ホフマン物語」でオランピア役で出演する予定と書かれていました。彼女、いい線いっています。成功すると思います ただ、「ホフマンの舟歌」ならいいけど、矢代亜紀の「舟歌」は止めといた方がいいと思います。イメージ壊れるから

プログラム前半の最後はショスタコーヴィチ「弦楽八重奏のための2つの小品」です。この曲はショスタコーヴィチが18歳の時に書き始められました。「プレリュード」と「スケルツォ」から成ります

向かって左サイドに、楽譜を前にしたクァルテット・エクセルシオが、右サイドに、マックブックの電子楽譜を前にしたボロメーオ・ストリング・クァルテットが、左右シンメトリックな態勢でスタンバイします

 

          

 

とくに「スケルツォ」はショスタコーヴィチらしい諧謔的な激しい音楽です 若き日からショスタコーヴィチはリズム感溢れる”前進あるのみ”の曲を書いていたのですね 第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが狂ったように弦を擦ります いいなと思ったのは大友肇のチェロです。実にいい仕事をしています

 

          

 

休憩後の最初はボッケリー二「2つのチェロのためのソナタ ハ長調」です。ボッケリー二はスペインの宮廷付チェロ奏者兼作曲家として働いていましたが、弦楽五重奏曲を100曲以上も作曲しました 演奏はハーゲン・クァルテットのチェリスト、クレメンス・ハーゲンと堤剛です

3つの楽章から成りますが、ハイドンのチェロ協奏曲によく似たフレーズが現われる第1楽章を聴いて、チェロ2本だけでこんなにも豊かな音楽が奏でられるのか、とました。

次いで同じ演奏家によってポッパー「2つのチェロのための組曲」が演奏されます ポッパーはプラハの教会音楽家のもとに生まれました。24歳でウィーン宮廷歌劇場の首席チェリストとなり、同楽団のヘルメスベルガ―とともに弦楽四重奏団を結成しました この曲は4つの曲から成りますが、ハーゲンと堤は軽快に美しく伸びやかなチェロを奏でていました

最後の曲はブラームスの「ピアノ五重奏曲ヘ短調」です。ボロメーオ・ストリング・クァルテットと小山実稚恵(ピアノ)によって演奏されます

ブラームスは29歳の時、この作品を弦楽五重奏曲として作曲しました その後、友人のヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムの助言もあり、2台のピアノのためのソナタとして書き直しました その後さらに、クララ・シューマンの助言もあって、再び弦楽器を取り入れて、1864年秋にピアノと弦楽四重奏という現在の形に完成しました

 

          

           (ピアノ五重奏曲の前身”2台のピアノのためのソナタ”を

            収録したアファナシエフとスハーノフの演奏によるCD)

 

小山のピアノから入りますが、ボロメーオ・ストリング・カルテットは例によってマックブックの電子楽譜を見ながら演奏します なかなかの熱演ですが、気のせいか、ブラームスを演奏するにはちょっと明るすぎるというか、軽いというか、そんな感じがしました 具体的にどこがどうだ、とは言えないのですが、どこか物足りなさを感じました

とは言うものの、フィナーレの熱演は圧倒的で、会場を興奮の坩堝に陥れました 今年のチェンバーミュージック・ガーデンの最後を飾るのに相応しい素晴らしい演奏だったと思います

午後1時半に始まったこのフィナーレ・コンサートが終了したのは午後4時45分、3時間以上にわたるマラソン・コンサートでした これで、今年のチェンバーミュージック・ガーデンも終わり 来年を楽しみにしたいと思います

 

          

 

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ボロメ―オ・ストリング・クァルテットのベートーヴェン・サイクルⅤを聴く~第13番、14番、15番

2013年06月17日 07時00分23秒 | 日記

17日(月)。先週は11日(火)から16日(日)まで6日連続でサントリーホールに通いました このうち5日間がブルーローズ(小ホール)でした。昨日会場に入るとロビーの一角に本物のブルーローズ(青いバラ)が飾られていました 「青いバラ」は皆さんもご存知の通り、サントリーが世界で初めて青の色素を持つバラを開発することに成功したものです 「青いバラ」は、それまでは「不可能」「奇跡」の代名詞のように使われてきました。それが、今や現実となり、花言葉は「夢 かなう」とのこと。音楽を愛する人々の可能性が花開き、奇跡のように新たな感動や発見の愉しみが生まれる場所にしようと、小ホールは「ブルーローズ」と名付けられました

 

          

 

顔を近づけるとバラのいい香りが漂ってきます 色はどちらかと言うと薄紫に近い色です。長時間飾っておくと色が変わってくるのかも知れません ここで、バラの花に成り代わって一句。 

     人々が 香りを嗅いでいくたびに 赤くなったり 青くなったり 

 

  閑話休題  

 

15日(土)は午後2時からのアファナシエフのピアノ・リサイタルに次いで、夜7時から、ブルーローズで、ボロメ―オ・ストリング・クァルテットのベートーヴェン・サイクルⅤを聴きました プログラムは弦楽四重奏曲①第15番イ短調、②同第14番嬰ハ短調、③第13番変ロ長調”大フーガ付”です

 

          

 

自席はC4列3番、センターブロック左サイドです。会場はほぼ満席 ボロメーオ・クァルテットのベートーヴェンを聴くのは今回が3回目です。6日には第10番”ハープ”、第11番”セリオーソ”、第12番を、13日には大フーガ、第16番、第13番を聴きました。これで後期の弦楽四重奏曲すべてを彼らの演奏で聴いたことになります

楽章の数で言うと、第10番から第12番までは4楽章形式ですが、第13番は6楽章、第14番は7楽章、第15番は5楽章、そして第16番は4楽章に戻ります。これほど自由に形式を変えたのはベートーヴェンが初めてでしょう

いつものように、舞台上には専用スタンドにマックブックが載せられています。ボロメーオ・クァルテットは紙の楽譜でなく、マックブックで電子楽譜を見ながら演奏します 足元のフットマウスを軽く踏むことによって画面上の譜面をめくります

1曲目の第15番イ短調は、「病癒えた者の神への感謝の歌、リディア旋法で」と記されている第3楽章が中心テーマになっています 非常に穏やかな心安らぐ曲です

一旦休憩を取って、2曲目の第14番の演奏に入ります。7つの楽章から成りますが、すべての楽章が続けて演奏されます。革新者ベートーヴェンの面目躍如といった曲です 最後の第7楽楽章は、終わるようでなかなか終わりません。シューベルトはこういったところを真似したのかも知れません

またしても休憩を取って、最後は第13番「大フーガ付」です。13日に「大フーガ」だけ独立した形で聴いたのですが、どこが良いのかさっぱり分かりませんでした しかし、今回、全体の中の第6楽章として聴いて初めて、その良さの一端が少し分かるような気がしました この時、ある曲の一部だけを取り出して演奏するのは、その曲を理解するためには良くないことだと思いました

 

          

 

5日間にわたりベートーヴェンの弦楽四重奏曲の全曲演奏を成し遂げたボロメーオ・クァルテットの面々に惜しみない拍手 とブラボーが贈られました

午後7時に始まったこの日の公演は、途中15分の休憩を2回挟んで9時50分に終了しました

今回の演奏を振り返ってみて、個人的な印象としては、一昨年の第1回目のベートーヴェン・サイクルを担ったパシフィカ・クァルテットがこれまでで最高の出来だったと思います 彼らの演奏が気に入って、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲CD全集を買ったほどです チェンバーミュージックガーデンに、もう一度パシフィカ・クァルテットを呼んでほしいと切望します

 

          

 

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アファナシエフのピアノ・リサイタルを聴く~ブラームスの後期ピアノ小品集

2013年06月16日 07時28分53秒 | 日記

16日(日)。昨日は午後2時から紀尾井ホールでヴァレリー・アファナシエフのピアノ・リサイタルを、夜7時からサントリーホールのブルーローズでボロメ―オ・ストリング・クァルテットのベートーヴェン・サイクルⅤを聴きました ここではアファナシエフのピアノ・リサイタルの模様を書きます

プログラムはブラームスの後期のピアノ小品で①7つの幻想曲・作品116、②3つの間奏曲・作品117、③6つのピアノ曲・作品118、④4つのピアノ曲・作品119です

 

          

 

自席は1階15列5番、左ブロックの右通路側です。会場はほぼ満席 ホールに入ってすぐ左にあるCD売り場には人だかりができています アファナシエフは気難しそうなのでサイン会などしないのかと思っていたら「サイン会あり」の表示が出ています この日演奏するブラームスの後期ピアノ小品集のCDは2枚とも持っているので(写真上)、ブラームスの「2台のピアノのためのソナタ」のCD(写真下)を買いました。サインもらうんだもんね

 

          

 

              

 

作品116の「7つの幻想曲」と117の「3つの間奏曲」は1892年に、作品118と119は1893年に、ザルツブルク郊外のバート・イシュルで作曲されました ブラームス59歳~60歳の時の作品です

会場の照明が落とされ、アファナシエフの登場です。会場に軽く一礼したかと思うとすぐにピアノに向かい作品116を弾きはじめました この素っ気なさはいつもの彼の演奏パターンです 彼の指使いを見ていると、ほれぼれします。指がしなやかでとても綺麗です 指だけ見ているとまるで貴婦人のようです。1947年生まれなので現在66歳ですが

7つの幻想曲は「奇想曲」と「間奏曲」が交互に演奏されます。アファナシエフは大袈裟な身振りは微塵もなく、淡々と音を紡いでいきます

作品116が終わると、立ち上がって一礼し、すぐに座り直して作品117に入ります。これも彼の演奏パターンです 私はブラームスのピアノ曲の中ではこの「3つの間奏曲」の第1曲が一番好きです

この曲を聴いておやっ?と思ったのは、前回この曲を、確か東京オペラシティコンサートホールで聴いた時には、今にも止まりそうなゆったりしたテンポだったのが、この日の演奏は普通に近いテンポだったということです 彼の演奏スタイルが変わったのか、あるいは私の勘違いなのか、わかりませんしかし、真珠の粒をばらまいた時のようなキラキラ光る音の粒立ちはまったく変わりません

それは休憩後の作品118についても最後の作品119についてもまったく変わりません

 

          

 

作品119の「4つのピアノ曲」の第4曲「ラプソディー」をスケールの大きな演奏で弾き切り、会場一杯の拍手を受けました 何度も舞台に呼び戻されましたが、すまなそうな顔をして素っ気なく引き上げていきました サイン会を控えているので指を酷使するアンコールは弾きたくないのでしょう

通路側席にいるので有利だと思ってサイン会場に向かうと、すでに長蛇の列が出来ていました しばし待たされましたが、アファナシエフが登場しました。ニコニコしながらサインをする彼を見ていて、気難しいアファナシエフというイメージが吹き飛びました

 

          

 

係りの女性から「サインは黒のサインペンで書くので黒っぽいCDジャケットには書けない」と言われたので、CDそのものにサインをしてもらうように準備しました ところが、アファナシエフが持っていたサインペンは金色でした。そうであればCDジャケットにサインをもらったのに・・・・・係りの女性の行為を世間では「小さな親切、大きなお世話」と言います でも、彼のサインをもらったので良い思い出が出来ました。時間がある時にゆっくり聴こうと思います

 

          

           (正面から撮るとアファナシエフの頭と同じでケータイを写し

            込んでしまうので、斜に構えて撮りました

 

          

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サントリーホール室内楽アカデミーゲストコンサートを聴く~ブラームス、モーツアルト

2013年06月15日 07時01分03秒 | 日記

15日(金)。昨夕、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で、同ホール室内楽アカデミーゲストコンサートを聴きました プログラムは①ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」、②バルトーク「弦楽四重奏曲第2番」、③モーツアルト「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K.364」です

 

          

 

自席はC3列3番、センターブロック左サイドです。会場はほぼ満員です

最初のブラームス「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」を生で聴くのは、4月18日に新日本フィル室内楽シリーズで、同フィル第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さん他による熱演を聴いて以来です

この曲は渡辺玲子(ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)というベテラン二人と、小野木遼(チェロ)、内藤由衣(ピアノ)が演奏しました

この作品は1855年頃ブラームス(1833-97)が20代の始めに構想され、1861年に完成しましたが、ハンブルクでの初演ではクララ・シューマンがピアノを弾きました

渡辺はグリーンの、川本はマリンブルーの、内藤はゴールドの衣装で登場します 貫録たっぷり、大ベテランの渡辺、川本を相手に内藤はしっかりした音楽性を持って若き日のブラームスの音楽に対峙していました 第4楽章「ジプシー風ロンド」は速いパッセージで各楽器が競奏しますが、こういうところは何とも言えないブラームスの魅力の一つです

演奏が終わると、川本が後ろにいる内藤に、前に出てくるよう促して、良き先輩の手本を見せていました。川本は姉御肌の人のようです

2曲目のバルトーク「弦楽四重奏曲第2番」は、クァルテット・ソレイユの演奏です。メンバーは、ヴァイオリン=平野悦子、東山加奈子、ヴィオラ=高橋梓、チェロ=大田陽子で、東京藝大在学中にクァルテットを結成したとのこと このうち東山と高橋は先日の公演でブラームスの「弦楽六重奏曲第1番」をカルミナ・クァルテットと共に熱演し、拍手喝さいを受けたメンバーです

 

          

 

この作品はバルトーク(1881-1945)が30代半ばの1915~17年にかけて作曲され、1918年にブタペストで初演されました

4人の登場です。4人とも赤系統の衣装で統一しています 第1楽章が開始されると、ただならぬ緊張感が会場を満たします この曲は1918年の作曲といいますから、第1次世界大戦のさなかに作られた曲です。 そうした重苦しい雰囲気を4人は並々ならぬ集中力を持って見事に表現していました 初めて彼女たちの演奏を聴きましたが、極めてレベルが高いと思いました。今後も幅広く活躍してほしいと思います

休憩後のモーツアルト「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」は、渡辺玲子(ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)をソリストに、サントリーホール室内楽アカデミー・アンサンブルによって演奏されます コンマスは、オープニング・コンサートでチェロの堤剛、ピアノのクレール・デゼールとともにラヴェルのピアノ三重奏曲を見事に演奏した依田真宣です オケは総勢18人のメンバーですが、そのうち男性奏者は4人のみです 端から顔ぶれを見ると、マスタークラスで生徒を務めたあの顔この顏が見えます。おや?ヴィオラの席にクァルテット・エクセルシオのヴィオラ奏者・吉田有紀子の姿が・・・・これで福井萌、高橋梓、飯野和英とともにヴィオラ・セクションは万全です

女性はブルー・パープル系の衣装がほとんどの中、チェロの鎌田茉莉子だけが朱色のドレスで、全体にアクセントを加えていました

この作品は1779年、モーツアルトが23歳のときにザルツブルクで作曲されました

ソリスト2人がセンターで楽器を構え、コンマスとアイコンタクトで第1楽章が開始されます 若いメンバーのオーケストラを相手に演奏する渡辺、川本の二人の姐御は存在感抜群で、目と目で掛け合いをやりながらソリストを務めていました。とくに川本は、時に弓を振ってオケをリードし指揮者を兼務していました。この人は”仕切る”癖があるようです。別にいいんですが

この曲の第2楽章を聴くといつも、評論家・小林秀雄が表現した「人間存在根底の哀しみ」という言葉を思い浮かべます。澄み切った青空なのに何故か哀しい、そんな感じです

終演後の拍手 の中、川本の合図で全員が、会場の右サイドの方を向いて一礼、左サイドの方を向いて一礼、正面に向き直って一礼し、それぞれが満足感いっぱいの顔で引き上げていきました

今後の活躍が楽しみな若手とベテランとのコラボはいつ聴いてもいいものです

 

          

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ボロメ―オ・クァルテットのベートーヴェン「大フーガ」「第16番」「第13番」を聴く

2013年06月14日 07時00分51秒 | 日記

14日(金)。昨夕、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で、ボロメ―オ・ストリング・クァルテットのコンサートを聴きました プログラムはベートーヴェンの①大フーガ変ロ長調、②弦楽四重奏曲第16番ヘ長調、②同第13番変ロ長調です

ボロメ―オ・ストリング・クァルテットは米ニューイングランド音楽院クァルテット・イン・レジデンスで、第1ヴァイオリン=ニコラス・キッチン、第2ヴァイオリン=クリストファー・タン、ヴィオラ=元渕舞、チェロ=イーサン・キムというメンバーです

 

          

 

このクァルテットの特徴は、普通の四重奏団が楽譜(パート譜)を見て演奏するのに対して、Macbookで総譜を見ながら演奏することです

自席はC4列3番、センターブロック左サイドです。会場はほぼ8割方埋まっている感じです。舞台上には4本の専用スタンドにマックブックが載せられています。自席から第1ヴァイオリンの電子楽譜が見えるのですが、「大フーガ」の冒頭部分の総譜が画面に映し出されています

1曲目の「大フーガ変ロ長調」は当初、「弦楽四重奏曲第13番」の第6楽章として作曲されたものですが、あまりにも長すぎるという当時の演奏家や出版社の友人らからのアドヴァイスを受けて、ベートーヴェン自身が独立した1曲としたものです

ボロメーオ・クァルテットの登場です。左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリンという態勢をとります 演奏中、第1ヴァイオリンのキッチンの足元を見ていたのですが、遂に目撃しました 左足で軽くフット・マウスを踏むと、画面上の楽譜が次のページを映し出しました キッチンの台所事情がよく分かりました

それにしても、ベートーヴェンは何故このような難解な曲を作ったのでしょうか はっきり言って、どこが良いのかさっぱり分かりません 演奏家が変われば理解できるようになるのでしょうか?とてもそうは思えません。ギブアップです

2曲目の「弦楽四重奏曲第16番ヘ長調」は、ベートーヴェンが完成させた最後の作品です 第1楽章は明るくユーモアさえ感じます。第2楽章「スケルツォ」に至っては「ベートーヴェンは遊んでいるな」と思います。第3楽章は一転、よく歌うカンタービレの世界、緩徐楽章こそベートーヴェンの神髄です

さて、最後の第4楽章は楽譜の冒頭に『そうしなけらばならないか?』『そうしなければならない!』という言葉が記されています 最初に疑問のテーマらしきメロディーが現われ、しばらくすると、いきなり束縛から解放されたような底抜けに明るいメロディーが現われます 作曲時のベートーヴェンに何が起こったのでしょうか

最後の「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調」は、当初の作品から「大フーガ」を独立させたベートーヴェンが、新たな第6楽章を書き加えた版です 第6楽章は事実上、ベートーヴェンの最後の作品です。心休まるカヴァティーナの第5楽章を除けば、明るく軽やかな曲想です

全体を通して感じるのは、前日聴いたカルミナ・クァルテットが個々の個性が際立った演奏なのに対し、ボロメーオ・クァルテットは、あくまでもアンサンブル重視の演奏スタイルだと言える気がします もちろん、演奏曲目が違うので一概には言えないかも知れませんが、安心して聴けるのはボロメーオですが、面白いのはカルミナです

一定の期間に複数のアンサンブルを聴くと、その違いの面白さに気が付きます。だからコンサート通いは止められないのです

 

          

 

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カルミナ・クァルテット他によるブラームス「弦楽六重奏曲第1番」を聴く~ブルーローズ

2013年06月13日 07時14分10秒 | 日記

13日(木)その2。昨日午後7時から、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で同ホールチェンバーミュージック・ガーデン「室内楽アカデミー・ゲストコンサート」を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「三重奏曲変ロ長調”街の歌”」、②ブラームス「弦楽六重奏曲第1番変ロ長調」、③ドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲第2番イ長調」。演奏はピアノ=若林顕、弦楽四重奏=カルミナ・クァルテット、サントリーホール室内楽アカデミー選抜フェローです

 

          

 

自席はC3列2番、センターブロック左サイド。会場は9割方埋まっている感じです 客席の後方には今回のチェンバーミュージックガーデンに出演するクァルテット・エクセルシオの女性3人の姿も見受けられます。彼らは桐朋学園大学の出身者なので、後輩の健闘ぶりを見学に来たのでしょう

1曲目のベートーヴェン「三重奏曲変ロ長調」は”街の歌”というサブタイトルがついていますが、第3楽章が当時ウィーンで流行していたヴァイグルの歌劇”海賊”の中の三重唱のテーマによることから名づけられたものです

演奏はヴァイオリン=小形響、チェロ=中実穂、ピアノ=石塚彩子という面々です 小形、中の二人はこの日のマスタークラスでベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第2番」のレッスンを受けた生徒です。小形はイエローの、中は淡いベージュの、石塚はブルーのドレスで登場です 小形、中の二人はマスタークラスの時は横顔しか見ていなかったので、正装した姿で正面から見るとまるで別人のようです 本番の方がずっといいです

演奏はメリハリがあり、表情豊かな表現で印象深く聴きました とくに第2楽章冒頭のチェロ独奏は非常に美しく響きました

2曲目のブラームス「弦楽六重奏曲第1番」はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各2本という珍しい編成による曲です 演奏はヴァイオリン=エンデルレ、東山加奈子、ヴィオラ=チャンプ二―、高橋梓、チェロ=ゲルナー、鎌田茉莉子というメンバーです 東山はブルーの、高橋は淡いピンクの、鎌田は朱色のドレスで登場です 冒頭から第1ヴァイオリンのエンデルレを中心に濃厚な音楽を作っていきます ブラームス特有のうねるような曲想が展開します。ブラームス好きにはたまらないアンサンブルです 第2楽章は映画音楽としても使われたりした有名な曲です。これを聴いている最中、”自分はひょっとすると物凄い演奏に立ち会っているのかも知れない”と思い、背筋が寒くなりました とにかく濃厚なのです。全員が全力投球なのです。これまで何度かこの曲を生で聴いてきましたが、こんなに迫力のある凄い演奏は初めてです

全員の弓が上がると、会場は圧倒的な拍手で満たされました

休憩後のドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲第2番」は、カルミナ・クァルテットと若林顕のピアノにより演奏されます 3楽章から成りますが、どの楽章もドヴォルザークらしい民族色豊かなメロディーに溢れた曲です。この曲も集中力の高い演奏で、それぞれの楽器の対話やバトルが楽しく聴けました

演奏後、拍手を受ける彼らを見て初めて気が付いたのですが、女性2人の顎の左下に赤いアザが出来ているのです 第1ヴァイオリンのエンデルレを含めて、だれも楽器を顎に当てるときに布を挟まないのです 自分で弾いた音を顎の骨を通して直接耳に伝えようとしているのかも知れません。そのアザは彼女たちにとってアーティストとしての勲章なのだと思います 

この日は「マスタークラス」と「ゲストコンサート」をハシゴして聴いたわけですが、体力的にはしんどかったものの、大変充実した一日を過ごすことができました

 

          

 

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カルミナ・クァルテットの「室内楽公開マスタークラス」を聴く~ベートーヴェン、メンデルスゾーン

2013年06月13日 06時23分28秒 | 日記

13日(木)。昨日午後2時からサントリーホール「ブルーローズ」(小ホール)でカルミナ・クァルテットを講師に迎えた「室内楽公開マスタークラス」を、午後7時から同クァルテットを中心とする「室内楽アカデミー・ゲストコンサート」を聴きました 

実は、サントリーホール・チェンバーミュージックガーデンのチケット(9公演)を発売と同時にネットで予約したのですが、間違ってウィークデーの、しかも「マスタークラス」のチケットを予約してしまったため、休暇を取らざるを得なくなったのです

という訳で、ここでは午後2時からの「マスタークラス」の模様を書きます

全席自由席のため開場時間の1時45分には列に並びました。幸いC3列12番、センターブロック右通路側席を押さえられました 普通のコンサートではなく「公開レッスン」のため聴衆は60人程度です

ホールの係員により講師のカルミナ・クァルテットのメンバーひとりひとりが紹介され会場に入場します通訳の紹介の後、生徒の4人が舞台に登場します。第1ヴァイオリン=小形響、第2ヴァイオリン=福崎雄也、ヴィオラ=福井萌、チェロ=中実穂という面々です 彼らの課題曲はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第2番ト長調」の第1楽章です

 

          

 

講師の4人が最前列中央席にスタンバイして、ベートーヴェンの2番の弦楽四重奏曲が通して演奏されます ひと通り演奏が終わるとチェロのシュテファン・ゲルナーが口火を切って「ベートーヴェンのスコアは聖書のようなものだ」として、演奏者一人一人について「そこはアクセントをつけて」「ビブラートはかけない方が良い」と指示を与えます

次いで、第2ヴァイオリンのスザンヌ・フランクが「もっと、喜びを前面に押し出して」「もっと自由に」「ヴィオラは内気すぎる」と指摘します。結局50分以上、2人を中心に事細かに指示を出して、最後に通して演奏させました とくに弱音で演奏する部分は、最初に演奏した時はただ音が小さかったのですが、講師の指導後は、音は小さいのに確かな主張が認められました 教える側も素晴らしい演奏家ですが、教わる側も吸収が速い優秀な人材揃いなのだと思います。4人の中では桐朋学園大学院を今年修了したヴィオラの福井萌さんの演奏が印象に残っています

休憩後は、生徒が変わり、第1ヴァイオリン=外園萌香、第2ヴァイオリン=北見春菜、ヴィオラ=飯野和英、チェロ=鎌田茉莉子という面々です。講師も第1ヴァイオリンのマティアス・エンデルレ、ヴィオラのウエンディ・チャンプ二―に変わります。課題曲はメンデルスゾーンの「弦楽四重奏曲第3番ニ長調」の第1楽章です

最初に通して演奏されます。エンデルレが口火を切って「大変素晴らしい演奏でした」として、自らヴァイオリンを持って舞台上に上がり、自らメロディーを弾きながら、生徒に音楽の表現方法を伝えますヴァイオリンの2人を中心に指導しますが、唯一の男性、ヴィオラの飯野君には厳しく「そのパッセージは楽譜を見ているヒマはない。暗譜するぐらいでないとね」と冷たく当たります。それに対して、生徒と同じヴィオラ・パートのチャンプ二―(女性)は「ヴィオラはとても良かったですよ」とカバーしていたので会場が湧きました

チャンプ二―は「内声部はオフィスワーカーのようにつまらないと思いながら弾いてはいけません楽しい、楽しい、と思いながら弾くのですよ。第1ヴァイオリンは、時にソリストのように華やかに 客席の方を見て演奏するくらいがいいのよ」と指導します。そして「音楽を演奏するのに一番大切なことは、音楽だけでなく色々なことに興味を持つことです ダンスの振付、オペラ、オーケストラの楽器の奏法、ジャズ、建築、数学・・・・と幅広く興味と関心を持つことが大切です そして、室内楽を演奏するうえで大切なのは、個々人の個性を発揮することとチームワークを図ることとのバランスを取ることです」と教えます

最後に第1楽章のフィナーレ部分を通して演奏して終了しましたが、最初に演奏した時よりも”表情”が豊かになったように思います 生徒の中で特に印象に残ったのは第2ヴァイオリンの北見春菜さんの演奏です

休憩を含めて2時間15分の「マスタークラス」でしたが、こんなに内容の濃い企画がたったの1,000円とは信じられません 間違えてチケットを買い、休暇まで取って聴いた訳ですが、”怪我の功名”というか”瓢箪から独楽”というか、大正解でした

 

          

 

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チョン・キョンファのヴァイオリン・リサイタルを聴く~プロコフィエフ、フランクなど

2013年06月12日 07時01分11秒 | 日記

12日(水)。昨夕、サントリーホールでチョン・キョンファのヴァイオリン・リサイタルを聴きました 彼女は韓国出身の世界的指揮者チョン・ミュンフンの実姉です プログラムは①モーツアルト「ヴァイオリン・ソナタ第35番ト長調K.379」、②プロコフィエフ「ヴァイオリン・ソナタ第1番ヘ短調」、③バッハ「シャコンヌ」、④フランク「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」。ピアノ伴奏は1990年ショパンコンクール最高位のケヴィン・ケナーです

チョン・キョンファはニューヨークのジリア―ド音楽院で巨匠イヴァン・ガラミアンに、その後ヨーロッパで、かのヨゼフ・シゲティに師事しています 演奏会に録音にと活躍を続けていましたが、2005年9月のゲルギエフ+キーロフ劇場管弦楽団の韓国公演を指の故障で降板しました それ以来、演奏会からは遠ざかっていましたが、6年後の2011年12月に演奏活動を再開しました

 

          

 

自席は1階9列39番、最右端通路側席です。会場は9割方埋まっている感じです 約2000人収容の大ホールを決して安くない入場料で埋めるのはごく普通のアーティストでは出来ません

彼女の演奏を聴くのは、600円で購入したプログラムによると、2004年8月にチョン・トリオ(姉チョン・ミュンファのチェロ、弟チョン・ミュンフンのピアノ)で聴いたブラームスの「ピアノ三重奏曲第1番」の演奏以来のことです あの時は、冒頭のチョン・ミュンフンによるピアノが、期待よりも速すぎて、ちょっとがっかりしたことを覚えています。彼はチャイコフスキー・コンクール・ピアノ部門の入賞者ですが、やはり指揮に専念した方がいいと思ったものです

舞台の照明が落ち、チョン・キョンファがワイン・レッドのドレスで颯爽と登場します 背丈のあるピアニスト、ケヴィン・ケナーと並ぶと、まるで大人と子供です

 

          

 

1曲目のモーツアルト「ヴァイオリン・ソナタ第35番K.379」がケナーのピアノで始まります やさしく語りかけるような演奏に、チョンのヴァイオリンが応えます。二人の会話を聴いているような感じです 第2楽章にはピチカートで演奏する変奏がありますが、チョンは、モーツアルトでそこまでやるか?と言いたくなるほど力を込めて弦を弾きます。彼女の激しい気性の一部を垣間見るように感じました

2曲目のプロコフィエフ「ヴァイオリン・ソナタ第1番」も、ピアノの前奏に導かれてヴァイオリンが入ってきますが、その一音を聴いて「只事ではないぞ」と感じました。それを”殺気”と言い換えても良いかもしれません。凄味のある演奏です この曲もピチカートで演奏する箇所がいくつかありますが、モーツアルトの時と同様に、力を込めて弾きます。一音一音に全力を込めるのがチョンの信条なのだと思います

第2楽章「アレグロ」を弾き終わった彼女は、肩の力を抜いてフーッと息をつきました。相当集中していたことが想像できます 第3楽章のアンダンテをゆったりと演奏していたかと思うと、第4楽章「アレグリッシモ」に入るや否や、人が変わったように激しく弾き切ります

最後の一音が鳴り終わってからかなり長い間、チョンは弓を下ろさず弾き切った姿勢を保ちます。実際には30秒もなかったかもしれませんが、その間、会場は水を打ったような緊張の時間が続きました ゆっくりと弓が下ろされると、待ってましたとばかりに割れんばかりの拍手 とブラボーが舞台上のアーティストに押し寄せます

 

          

 

プログラム後半の1曲目、バッハの「無伴奏バルティータ第2番」から「パルティータ」が緊張感を持って始められます じっと目を閉じて聴いていると、一音一音に”魂が込められている”と感じます 名曲名演奏の手本のような深い演奏です

プログラムの最後はヴァイオリン曲の代名詞のようなフランクの「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」です。第1楽章冒頭、ピアノに導かれてアンニュイなヴァイオリンの調べが入ってきます その瞬間から会場はフランクの世界に誘われます。うねるような、そして凄味のある演奏が展開します 第4楽章が圧倒的な迫力で終わると、会場一杯の拍手 が二人を包みます。

気を良くした二人はアンコールに応え、シューベルトの「ソナチネ第1番」から第2楽章「アンダンテ」を演奏しました 明るい中にどこか悲しみを湛えたニュアンスがよく出た演奏でした ほとんどの聴衆が席を立たないので、次に同じ曲の第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」を楽しげに演奏しました その演奏姿が一瞬、弟のチョン・ミュンフンの指揮姿にダブって見えました。

このリサイタルを成功に導いた大きな要因の一つはピアノ伴奏のケヴィン・ケナーのサポートです 何の主張もない演奏ではなく、主役が演奏しやすい雰囲気を作りながらきちんと自己を主張していました。このコンビは息がピッタリです

 

          

 

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