人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ジェフリー・アーチャ―著「時のみぞ知る」(上・下)を読む

2013年06月11日 07時09分19秒 | 日記

11日(火)。昨夕は、元の職場のOB会の開催通知を発送するため、OBのM氏を混じえて4人で作業をしました その後、地下Rでお疲れさん会を開き、3時間近く飲んで、M氏のたっての願いにより、家庭生活優先の一人を除く3人でタクシーに乗り上野に向かいました 例によってカラオケ歌合戦 を繰り広げましたが、月曜から飲みに飲んだので点数は上がらず、大変疲れました 今週は今日から日曜まで8回コンサートを聴きに行くのに、月曜から無謀な行動をしてしまい、ただただ反省あるのみの朝を迎えています 頭痛いし・・・・・

 

  閑話休題  

 

ジェフリー・アーチャ―著「時のみぞ知る(上・下)」(新潮文庫)を読み終わりました ジェフリー・アーチャーの本は新潮文庫で出ているものはほとんど読んでいますが、帯の「『ケインとアベル』を超えた」という謳い文句に嘘はあるまいと思って上下巻を買いました

物語の舞台は1920年代のイギリスの港町ブリストル。幼い頃父親を亡くした貧しいハリー・クリフトンは母メイジ―と伯父の手で育てられます 意外な才能に恵まれ、周囲の推薦もあって進学校に進みます。そこで富裕層の御曹司たちからイジメを受ける一方、生涯の友人となるアル・ディーキンズやジャイルズ・バリントンと出会います

母の懸命な経済支援を受けて勉学に励む中、英雄として戦死したと聞かされていた父親は、実はバリントン海運が建造中だった船の中に閉じ込められ、救出されないまま死亡したことが判ります ジャイルズの父でバリントン海運の社長ヒューゴー・バリントンはハリーに冷たく当たりますが、それはそうした事実だけが理由ではありませんでした

やがてハリーはジャイルズの妹、つまりヒューゴー・バリントンの娘エマと愛し合うようになりますが、ヒューゴーは拒否反応を示します。同じようにハリーの母メイジ―も結婚には大反対します それは何故なのか・・・・・・

ハリーは、愛し合いながらも結婚できない現実を目の前にして、貨物船に乗り込み航行に出ますが、途中、魚雷の襲来を受け船は沈み、かろうじてハリーはアメリカの船に救助されます 「自分さえ居なければ、エマは自由の身となり他の男性と結婚もできる」と考えて、ハリーとともに救出されたものの息を引き取ったトム・ブラッドショー三等航海士に成りきって生きていくことを決意します

船がニューヨーク港に着き、移民局から「ミスター・ブラッドショーでしょうか」と訊かれ、「そうだが」と答えると、ハリーはいきなり手錠を掛けられてしまいます。友人が「容疑は何か」と訊くと「第1級殺人罪だ」と答えます。これが最後の行です。

最後の最後にどんでん返しがあった訳ですが、なぜハリーは逮捕されたのか ハリーがブラッドショーに成りきっていたことがその理由ですが、これでハリーは身の潔白を証明するために”実は自分はブラッドショーではなくハリーだ”と言わざるを得なくなるはずです ここから、もう一つの物語が展開できそうな気がします。アーチャーの新しい手法でしょうか。いつもながら、読み始めたら途中で止められない痛快小説です

 

          

            

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マーラー「交響曲第5番嬰ハ短調」を聴く~東響名曲全集(ミューザ川崎)

2013年06月10日 07時00分11秒 | 日記

10日(月)。昨日お昼ちょっと前、コンサートに行くためJR巣鴨駅に向かう途中、向こうから歩いてくる一人のご老体に遭遇しました。先方も私に気が付いたようで、「似ていると思ったが、やっぱり君か」と声を掛けられました。元の職場の最初の上司Kさんでした。「まさか地元の巣鴨でお会いするとは思いませんでした」と言うと「君はこの辺に住んでいるのかい?」と訊くので、「ここから徒歩で10分ほどの白山通り沿いのマンションです」と答えました。「ところで、どちらへお出かけですか?」と尋ねると「お墓参りだよ」との答え。近くの染井霊園に行かれるようです。手にした荷物にバラの花が一輪見えました 「まだ、今のセンターで働いているの?」と訊かれ「はい、あと2年半は働きます」と答えると、「それは良かった。働けるというのは良いことだよ」と言われました。

Kさんは私が昭和49年に元の職場に入社した時の国際担当の直属の上司で、日本語、英語の文章の書き方からマナーに至るまで、仕事に関するすべてのことを教えてくれた恩人です 現在、英国人の奥さんとロンドンにお住まいで、年に一度、歯医者通いやら何やらで帰国されているようです

「今度7月に元職場のOB会がありますから、そこでお会いできますね」と言うと「明後日ロンドンに帰らなくちゃならないんだよ」とのこと。名残惜しかったのですが、そこで別れました。こんな偶然もあるのかとビックリしましたが、お元気な様子で何よりでした

 

  閑話休題  

 

昨日午後、ミューザ川崎で東京交響楽団の「第87回名曲全集」コンサートを聴きました プログラムは①バッハ「トッカータ、アダージョとフーガ・ハ長調BWV564」(オルガン:松井直美)、②アルビノ―二「オルガンと弦楽のためのアダージョ・ト短調」、③マーラー「交響曲第5番嬰ハ短調」の3曲。指揮は東響正指揮者の飯森範親です

 

          

 

会場の照明が暗転し、2階のパイプオルガン席だけにスポットライトが当てられ、上下濃紺の衣装を身をまとった松井直美が登場します バッハの「トッカータ、アダージョとフーガ」は”急、緩、急”の3つの楽章から成ります。大地震の影響による長期間の改装作業のため、本当に久しぶりにミューザ川崎のパイプオルガンを聴きましたが、素晴らしい響きです

2曲目のアルビノ―二に入る前に、指揮者の飯守がマイクを持って登場、次のように解説しました

「今日、コンマスのニキティン氏が演奏するヴァイオリンは、陸前高田市の”奇跡の1本松”の一部を根柱に使っています。どんな音が奏でられるか、お楽しみください

舞台上には弦楽器奏者20名と、舞台中央に配置されたポジティフ・オルガンを弾く松井直美がスタンバイします。ここで、あらためてプログラムでアルビノ―二の「オルガンと弦楽のためのアダージョ」の解説を見て、唖然としました そこには次のように書かれていました

「実は、この曲はアルビノ―二が作曲したのではなく、アルビノ―二の専門家であるイタリアの音楽学者レモ・ジャゾット(1910-98)が作曲したもの。かつては、発見されたアルビノ―二のソナタの自筆譜の断片を使って作曲された、とも言われていた」

初耳です 知らなんだ 無知です この機に及んで恥ずかしい限りです

演奏は、ゆったりとしたテンポで進められ、ヴァイオリン・ソロでは、ニキティン氏の弾く”奇跡の1本松ヴァイオリン”の深みのある音が会場を満たします 終演後、ニキティン氏はヴァイオリンを人間に見立ててお辞儀をさせて、拍手喝さいを浴びていました

休憩後のマーラー「交響曲第5番」は、それまでの2番から4番までの交響曲が声楽を伴った曲だったのに対し、純器楽編成により作曲されたという意味で、一つの転換期にある曲だと言えます。5番以降は7番まで純器楽編成が続きます

この頃マーラーは、ウィーン宮廷歌劇場の音楽監督を務めており、世間では、作曲家としてよりも指揮者としてのマーラーの方が高く評価されていて、そのことを彼は不満に思っていたようです 同時代人に自分の作品を理解されない不満を「やがて私の時代が来る」と言い表したと伝えれられていますが、それから100年後の21世紀の現在、まさにマーラーの音楽が求められています

第5交響曲は第1楽章から第3楽章までが、1901年夏にオーストリア南部にあるヴェルター湖畔のマイヤーニックで作曲され、翌1902年夏に第4~5楽章が作曲されました ちょうどその間にマーラーはアルマに出会い、1902年3月に結婚しました この第4楽章「アダージェット」はアルマへのラブ・レターとして書かれたと言われています

第1楽章はトランペットの”葬送”ファンファーレで開始されます。冒頭の「タタタターン」はベートーヴェンの運命の動機のパロディです ここで躓くと曲が台無しになりますが、さすが東響の金管はシュアな実力者です ティンパ二が非常にいい働きをしています

第2楽章は嵐のようなテーマが吹き荒れます。マーラーは何かと戦っています

第3楽章はまるでホルン協奏曲のような感じで、ホルンや他の管楽器がソロを奏でます 強奏部ではオーボエやクラリネットが、楽器の先端を持ち上げ、客席に音がストレートに届くように演奏します。これはマーラーの指示によるものです

そして第4楽章「アダージェット」が弦楽器とハープのみで静かにロマンティックに奏でられます 管楽器と打楽器はしばし休みながら嫋やかな音楽に耳を傾けています

第4楽章は間を置かずにホルンが入ってきます。最後は金管が華やかにコラールを奏で、熱狂的にフィナーレを閉じます 

この日の飯守+東響によるマーラー「第5交響曲」は、今まで聴いた演奏の中で最も長く感じました 実際にゆったり目の演奏だったのか、あるいは、プログラムに「この日の演奏は、国際マーラー教会による新校訂版(2002年出版、R.クービク校訂)による」とありますが、この版と関係があるのか、分かりません テンポで言えば、たしかに第4楽章「アダージェット」は思い入れたっぷりの濃いめのスープのような演奏でしたが、他の楽章はそれ程でもなかったように思います 同じ演奏でも長く感じたり、短く感じたりするものです。聴く側の意識の問題かもしれません

 

          

 

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フランク「ピアノ五重奏曲ヘ短調」を聴く~サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン

2013年06月09日 07時05分37秒 | 日記

9日(日)。昨日の朝日朝刊別冊「be」の「再読 こんな時 こんな本」シリーズのテーマは「小澤征爾を読む」です。その中で村上春樹が小澤征爾と音楽を語った「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(新潮社)が取り上げられています 書店で見かけて気になっていた本ですが、1680円とちょっと高かったので買わずにいます

その中に、次のようなエピソードが出てくると紹介しています。

「伝説のピアニスト、グレン・グールドと指揮者バーンスタインが、ブラームスの第1ピアノ協奏曲を協演した時、バーンスタインが演奏前に『これからの演奏は自分のやりたいスタイルではない、グールドの意思でこうなった』と語りかけたのは有名な話だが、この現場にバーンスタインのアシスタントだった小澤が居合わせていた

 

          

 

これは初耳です。その演奏はCD(1962年4月7日のライブ)で持っていて何度か聴いていますが、あのライブ録音の現場に若き日の小澤征爾が居合わせていたとは驚きです この演奏は、当時バーンスタインが主張したような”遅い”演奏では決してなく、グールドの主張の方が正しかったのではないかと思います。バーンスタインのスタイルではなかったのでしょうが

          

          

 

  閑話休題  

 

昨日、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)でサントリーホール・チェンバーミュージックガーデンの「ウィークエンド・コンサート」を聴きました ホール入口でプログラムといっしょに「ワンドリンク・サービス券」が配られました。ラッキーです おかげでコンサート前にホットコーヒーを飲むことが出来ました自席は4列11番で、センターブロック右サイドです

プログラムは①シューマン「ピアノ三重奏曲第1番ニ短調」から第1楽章、②フォーレ「夢のあとに」、③サン=サ―ンス「白鳥」、④フランク「ピアノ五重奏曲ヘ短調」。演奏はヴァイオリン:鈴木理恵子(読響客員コンマス)、ヴィオラ:山田百子(クァルテット・エクセルシオ)、チェロ:上村昇、ピアノ:若林顕です

 

          

 

最初にピアノの若林顕がマイクを持って登場、あいさつしました

「今日はお越しいただきありがとうございました。今日は弦の豊饒な響きが堪能していただけると思います。今日のシューマンとフランクの共通点は”うねり感”です。心の葛藤というか、そういうところが共通していると思います。お楽しみください

若林は一旦舞台袖に引っ込み、黒を基調とするワインレッドの花柄を配したサマードレスの鈴木理恵子、チェロの上村昇とともに再度登場します

シューマンの「ピアノ三重奏曲第1番」は愛妻クララの誕生日を祝って作曲したロマンティックな曲ですヴァイオリンを中心に美しいアンサンブルが奏でられます

次は順番が入れ替えられ、最初にサン=サーンスの「白鳥」が、次にフォーレの「夢のあとに」が、上村と若林によって演奏されました。上村のチェロがよく歌っていました

次いでフランクの「ピアノ五重奏曲ヘ短調」が演奏されます。左から鈴木絵里子、淡い藤色のドレスを身にまとった山田百子、上村昇、青緑色のドレスの花田和加子、後ろにピアノの若林顕という態勢です

 

          

 

フランクはベルギー生まれですが、人生の大半をフランスで過ごしたためフランスの作曲家のように思われます この曲はいくつかの主題が何度も登場する「循環形式」をとります。公演前の若林の解説どおり”うねり”を感じさせる音楽が展開します

この曲は5月4日のラ・フォル・ジュルネ音楽祭でモディリアー二弦楽四重奏団とブーランジェのピアノで聴いたのですが、あの時は初めて聴いたこと、席が前から16列目と舞台から遠かったこと、等から曲を楽しむまで至らず、フランクに苦手意識を持ってしまいました しかし、今回は2度目で、前から4列目の演奏者に近い席で聴くことが出来たこともあってか、より共感を持って曲を受け止めることが出来ました さらに言えば、あの時は四重奏団もピアノも若手奏者でしたが、今回は中堅どころが揃っている点が、人生経験から、曲に深みを与えたのかも知れません

長い第1楽章が終わった後、白熱の演奏に会場のここかしこから拍手が湧きました それは第2楽章が終わった時も同じ反応があり、その時は意外に感じました 最後の音が鳴り終わると会場一杯の拍手 とブラボーが舞台に押し寄せました

アンコールにショスタコーヴィチの「ピアノ五重奏曲」から第3楽章がリズミカルに演奏され、拍手喝さいを浴びました。1時間の予定が、トークやアンコールもあり20分ほどオーバーしてお開きになりました。十分楽しめるコンサートでした

今回の教訓は、室内楽は出来るだけ前方の中央寄りの席で聴くこと、さらに言えば、実力の裏付けのある中堅どころのアーティストで聴くのが望ましいということです

 

          

        

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「クァルテット・エクセルシオ」「侍BRASS」「アジア・ユース・オーケストラ」のチケットを買う

2013年06月08日 07時00分32秒 | 日記

8日(土)。昨日の朝日朝刊に「バッハ自筆の楽譜を発見~伊作曲家のミサ曲を筆写」という小さな記事が載りました 記事を要約すると、

「J.S.バッハ(1685~1750)の研究機関、ライプチヒ・バッハ資料財団は6日、バッハがイタリアの作曲家フランチェスコ・ガスパリ―二によるカトリックのミサ曲”ミサ・カノニカ”を書き写した楽譜を新たに発見した、と発表した バッハが1749年に完成した”ミサ曲ロ短調 ”の作曲に影響を与えた可能性を示すものとして注目されている

コピー機がない時代だからこそ、自筆による楽譜が誰によるものかが推測できるわけで、現代の大学生が得意の「コピぺ」(コピー&ペースト=他人の情報をコピーして貼り付ける)では見分けがつかないと思います バッハの自筆によるバッハ自身の作品の新発見ニュースなら、もっと大騒ぎになったことでしょう

 

  閑話休題  

 

昨日チケットを4枚買いました 1枚目は7月9日(火)午後7時から東京文化会館小ホールで開かれる「クァルッテット・エクセルシオ」の第25回東京定期演奏会です。プログラムは①モーツアルト「弦楽四重奏曲第12番変ロ長調K.172」、②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第7番ヘ長調”ラズモフスキー第1番”」、③ブラームス「弦楽四重奏曲第1番ハ短調」です

 

          

 

2枚目は8月25日(日)午後3時から東京オペラシティコンサートホールで開かれる「侍BRASS2013」コンサートです トランペットのエリック・ミヤシロ他の出演で、ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」ほかが演奏されます

 

          

 

3枚目と4枚目は8月29日(木)と30日(金)の午後7時から東京オペラシティコンサートホールで開かれる「アジア・ユース・オーケストラ東京公演」です プログラムは29日が①ウェーバー「歌劇”魔弾の射手”序曲」、②ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」、③シベリウス「交響曲第2番」。指揮はジェームズ・ジャッド、チェロ独奏はスティーヴン・イッサーリスです

30日のプログラムは①ブラームス「交響曲第3番」、②ハイドン「チェロ協奏曲ハ長調」、③ベートーヴェン「交響曲第5番”運命”」。指揮はリチャード・パンチャス、チェロ独奏はイッサーリスです 

アジア・ユース・オーケストラは昨年初めて同じ指揮者で聴きましたが、その時の印象が良かったので今年も聴くことにしました

このコンサートは指定席が4,000円、自由席が2,000円です。イッサーリスのチェロがこの料金で聴けるのですからかなり格安です プログラムも比較的ポピュラーな曲なので、普段クラシック音楽に馴染みのない方にもお薦めです

 

          

 

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ボロメーオ・ストリング・クァルテットでベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴く

2013年06月07日 07時00分20秒 | 日記

7日(金)。5日の朝日夕刊に「天才少女 全盛期の調べ バイオリニスト故・諏訪根自子~NHKで録音発見」という記事が載りました 記事を要約すると、

「美貌の天才少女として一世を風靡したバイオリニスト、諏訪根自子(1920-2012)が、NHKのスタジオで東宝交響楽団(現・東京交響楽団)と共演したブラームスの”ヴァイオリン協奏曲二長調”の音源が同局のアーカイブに残っているのを音楽評論家の片山杜秀さんが見つけた NHKによると、1949年11月28日に放送したラジオ第2”放送音楽会”の録音だという。ドイツから帰国した4年後の演奏で、くしくもベルリン・フィルと演奏したのと同じ曲だった NHK-FM”クラシックの迷宮”で29日夜に放送される

東京フィルの文京シビックシリーズでご一緒している久我山在住のAさん、その幼友達で早稲田在住のTさんなどは、「私たちが若いころは、ヴァイオリニストと言えば巌本真理か諏訪根自子、ピアニストと言えば安川加寿子ぐらいでしたよ」といつもおっしゃっているので、きっと聴いてみたいのではないでしょうか 29日(土)夜のFM番組表を要チェックです

 

  閑話休題  

 

昨夕、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で、ボロメーオ・ストリング・クァルテットの「ベートーヴェン・サイクルⅡ」公演を聴きました プログラムはベートーヴェンの①弦楽四重奏曲第10番変ホ長調”ハープ”、②同第11番ヘ短調”セリオーソ”、③同第12番変ホ長調です

クァルテットのメンバーはニコラス・キッチン、クリストファー・タン(以上ヴァイオリン)、元淵舞(ヴィオラ)、イーサン・キム(チェロ)の4人です。彼らの演奏の特徴は、楽譜の代わりに全員がマックブック(パソコン)を使用し、スコア全体を見ながら演奏することです

彼らは5日間に分けてベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を演奏するのですが、残念ながら他のコンサートと重なっていて3日間しか聴けません

 

          

 

自席はオープニング・コンサートの時と同じC4列3番、センターブロックの左サイドです 舞台上には譜面台の代わりにアイボリー色のマックブックが載せられた4台のスタンドと椅子が並びます。それぞれのマックブックからコードが下に伸びていてマウスのような器具につながっています これは足で軽く踏むと電子楽譜がめくられる”フットマウス”で、第1ヴァイオリンのニコラス・キッチンが開発したスグレモノです ヴィオラ席を除いて椅子が高く調整されています

拍手に迎えられて登場したクァルテットのメンバーは、プログラムで紹介されている写真よりも年季が入っているようです 左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリンという編成です

 

          

 

1曲目の第10番”ハープ”が神秘的に始まります。続いてハープのようなピチカートの伴奏にのって爽やかなメロディーが奏でられます 第2楽章はアダージョですが、ベートーヴェンのアダージョはとても心休まります 第3楽章のスケルツォは交響曲第5番”運命”の「タタタター」の動機が反復されます。ベートーヴェンは何かと戦っています 第4楽章は主題に基づく6つの変奏曲です

第1ヴァイオリンが良く歌います。対面の第2ヴァイオリンも負けじと対抗します。ヴィオラは立派な体格を生かして力強い演奏を展開します。チェロはここぞという時に存在感を示します。4人とも音楽の表情が豊かです

次の第11番”セリオーソ”は日本語で「厳粛」という意味ですが、第3楽章「スケルツォ」の激しい曲想に由来します 第4楽章は暗い音楽が続きますが、突然、明るい曲想が現われ疾走してフィナーレを迎えます。ベートーヴェンに何が起こったのでしょうか

休憩後の第12番は晩年のベートーヴェンが、「第9」初演後に、久しぶりに弦楽四重奏曲に取りかかった意欲作です 第1楽章を演奏する時の4人の幸せそうな顔が印象的です この曲は何と言っても第2楽章のアダージョが素晴らしいです。心の平安を感じます

演奏を振り返ってみると、このクァルテットはパワフルで表情豊かである一方、抒情的なニュアンスも失わない魅力的なグループだと思いました

 

          

 

ところで、ミュージックガーデンのプログラムは全日程を網羅したものなのですが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を中心に書かれた「一目でわかるベートーヴェンの生涯と傑作」は非常に分かり易く参考になります 例えば、弦楽四重奏曲第7番”ラズモフスキー第1番」(1806年)の隣の「他の代表的作品」欄にはヴァイオリン協奏曲(1806年)、その隣の「生涯の主な出来事」欄には”テレーゼ・マルファッティに求婚し断られる”(1810年)、その右の「日本・世界の出来事」には神聖ローマ帝国滅亡(1806年)、ハイドン没、メンデルスゾーン生(1809年)といった具合です。Good Job!

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HJリム、ベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会に向けて語る

2013年06月06日 07時00分17秒 | 日記

6日(金)。昨夕、いつもの4人で地下Rで飲みました その後、X部長と上野で落ち合って2人でカラオケ歌合戦 をやりました。X部長は前回の時に懲りたのか”90点未満は罰金という無謀なルール”なしでやろうと言ったので同意しました もう飲みすぎちゃって、朝から絶不調です このろくでもない素晴らしき世界・・・・なんちって、何言ってんだか

 

  閑話休題  

 

新聞業界の専門紙「新聞協会報」最新号に広島に本社を置く中国新聞社の元大阪支社長Sさんの死亡記事が載っていました Sさんには忘れられない思い出があります

私が元の職場の広告担当にいた時、「新聞広告賞」の第一次選考に当たる広告開発部会のメンバーの一人にSさんがいらっしゃいました。300点あまりの応募作品をどのように選考するかという話になった時、Sさんが「まず商品広告、意見広告、企画広告などにジャングル分けして選別した方がいいと思う」と広島弁で言われました その時は、他の新聞社のメンバーもわれわれ事務局職員も聞き流していましたが、会議終了後、あの発言をめぐって「ジャングル分けって、ジャンル分けの間違いだよね」と、内輪で大笑いになりました その後も、選考の過程で何度かSさんの「ジャングル分け」発言がありましたが、本人は大真面目な一方、事務局職員は笑いをこらえるのが大変でした

今ごろは、あちらの世界で色々な石ころをジャングル分けしているかも知れません 誰からも慕われた広島弁のSさんのご冥福をお祈りいたします

 

  も一度、閑話休題  

 

3日前の朝日夕刊に韓国のピアニスト、HJリムのインタビュ―記事が載っていました 彼女は6月3日から21日まで、浜離宮朝日ホールでベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会を開きます

HJリムがピアノを始めたのは3歳の時。12歳でフランスに留学し、パリ国立音楽院を首席で卒業しました 昨年、ベートーヴェンのピアノソナタのうち19番、20番を除く全曲を録音してCDデビューし、全米クラシックチャ―トの1位に輝きました 昨年、銀座のヤマハホールに行った時、CD売り場を覗くとリムのCDが大々的に売り出されていたのを覚えています

彼女はベートーヴェンの書簡や伝記を読みあさり、研究を重ねるうちに、少しだけ身近な存在になったとして、インタビューで次のように語っています

「彼のピアノソナタはまるで日記のよう。自分の弱さをさらけ出し、自分と正直に向き合っている。歴史上の偉人も、一人の人間なのだとわかった

そんな彼女の演奏を最終日の21日に聴きます プログラムはピアノソナタ①第8番”悲愴”、②第12番”葬送”、③第23番”熱情”、④第32番です。今から楽しみです

 

          

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チョン・ミュンフン指揮アジア・フィルのチケットを買う~ブラームス「交響曲第4番ホ短調」ほか

2013年06月05日 07時00分12秒 | 日記

5日(水)。サッカーといえばワールドカップ・アジア最終予選ぐらいしか観ない”にわかサッカーファン”の皆さん、お元気ですか 昨日は日本代表がオーストラリアと引き分けながらも予選を通過して良かったですね 同点になったきっかけは相手チームのハンドによる反則でした。手を出してはいけないところで手を出すと痛い目に合うという教訓ですね 心当たりのある人は、この機会に心を改めましょう ところで、あまりの嬉しさに、まさか渋谷駅前スクランブル交差点に駈け付けたりしませんでしたよね興奮してケンタッキーのカーネル・サンダース像を川に投げ込んだりしませんでしたよね

3年前のW杯本戦の際には、群衆がタクシーに傷をつけたり、酒をかけ合って信号無視したりといったトラブルが17件起きたとのこと ということで、昨夜は警戒のため警察官が渋谷の交差点に大勢動員されたそうです まだ朝刊を読んでいないので渋谷でトラブルがあったのかどうかは分かりませんが、新聞に載るほどのトラブルがなかったことを祈るばかりです ちなみに、私はサッカーには全く興味がありません。目下セリーグ第2位にいて、首位ジャイアンツを猛追する阪神タイガースの戦況だけが気になります

 

  閑話休題  

 

昨日、飲んでいる薬が無くなったので当ビル地下のNクリニック(呼吸器系の権威)に行きました N先生が「前と同じ薬を処方しましょう。ところで、あなた、頻繁にコンサートに通っているそうだね?H先生(腎臓病の権威)に聞きましたよ」とおっしゃるので、「年間160回くらいです」と答えると、「じゃあ、週に3回はコンサート通いしているということですか。ほとんど病気、コンサート病ですね」と診断してくれました。薬を処方してもらおうかと思いましたが、W薬局で「コンサートバカにつける薬はありません」と言われるのは必須なので諦めました

つい先日もこんなことがありました。当社の取締役会は全国の新聞・放送社のトップで構成されていますが、2週間後に取締役会を控えて、取締役の皆さんに開催通知を出す準備を進めていました 宛名を一人一人打ち分けていく訳ですが、M新聞社の代表取締役社長の名前を「朝比奈隆」と打って、しばし過ちに気が付かなかったのです。M新聞社の社長は、苗字は朝比奈ですが、名前は一文字ではあるけれど、隆ではないのです

念のため見直した時に、ハッと気が付きました 「朝比奈隆」は長年にわたり大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽総監督を務めた大指揮者(故人)の名前です。これも病気かもしれません。「クラシック・コンサート病」と言えるかもしれません 数年前に一度、M新聞社の社長をオペラパレス(新国立劇場)のホワイエでお見かけしたことがあるので、音楽への関心はある方だとは思いますが、名前を間違えられてはいい気持ちはしないでしょう。危ないところでした 公の文書を外向けに発信する時は、もう一度見直すか、出来るだけ複数の目でチェックしてから発信した方がよいという教訓です

 

  も一度、閑話休題  

 

サントリーホール・チケットセンターでチョン・ミュンフン指揮アジア・フォルハーモニー管弦楽団のコンサート・チケットを買いました 7月29日(月)午後7時からサントリーホールで開かれる公演です。プログラムは①ワーグナー「歌劇”タンホイザー”序曲」、②ワーグナー「楽劇”トリスタンとイゾルデ”より前奏曲と”愛の死”」、③ブラームス「交響曲第4番ホ短調」です

アジア・フィルを聴くのは連続3年目です。2011年8月2日には①ベートーヴェン「交響曲第7番」、②ブラームス「交響曲第1番」を、2012年8月2日には①シューベルト「交響曲第7番"未完成”」、②ベートーヴェン「交響曲第3番”英雄”」を聴きました

ブラームスもワーグナーももちろんいいのですが、本音を言うとマーラーを演奏してほしいのです。出来れば大好きな交響曲第3番を

 

          

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新国立オペラ、モーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」を観る~フィナーレの意味は?

2013年06月04日 07時00分06秒 | 日記

 

4日(火)。昨夕、新国立劇場でモーツアルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」を観ました キャストはフィオリディリージにミア・パーション、ドラベッラにジェニファー・ホロウェイ、デスピーナに天羽明恵、フェルランドにパオロ・ファナーレ、グりエルモにドミニク・ケーニンガ-、ドン・アルフォンソにマウリツィオ・ムラーロほか。イヴ・アベル指揮東京フィル。演出はダミアーノ・ミキエレットです

 

          

 

ミキエレットの演出は、舞台を夏のキャンプ場に設定しています。この演出で観るのは2011年5月に次いで2回目なのですが、3回目のような錯覚を覚えます これは何故なのか、それ程印象深い演出だったのか、自問自答が続きます。あらすじは次のとおりです

美人姉妹のフィオルディリージとドラべッラはそれぞれの恋人、グリエルモとフェルランドと共にキャンプ場にバカンスにやってきます キャンプ場のオーナー、ドン・アルフォンソは「女はみな浮気するもの」という持論を展開し、それぞれの恋人を信じる二人の青年に賭けをもちかけます 二人は、突然出征するとウソをついて、別人に変装して、それぞれ別のパートナーを口説き始めます 最初のうちは拒絶する姉妹ですが、キャンプ場で働くデスピ―ナにそそのかされて、魅力的な男性の誘惑に心が揺れて最初にドラべッラが折れ、次いでフィオルディリージが陥落します。そして、ドン・アルフォンソが登場、種明かしをして「女はみな、こうしたもの」と言って大団円を迎えます   

 

          

  

カナダ・トロント出身のイヴ・アベルの指揮で序曲が始まります。彼の指揮は自然体で軽快です 気分良く聴いている中、1階左サイド前方の客席からケータイ画面の光が・・・・しかも4~5回点けたリ消したりしています 会場アナウンスもロクに聞いていない傍若無人のヤカラです。こういうのは後部座席の人が頭を張り倒すなりして注意すべきです。ちょっと過激か

オペラで、舞台設定を現代に移したり、場所をまったく違う所に移したりする演出は好きではありません。が、2年前に初めて、舞台をキャンプ場に移したミキエレットの演出でこのオペラを観たときは、なぜか違和感を感じませんでした 今回も同様に思ったのですが、それは「モーツアルトの音楽はいかなる演出も超える」からに他なりません

2011年5月の初公演に際してミキエレットがインタビューに答えて次のように語っています

「オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』に関してまずお話ししたいのは、本作がまさに”アンサンブル・オペラ”であるということです 物語に主役と脇役の区分がなく、モーツアルトの音楽も役柄ごとの歌の分量がバランス良いですね

これを読んで、あらためてこのオペラが”アンサンブル・オペラ”であることを再認識しました。今までそのように意識してこのオペラを観たことはありませんでした。二重唱、三重唱、四重奏のオンパレードなのです そして音楽が絶えず流れていて留まるところがありません。これはモーツアルトのオペラの特徴です 今回のイヴ・アベルの指揮はその流れを意識した素晴らしい指揮で、東京フィルがそれに十分応えて演奏していました

歌手陣は、主役6人がそれぞれ歌も演技も素晴らしかったのですが、強いて言えばフィオルディリージを歌ったソプラノのミア・パーションと、フェルランドを歌ったテノールのパオロ・ファナーレが、それぞれ良く通る美しい歌声を聴かせてくれました また、ドン・アルフォンソを歌ったマウリツィオ・ムラーロは深みのあるバスで聴衆を魅了しました

 

          

              (フィオルディリージを歌ったミア・パーション)

 

演出で気になったのはフィナーレです。今回の演出では、二人の若者に賭けで勝ったドン・アルフォンソが「女はみんなこうしたもの」と説くと、負けた若者二人、騙された姉妹、デスピーナが、悔しまぎれに近くの物を投げて散り散りに去っていき、残されたアルフォンソが勝利の高笑いをして幕が下ります

今、2年前の演出を思い出すと、若者や姉妹たちが去った後、舞台に取り残されたアルフォンソが感慨深げにうつむいた状態で幕が下りたのです 私としては2年前の演出の方が良いと思いました。最後にアルフォンソが高笑いする今回の演出はあまりに当たり前すぎて特別の感慨もありません

仕掛け人ドン・アルフォンソは、ミキエレットの演出ではキャンプ場の支配人ですが、ダ・ポンテの台本では老哲学者となっています。ドン・アルフォンソは「貞節な女性など存在しない。女はみんなそうしたもの」という自分の主張が証明されたからと言って、高笑いするような人物でしょうか むしろ、二組のカップルは今回いい経験をした(このオペラの副題は”恋愛の学校”)ものの、彼らの今後の行く末に思いを致して”君たちが考えているほど人生は甘くないよ”と言いたかったのではないか、と思います

もう一つ今回の演出で気になったのは照明です 最後に幕が下りてカーテンコールになり、歌手たちに明るい照明が当てられて顔がよく見えるようになったのです その時に思ったのは、今まで観てきた3時間の舞台がいかに暗かったかということです もちろん夜のシーンが暗いのは当たり前ですが、昼のシーンでも極力明るさを控えていたように思います。このオペラは、二人の若者が変装してそれぞれ相手の恋人に言い寄って口説き落とすというストーリーですが、「いくら変装したからと言ったって、いつも身近にいる恋人くらい見分けがつくだろう」という批判に対するエクスキューズのために舞台を暗めにしたのか、とも思いますが、こればかりはミキエレットに訊いて見なければ分かりません。せっかく美男美女をそろえた舞台だったのに残念だと思いました 

午後6時半に始まったオペラは途中休憩30分を挟んで9時50分に終了しました

 

          

 

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東京交響楽団の第610回定期コンサートを聴く~秋山和慶のR.シュトラウス「英雄の生涯」

2013年06月03日 07時00分03秒 | 日記

3日(月)。昨日の午前中は今後コンサートで聴く曲の予習をしました この日の午後、東響定期演奏会でリヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」を聴くので、カール・ベーム指揮ドレスデン国立管弦楽団によるCD(1957年録音)を聴きました オーケストラで一番好きなのはこのドレスデン国立管弦楽団です。ドレスデン国立歌劇場管弦楽団とも表記されますが、原語はStaatskapelle Dresdenです。かつてFM放送からブラームスの交響曲が流れてきた時「これはドレスデンの音だ」と言い当てたことがあります。いぶし銀のような独特な輝きを持ったオーケストラです

 

          

 

次いで、同じコンサートで演奏されるバルトークの「ヴァイオリン協奏曲第1番」を予習しようと思いCD棚のバルトーク・コーナーを探してみたのですが、どこにもありません 他の作曲家のヴァイオリン協奏曲とカップリングされている可能性があると思ってドヴォルザークやチャイコフスキーなどのコーナーを探しましたが、やはりどこにも見当たりません 4,000枚の中から探し出すのは困難です。元々持っていないのかもしれません しかたないので諦めました

次いで、来週木曜日にアメリカのボロメーオ・クァルテットの演奏で聴くベートーヴェンの弦楽四重奏曲「第10番”ハープ”」、「第11番”セリオーソ”」、「第12番」を、アルバン・ベルク四重奏団によるCD(1979年録音)で聴きました ジェフリー・アーチャーの「時のみぞ知る」を読みながら聴いていたのですが、第12番変ホ長調の第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ」が流れてくると、思わず目を休めて曲に聴き入ってしまいました ベートーヴェンは深いです

 

          

 

と言う訳で、昨日午後サントリーホールで東京交響楽団の第610回定期演奏会を聴きました プログラムは①リヒャルト・シュトラウス「交響詩:ドン・ファン」、②バルトーク「ヴァイオリン協奏曲第1番」、③リヒャルト・シュトラウス「交響詩”英雄の生涯”」です。指揮は秋山和慶、コンサートマスターは大谷康子、②のヴァイオリン独奏はイェウン・チェです

 

          

 

6月号のプログラムでリヒャルト・シュトラウス「ドン・ファン」の解説を見ていて、おやっと思いました 7行目に作曲者が「音詞」と名付けた作品の最後の曲として「英雄と生涯」と書かれています。単純な校正ミスだと思いますが、目立ちます 後世に残らないように更生してほしいと思います

オケがスタンバイして、ロマンスグレイの秋山和慶の登場です。タクトが振り下ろされ、冒頭からオケはフル回転です ドン・ファンが風車目指して突っ込んでいくような勢いを感じさせる演奏です 秋山和慶の指揮を見ていていつも思うのは、キビキビしていて気持ちが良く、オーケストラのメンバーも演奏しやすいのではないか、ということです オーケストラが指揮者に全幅の信頼を寄せていることが分かります。かつてNHK交響楽団を振った故・ウォルフガング・サヴァリッシュを髣髴とさせるシュアな指揮振りです

弦楽器が縮小され、ソリストのイェウン・チェがワイン・レッドのノースリーブ・ドレスで颯爽と登場します1988年ソウル生まれといいますから現在25歳。年の割にしっかりとした印象を受けます 

バルトークのヴァイオリン協奏曲第1番は、天才ヴァイオリニストと言われたゲイエルという女性のために作曲されたのですが、彼女に振られてしまったのですね したがってこの曲の初演はバルトークの死後、ゲイエルの没後に遺稿を譲り受けたパウル・ザッハ―によって実現したのでした

この曲は、ヴァイオリンの独奏から始まります。次いで第1ヴァイオリンの2人が加わり、さらに2人が加わり、次に第2ヴァイオリンが加わり、ヴァイオリン・セクション全体に広がり、管楽器が加わります 室内楽からオーケストラ曲へと移行するような曲です イェウン・チェは第1楽章「アンダンテ・ソステヌート」を一音一音を丁寧にゆったりと紡いでいきます。第2楽章「アレグロ・ジョコーソ」は一転、民族的なメロディーを軽快に奏でます

会場一杯の拍手に、イェウン・チェはコンマスの大谷康子に何やら話かけ、大谷が新しい楽譜を譜面台に載せて2人で向かい合います。どうやら2人でアンコールを演奏するようです まず大谷が舞曲のようなメロディーを奏でると、イェウン・チェがそれに応えます。バルトークのようですが、曲名までは判りません。しばし軽快な二重奏が続いて2人の弓が上がりました。会場一杯の拍手 が二人を包み込みました。あとで会場の外の掲示をみて、それがバルトークの「44の二重奏曲から第35曲”ルテ二アのコロミイカ舞曲”」であることを知りました 同じ韓国のヴァイオリニスト、シン・ヒョンスは新日本フィルとブラームスの協奏曲を演奏した時、弦楽セクション全体を巻き込んでアンコールを演奏しました。韓国の女性ヴァイオリニストはオケのメンバーを巻き込んで一緒に楽しむのが好きなのかも知れません 日韓両国の友好関係のためにも素晴らしい試みではありませんか 音楽に国境はない

休憩後のリヒャルト・シュトラウス「英雄の生涯」は、先週東京藝大学生オケで聴いたばかりの曲ですオケが再び拡大され舞台が狭く感じます。冒頭「英雄」のテーマがフルオーケストラで勇壮に展開されます 続く「英雄の敵」ではフルートとオーボエによる批評家たちの”悪口”が皮肉たっぷりに奏でられ、思わずほくそ笑んでしまいます 続く「英雄の伴侶」での大谷康子のヴァイオリン・ソロは、英雄を優しく支え、時に激しく応援する伴侶の姿を髣髴とさせる見事な演奏です 「英雄の戦場」「英雄の業績」を経て、最後に「英雄の完成と引退」が勇ましく、その後穏やかに演奏されます。ここでのイングリッシュ・ホルンの懐かしいようなメロディーは深く心に残ります

演奏を振り返ってみると、この日の「英雄の生涯」は指揮者・秋山和慶の半生を振り返った演奏ではなかったか、とさえ言えるほど充実していたように思います

 

          

 

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サントリーホール・チェンバーミュージックガーデン~オープニング・コンサートを聴く

2013年06月02日 07時01分46秒 | 日記

2日(日)。昨日の日経朝刊に「家のピアノでプロがライブ~演奏データを配信」という記事が載りました記事を要約すると、

「ヤマハは5月、米国でピアノ演奏番組のネット配信サービスを始めた 単に演奏会の様子を生放送するのではない。著名な奏者が弾くピアノには高精度なセンサーと通信装置を付け、鍵盤やペダルの動きをデータに変換。利用者はパソコン経由で自宅の自動演奏機能付きピアノで受信すると、ほぼ同時にピアノがプロの音色を奏でる 総務庁の調査によると、ピアノを所有する世帯の割合は約20%。家庭に1千万台近いピアノがある計算だが、使われていないピアノが多い。ネット技術でこうしたピアノを再生すれば、新ビジネスが広がる可能性がでてきた

この記事を読んで「さすがはヤマハ 何でも商売に結び付けるものだ」と感心しました。しかし、遠くの会場で演奏した音をデータ変換によって自宅のピアノで再現させたとしても、その演奏はあくまでも「再生音楽」です 演奏家が目の前で演奏しているわけではありません。言うまでもなく、コンサート会場で聴くときにはその会場の残響時間や客の収容人数などに左右されます ボリュームを上げたり下げたりすることも出来ません それらをトータルして生演奏の醍醐味を味わっているわけです。したがって、いくらこういうテクノロジーが進んでも「音楽はコンサート会場に出かけていって聴くべきもの」というポリシーの私には全く興味がありません。あっ、その前にピアノ持ってないし・・・・・・

 

  閑話休題  

 

サントリーホールがブルーローズ(小ホール)で毎年6月に開いているサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンが昨日から始まりました このコンサートは5月のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンとともに私が毎年楽しみにしている音楽祭です

昨夕、ブルーローズでそのオープニング・コンサートを聴きました プログラムは①プーランク「チェロ・ソナタ」、②ドビュッシー「チェロ・ソナタ」、③フォーレ「チェロ・ソナタ第1番」、④ラヴェル「ピアノ三重奏曲」です

出演者はヴァイオリン:依田真宣、チェロ:堤剛、ピアノ:クレール・デゼールです 依田は2010年3月に東京藝大大学院を修了したばかりの俊英です。堤は今年3月まで桐朋学園大学学長を務め、2007年からサントリーホール館長を務めています。デゼールはパリ国立高等音楽院室内楽教授で、日本でも5月のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに出演するなどお馴染みのピアニストです

 

          

 

自席はC4列32番、センターブロックの左側です。ピアニストもチェリストも良く見える絶好の位置です客席が舞台をコの字で囲む配置となっています ブルーローズは通常スクール形式ですが、室内楽を演奏する時はこのスタイルを採るようです。会場はほぼ満席。照明が落とされて、意外なアナウンスがありました

「演奏に先立ちまして、さきに亡くなられたチェリスト、ヤーノシュ・シュタルケル氏を偲んで、コダーイの”アダージョ”を演奏いたします。故人を偲んで皆さまそれぞれが冥福を祈っていただけたらと存じます。なお、演奏前後の拍手はご遠慮下さるようお願いいたします」

そして堤剛とクレール・デゼールが登場、静かに”アダージョ”を演奏しました 10分程の穏やかな曲でした。シュタルケルと言えばコダーイの無伴奏チェロ・ソナタのLPがこの曲の決定盤でした 個人的には、トッパンホールで室内楽コンサートがあった時にシュタルケルが出演していて、その時会場に皇太子夫妻が聴きに来られていたのを思い出します。その時雅子さんはご懐妊中でした

静かに曲を閉じた後、堤とデゼールは一旦舞台袖に引き上げて、再び拍手に迎えられて登場しますデゼールは鮮やかなブルーのブラウスに黒のパンツルックです

1曲目のプーランク「チェロ・ソナタ」は、プーランクらしいウィットに富んだ軽妙洒脱な音楽です 2曲目のドビュッシー「チェロ・ソナタ」の演奏に入る前、デゼールは椅子を高めに調整しました 堤は時々、薄目を開けながら”座頭市目線”で演奏するので、出来るだけデゼールの方を見るように努めました

休憩後のフォーレ「チェロ・ソナタ第1番」を演奏する前に、デゼールはさらに椅子を高めに調整しました。プーランクよりもドビュッシーの方が、ドビュッシーよりもフォーレの方が、より高い位置から打鍵することを予言しているようでした

普段あまり馴染みのない曲を聴く際に心がけていることがあります。それは、すべての楽章を集中して聴くことは困難なので、アダージョ楽章(ほとんどが第2楽章)だけは集中して聴くのです。アダージョ楽章の演奏が良い場合は他の楽章も良いものです

そういう意味で、フォーレのソナタは、堤のチェロは良く歌い、デゼールのピアノは良く付けていました

ヴァイオリンの依田真宣が加わって、最後の曲、ラヴェル「ピアノ三重奏曲」が演奏されます 冒頭、ピアノが入ってくるところで「ああ、ラヴェルっていいな」と思い、次いでヴァイオリンが入ってくると「ラヴェルって最高だな」と思いました。白熱の演奏の中、フィナーレを迎えましたが、今回感心したのは、ほとんど新人の依田真宣のヴァイオリンです この人は近い将来、この世界に名前を轟かせることになるかもしれません。注目です

この日のコンサートはフランスもの4連発でしたが、十分楽しませていただきました

 

          

 

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