人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

アンジェラ・ヒューイット「バッハ オデッセイ3」を聴く~パルティータ第1番,第2番,第4番ほか / 「アマデウス」の演出家 ピーター・ホールさん死去 / 来年のラ・フォル・ジュルネ

2017年09月14日 08時02分20秒 | 日記

14日(木).昨日の日経朝刊「東京首都圏経済面」に「来年から池袋でも 東京国際フォーラム」という見出しの記事が載っていました   それによると,毎年ゴールデンウィークに東京国際フォーラムで開かれている「ラ・フォル・ジュルネ音楽祭」は,2018年(5月3~5日)に開催エリアが拡大し,池袋の東京芸術劇場が加わることになったとのことです   一般的には開催場所が増えることは良いことだと思いますが,例年コンサートのハシゴをしている身からすると,電車での移動が伴うことになるので かえって不便になる可能性もあります   その意味で,2018年のプログラムと開催場所の組み合わせが気にかかります

ということで,わが家に来てから今日で1079日目を迎え,国連安全保障理事会が全会一致で採択した北朝鮮への制裁決議について,北朝鮮が「わが国の正当な自衛権を剥奪し,全面的な経済封鎖で国家と人民を完全に窒息させることを狙った極悪非道な挑発行為の産物だ」と批判したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       「極悪非道」は 身内を含めて何千人もの無実の人を粛清した 北のトップでは?

 

                                           

 

昨日,夕食に「鶏ももキャベツの味噌マヨガーリック」「生野菜とサーモンのサラダ」「冷奴」「トマトとウィンナとレタスのスープ」を作りました   「鶏もも~」はキャベツを炒め過ぎないのがコツです

 

     

 

                                            

 

昨日の新聞各紙に英国の演出家ピーター・ホールさん死去の記事が載っていました.1960年に名門劇団ロイヤル・シェークスピア・カンパニーを創設,73~88年にはロンドンのナショナル・シアターで芸術監督を務めました

ピーター・ホールさんで思い出すのは,1982年に池袋のパルコ劇場で上演された「アマデウス」公演です   「アマデウス」はイギリスの劇作家ピーター・シェーファーによる戯曲です   サリエリを9代目松本幸四郎,モーツアルトを江守徹,コンスタンツェを藤真利子という顔ぶれで上演されましたが,この時の演出がピーター・ホールさんでした   冴えないオーバーコートで登場した幸四郎が,一瞬でコートを脱ぎ棄て,若きサリエリに変身した時の鮮やかさが今でも脳裏に蘇ります   あらためてピーター・ホールさんのご冥福をお祈りいたします

 

                                           

 

昨夕,紀尾井ホールでアンジェラ・ヒューイット「バッハ  オデッセイ3」公演を聴きました   プログラムはJ.S.バッハの①パルティータ第1番変ロ長調BWV825,②同:同 第2番ハ短調BWV826,③同:ソナタ  ニ短調BWV964,④同:パルティータ第4番ニ長調BWV828です

アンジェラ・ヒューイットは,カナダの音楽一家に生まれ3歳でピアノを始め,4歳で聴衆を前に演奏し,5歳で最初の奨学金を得ました.1985年のトロント国際バッハ・ピアノ・コンクールで優勝し,一躍世界の注目を集めました   彼女は2016年秋に「バッハ  オデッセイ(バッハ遍歴の旅)」プロジェクトを発表し,向こう4年間に渡りバッハのソロ鍵盤曲の全曲をロンドン,ニューヨーク,オタワ,東京,フィレンツェなどの各都市で各々12公演奏するプロジェクトに着手しました   今回のリサイタルはその一環として開かれた公演です   私は前回 5月30日に「オデッセイ1,2」でバッハ「フランス組曲」全曲を聴いて以来です

 

     

 

自席は1階14列4番,左ブロック右から2つ目です.会場は9割近く入っているでしょうか

ステージ中央には彼女が弾くFAZIOLIがスタンバイしています   FAZIOLI(ファツィオリ)は1981年にイタリアで創業した新興ピアノ・メーカーのグランド・ピアノです.スタインウェイが世界のピアノの中心の中,最近ではFAZIOLIが急伸し,現在ではジュリアード音楽院にも納入され,ショパン国際コンクールでも使用されています

アンジェラ・ヒューイットが黒を基調とするピンクとライトブルーの模様を配したモダンな衣装で登場,FAZIOLIに向かいます

この日演奏される4曲について彼女自身がプログラムノートに解説を書いています   彼女のCDジャケットに書かれた文章を転載したものと思われますが,演奏家の立場から曲目が解説されていて,聴くうえで参考になります

 

     

 

1曲目の「パルティータ第1番変ロ長調BWV825」について,ヒューイットは「フランス組曲の延長線上にあり,優美で軽快で活気があり,しかも高貴さも備わっている」と書いていますが,まさに全6曲のパルティータの最初にふさわしい輝かしい曲です   とくに4番目の「サラバンド」における彼女の明快なタッチによるトリルが印象的でした

2曲目の「パルティータ第2番ハ短調BWV826」について,ヒューイットは「音楽的にもテクニック的にも より難解である」としています   最初の「シンフォニア」の冒頭はドラマティックで強く印象に残ります   最後の「カプリッチョ」は聴きごたえがあるだけに,かなり演奏が難しそうな曲ですが,ヒューイットは何の苦もなく軽快に演奏します

3曲目の「ソナタ ニ短調BWV964」は「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ イ短調BWV1003」を自身が編曲した作品です   この曲についてヒューイットは次のように書いています

「鍵盤用に編曲されたソナタをヴァイオリニストが聴くと,不愉快な思いをするのではないだろうか.ヴァイオリンではひどく難しかったところの多くが,両手だと簡単に演奏できるからだ

ピアニストならではの視点だと思います   この曲では3曲目の「アンダンテ」における優しく美しい演奏が印象に残りました

最後の「パルティータ第4番ニ長調BWV828」について,ヒューイットは

「輝かしい作品だ   親密感と壮麗さの両方をたっぷりと備えており,パルティータ第6番とともに,もっとも長い組曲となっている

と書いています その通り,この曲はパルティータ全6曲の集大成のような充実した作品で,とくに最後の「ジーグ」では,ヒューイットの情熱的な演奏が印象的でした

 

     

 

「バッハ・オデッセイ5,6」は来年5月22日と24日に開かれます   チケットは12月上旬に発売とのこと.是非聴きに行きたいと思います

 

     

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藤野英人著「投資レジェンドが教えるヤバい会社」を読む~「ヤバいい会社」と「ヤバ悪い会社」の見分け方を指南

2017年09月13日 07時49分16秒 | 日記

13日(水).昨日は今月の中でコンサートも映画も予定がない貴重な1日でした   午前中に池袋のサンシャイン60に入居するクリニックで「人間ドック」を受けてきました   今回で4年連続です   朝8時から受付のコースを選んだので 朝起きてからあわただしく過ごしました   よりによって,本来ケージに入っているべきモコタロが 早朝からリビングで跳ね回っていた(要するに徹夜で遊んでいた)ので,国連決議に基づいて 外出禁止令を通告し ケージに誘導したりしていたので時間を食いました  

人間ドックは受付番号が3番でスムーズに受診できました.例年の検診科目に加え今回はピロリ菌検査もオプションで追加しました   検診は約1時間くらいで,その後,30分後から検診結果の概要説明があり,トータルで2時間くらいかかりました.概要説明では昨年とあまり変わらないとのことで,相変わらず聴覚は高音部が聴こえていないとのことでした   視力も若干低下しています   頭の方は著しく退化しています(これは自己診断)

受診後,JRで有楽町に移動し,東京交通会館地下で開催している「アトリエぱるる絵画展」を観ました   知人のKさんが油絵による花の絵を2点出展していました.昨年より上達しているように思います   ご本人が不在だったので名前を記帳してきました

 

     

 

ということで,わが家に来てから今日で1078日目を迎え,国連安全保障理事会が11日夕(日本時間12日朝),北朝鮮への追加制裁決議を全会一致で採択した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                初めて石油の規制に踏み込んだけど  北朝鮮にとってオイル・ショックになるか?

 

                                           

 

昨日,夕食に「すき焼き」ならぬ「すき煮」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました   「すき煮」の材料は牛肉,玉ねぎ,しらたき,厚揚げ,小松菜です     

昨日は午前9時から午後5時まで,マンションの給水設備改修工事に伴い全戸断水になったので,日常生活に影響が出る可能性があったのですが,事前に分かっていたので,水を汲み置きするなど対策を施していたので,料理,トイレ,風呂などに特段の支障はありませんでした   要は普段の心掛けですね

 

     

 

                                           

 

藤木英人著「投資レジェンドが教えるヤバい会社」(日経ビジネス人文庫)を読み終わりました   藤木氏の本は「投資家が『お金』よりも大切にしていること」(星海社新書)をご紹介しましたね   藤木氏は数ある投資信託の中でダントツの成績を誇り急成長している「ひふみ投信」のファンドマネージャーです   最近では9月5日付の日経新聞のコラム「一目均衡」でも取り上げられました

 

     

 

この本で言う「ヤバい」会社というのは,「ブラック企業」のような悪い意味の「ヤバい会社」のほか,いま若者たちの間で良い意味で使われている「ヤバい」=「ヤバいい」会社の両方を意味しています   藤木氏がファンドマネージャーとして30年近くにわたり企業調査を続け,約6,500人の社長と直接会って話を聞いてきた経験を基に執筆しているので説得力があります

この本は次の3つの章から構成されています

①第1章  会社の性格は社長で決まる! 大成功する会社の社長は例外なく「ケチ」

②第2章  ブラック企業はこう見抜け! 投資に適さない「ヤバ悪い」会社の見分け方

③第3章  社内結婚の多い会社は儲かっている! 急成長する「ヤバいい」会社のヒミツ

④第4章  産卵後に死んでしまうサケでなく,メンドリを探せ! ベンチャー企業の成功法則

⑤第5章  会社を見分ける3つの基準 ナオコの原則

第1章では,「サラリーマン社長の会社は成長が期待できない」「社長の保有株比率が高い会社の方が株価が上昇する」「社長自ら情報公開しない会社は売り」「大成功している社長は例外なく『ケチ』で『メモ魔』で『細かい』」「『ラーメン店をつくって成功しそうな社長』の会社に投資する」「自社サイトの社長挨拶の主語が『私,私たち』の会社は伸びる」など,19の法則を掲げています

第2章では,「豪奢な新社屋に入居した会社はその時点が業績や株価のピーク」「自社ウェブサイトに社長の写真が載っていない会社は要注意」「『ブラック企業』見極めのポイントは生え抜き幹部の有無」「『役員が多すぎる』『相談役や顧問がいる』会社は将来性がない」など,25の法則を掲げています

最後の第5章「会社を見分ける3つの基準 ナオコの原則」の「ナオコ」とは,①企業の「ナカマ」から協力を得るためのポイント,②事業=「オコナイ」を分析するポイント,③企業の「ココロ」を読むポイントのことを指しています

藤野氏は「ヤバいい」会社についてはあえて社名を公表していますが,反対に「ヤバ悪い」会社は名前を伏せています   言うまでもなく,ファンドマネージャーとしての良心でしょう

現在,就活中の学生諸君や 何らかの投資をしている人はもちろんのこと,これから投資をしようとしている人にとっても,具体的で直接役に立つ情報が満載です   「貯蓄から投資へ」が喧伝される現代,慌てて行動する前にこの本を読むことをお薦めします

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紀尾井ホール室内管弦楽団アンサンブル公演第1弾「五重奏のカレイドスコープ」を聴く~ベートーヴェン「ピアノと管楽のための五重奏曲」,レーガー「クラリネット五重奏曲」ほか

2017年09月12日 07時00分52秒 | 日記

12日(火).昨夕は,娘が飲み会で,息子が大学のゼミ合宿で,私がコンサートだったので夕食は作りませんでした たまにはこういうことがあってもいいよね 

ということで,わが家に来てから今日で1077日目を迎え,北朝鮮への制裁強化を盛り込んだ国連安全保障理事会決議採択を主導する米国に対し,北朝鮮が「わが国の自主権と生存権を完全に抹殺しようとする米国の制裁,圧力策動が極めて無謀な域に至っている.採択されれば,必ず相応の代償を払わせる」とう声明を出した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

    

     声明の冒頭を「わが金正恩一族の自主権と生存権を~」と訂正するよう求めます

 

                                           

 

昨夕,紀尾井ホールで 紀尾井ホール室内管弦楽団(旧・紀尾井シンフォニエッタ東京)によるアンサンブルコンサート第1回目「五重奏のカレイドスコープ」を聴きました   「カレイドスコープ」とは「万華鏡」のことで,今回のプログラムがスタイルの異なる3曲の五重奏曲を取り上げているところから名付けられたものです.

プログラムは①ライヒャ「変奏曲」(ファゴットと弦楽四重奏のための),②ベートーヴェン「ピアノと管楽のための五重奏曲」,③レーガー「クラリネット五重奏曲」です   演奏は,ピアノ=上原彩子,クラリネット=鈴木豊人,鈴木高通(新日本フィル),オーボエ=蠣崎耕三(読響首席),ファゴット=福士マリ子(東響首席),ホルン=丸山勉(日本フィル客員首席),ヴァイオリン=山崎貴子,今井睦子,ヴィオラ=安藤裕子(藝大フィルハーモニア首席),チェロ=中木健二(藝大准教授)です

 

     

 

自席は1階1列5番,最前列の左ブロック右通路側です.紀尾井ホールの最前列で聴くのは初めてです   会場は9割以上入っているでしょうか.よく入りました

1曲目はライヒャ「ファゴットと弦楽四重奏のための変奏曲ト長調」です   こういう楽器の組み合わせによる五重奏曲は珍しいと思います   アントン・ライヒャ(1770~1836)はベートーヴェン(1770~1827)と同じ年の生まれで,1789年には二人揃ってボン大学に入学しているほど身近な存在だったようです.1818年にはパリ音楽院の作曲家の教授となり多くの作曲理論書を著しています

演奏はファゴット=福士マリ子,第1ヴァイオリン=山崎貴子,第2ヴァイオリン=今井睦子,ヴィオラ=安藤裕子,チェロ=中木健二です   福士マリ子はローズ・レッドの鮮やかな衣装,他の4人は黒で統一しています

この曲は主題と7つの変奏とコーダから成っていますが,ト長調という調性の性格から全体的に明るく明瞭な曲想で,時に福士マリ子の超絶技巧が披露されます   彼女は東京交響楽団の定期演奏会で見たことがあるだけで,これほど身近に姿を見たのは初めてです   曲を聴いて,同じ年の生まれの作曲家でもこれほどレベルが違うのかという印象を受けました   これは演奏が優れているからこそ言えることです

2曲目はベートーヴェン「ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調」です   この曲はモーツアルトの「ピアノと管楽のための五重奏曲変ホ長調K452」に触発されて作曲されたのではないかと言われています   同じ楽器編成(ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴット),同じ調性(変ホ長調),同じ楽章構成(第3楽章=ロンド)などがその根拠になっています   第1楽章「グラーヴェ~アレグロ・マ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」,第3楽章「ロンド:アレグロ・マ・ノン・トロッポ」の3つの楽章から成ります

演奏はピアノ=上原彩子,オーボエ=蠣崎耕三,クラリネット=鈴木高通,ファゴット=福士マリ子,ホルン=丸山勉です   上原彩子は白を基調とし 青と紫の花をあしらったエレガントな衣装で登場です

この曲の演奏はクラシック界を代表する演奏家による名人芸が聴けます   管楽器同士の,あるいは管楽器とピアノとの掛け合いが素晴らしく,見事なハーモニーが奏でられます   第2楽章ではタイトル通りのカンタービレが聴けます.オーボエが一瞬不安定になりましたが,すぐに持ち直しました   まさに「室内楽の極みを聴く」という見事な演奏でした

 

      

 

休憩後はレーガー「クラリネット五重奏曲イ長調」です   マックス・レーガー(1873~1916)はシェーンベルク(1874~1951)とほぼ同世代の作曲家ですが,音楽スタイルは古典回帰のような曲想です   第1楽章「モデラート・エド・アマービレ」,第2楽章「ヴィヴァーチェ」,第3楽章「ラールゴ」,第4楽章「ポコ・アレグレット」の4つの楽章から成ります

演奏はクラリネット=鈴木豊人,第1ヴァイオリン=山崎貴子,第2ヴァイオリン=今井睦子,ヴィオラ=安藤裕子,チェロ=中木健二です

第1楽章の冒頭を聴いていたら浮遊感を覚えました   どこかシェーンベルクに似た混沌とした曲想です   しかし,しばらくすると,耳が曲に慣れてきたせいか,比較的素直に音楽が耳に入ってくるようになりました   第2楽章は軽妙でユーモラスです.第3楽章はこの曲で一番美しいと思いました   クラリネットの鈴木豊人の見事な演奏を聴いていて,そういえば数年前にこの会場で聴いたモーツアルトの「グランパルティータ」は名演だったな,と思い出しました   レーガーは馴染みの薄い作曲家ですが,この曲は楽しめました

5人はアンコールにモーツアルトの「クラリネット五重奏曲イ長調K581」から第2楽章「ラルゲット」を演奏しました   第1ヴァイオリンを中心とする抑制の利いた弦楽合奏に乗せて奏でられるクラリネットは天国的で,この日の演奏の中で一番良かったのではないか,とさえ思いました   コンサートの聴き手としては,プログラムがベートーヴェン以外は馴染みの薄い作曲家の作品だっただけに,アンコールにモーツアルトの名曲を聴くことが出来て嬉しいのですが,冷静に考えると,コンサートのあり方として 果たしてこれで良いのか,という疑問が湧いてきます   つまり,モーツアルトの「ラルゲット」が直前に演奏されたレーガーを吹き飛ばしてしまったのではないか,ということです

ロシアのピアニスト,奇才アファナシエフは絶対にアンコールに応えません   それは彼が「演奏家はプログラムに乗せた曲を聴いて欲しいのだ.アンコールを演奏してその方が印象に残るとしたら本末転倒だ」と考えているからです.つまり,彼が一番恐れているのは,アンコールがプログラムに乗せた曲を駆逐してしまうことなのです

演奏家は,サービス精神からアンコールを演奏するのだと思いますが,アンコールが良ければ良いほど本来聴いて欲しい曲がすっ飛んでしまう恐れがあります   素晴らしい演奏に対して賞賛の拍手を送るのは良いことですが,アンコールが聴きたくて何度もカーテンコールを求めるのはいかがなものでしょうか  

今回の公演について言えば,「モーツアルトは最初から演奏することが決まっていた.ただプログラムに書かなかっただけだった.したがってアンコール込みで今回のコンサートを捉えれば,演奏家が本来聴いて欲しい曲は演奏したすべてだったのだから,全体としてはバランスが取れていた」と自分を納得させることにしました  こじつけがましいですが,そうしないと「本来聴いて欲しい曲がすっ飛んでしまう」という意識が拭い去れないのです   いずれにしても,アンコールのあり方について,われわれ聴衆側としても考えなくてはならないと思います

 

     

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「戦中日本のリアリズム~アジア主義・日本主義・機械主義」公演を聴く~サントリー サマーフェスティバル / 音響設計者・豊田泰久さんがホール設計で目指すこと

2017年09月11日 08時04分46秒 | 日記

11日(月).昨日の日経朝刊「NIKKEI THE STYLE」が音響設計者の豊田泰久さんを取り上げていました   豊田さんは1952年広島県生まれ.九州芸術工科大学を卒業後,永田音響設計に入社.現在は同社のロサンゼルスの現地法人とパリの支社の代表を務めています   豊田さんと言えば,つい最近リニューアル・オープンした「サントリーホール」をはじめ,同じヴィンヤード形式の「ミューザ川崎シンフォニーホール」,そして「札幌コンサートホールKitara」,海外に目を転じると米ロサンゼルスに2003年に完成した「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」,今年1月にオープンしたドイツ・ハンブルクの「エルプフィルハーモニー・ハンブルク」,さらに,ロシアの「マリインスキー・コンサートホール」等の音響設計を担ったことで世界中にその名を轟かせています

「音響設計とはどんな仕事か」という質問に「突き詰めると,部屋の形と材料(を決めること)」と語ります   建物そのものを設計する建築家と相談しながら,どういう形状の反響版や反響壁をどこに置くかを考えるとのことです.豊田さんは,新しいホールの仕事を引き受けると,実物の10分の1サイズ,大人が入れるほどの大きさの模型を製作し,客席には人形を座らせ,実際に聴衆がいる状態を作って,音響実験を繰り返すといいます   同業者は世界に数多いが模型まで作る人は少ないだろうとのこと.その豊田さんが目指すのは「リッチでクリアな音」,それに加えて「intimacy.日本語にするなら,親密さ」だと語ります   「どの席がベストですか?」と尋ねられることが多いが,「ベストの席はありません.素晴らしい席はあります」と答え,「うれしいのは,自分の席がベストだと言ってもらえたとき」だと語ります

私がこれまで聴いてきた中で一番好きなコンサートホールは「サントリーホール」で,次は「ミューザ川崎コンサートホール」です.共通点はヴィンヤード形式(舞台を客席で囲む)のホールということですが,どの席で聴いてもそれなりに満足のできる音で音楽を聴くことが出来ます   反対に,同じ規模のホールで最悪だと思うのは渋谷の「オーチャード・ホール」です   音が頭の上をスース―通過していく感じがします

ということで,わが家に来てから今日で1076日目を迎え,陸上の男子100メートルで21歳の桐生祥秀(東洋大4年)が9日,日本新記録の9秒98(追風1.8メートル)をマークし,日本選手で初めて10秒の壁を破った というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      ご主人は中学で13秒2,高校で11秒6だったと言っているよ キミ聞いてんの?

 

                                           

 

昨日,サントリーホールで「片山杜秀がひらく日本再発見 戦中日本のリアリズム~アジア主義・日本主義・機械主義」公演を聴きました   プログラムは①尾高尚忠「交響幻想曲”草原”」,②山田一雄「おほむたから(大みたから)」,③伊福部昭「ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲」,④諸井三郎「交響曲第3番」です   ③のピアノ独奏=小山実稚恵,管弦楽=東京フィル,指揮=下野竜也です

ソ連のスターリン時代にプロコフィエフやショスタコーヴィチらは「時局の要請」と「個人の表現」をギリギリのところで折り合わせる努力によって名作の数々を生み出していったが,太平洋戦争中の日本の作曲家たちも,これとかなりよく似た状況下で作曲したのではないか,という視点に立って企画された公演です

  

     

 

自席は1階19列16番,センターブロック左通路側席です.会場は1階席を中心にかなり入っています   東京フィルの面々が配置に着きます.オケは左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです.コンマスは三浦章広です

1曲目は尾高尚忠(1911-51)の「交響幻想曲”草原”」です   この曲は1943年7月に完成,翌44年3月に尾高尚忠指揮日本交響楽団(現・N響)により初演されましたが,その後数回演奏されたものの,戦後の演奏は今回が初めてではないか,と言われまています

尾高尚忠はこの作品の楽譜に「この作品は蒙古(モンゴル)の大草原,いわゆるステップ地帯を主題とする幻想的交響詩である」と書いているとのことです

下野の指揮で演奏に入りますが,たしかに作曲者が思い描いた通りの,地平線が広がる大草原や,人馬一体となった行進の様子などを思い浮かべるような雄大な音楽が展開します

演奏後,下野は指揮台からスコアブックを持ち上げ,「この作品に拍手を」とアピールしました

2曲目は山田一雄(1912-91)の「おほむたから(大みたから)」です   この曲は1944年1月に完成,山田一雄指揮日本交響楽団(同上)により初演されました.「おほむたから」は発音すると「おおんたから」で,「おほむ」を漢字にすると「大御」で「天皇」を意味し,「たから」は「田から」で「田の仲間=農民」と同義,そこから「おほむたから」は「天皇の民」,つまり,この作品は戦時における日本国民の姿を描いた曲ということになります   この曲の楽譜は戦後,山田によって隠し通され,復活演奏は2001年4月に飯守泰次郎指揮新交響楽団(アマオケ)によって行われました

下野のタクトで曲が開始されますが,途中からマーラーの交響曲第5番第1楽章に似た旋律が出てきて,明らかにマーラーの影響を感じます   特に中盤で急激に管弦楽の嵐が吹き荒れますが,ほとんどマーラーそのものと言っても過言ではない音楽です   当時の山田一雄がマーラーに心酔していたことがよく伺えます

この曲の終了後も,下野はスコアブックを持ち上げ,作曲者を讃えました

 

     

 

1回目の休憩後の3曲目は伊福部昭(1914-2006)の「ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲」です   この曲は1941年に完成,翌42年3月にマンフレート・グルリット指揮東京交響楽団(現・東京フィル)によって初演されました.この曲は3つの楽章から成ります

伊福部はこの曲の初演のプログラムに「血液の審美と現代のダイナミズムの結合がこの作品の主体である」と書いていますが,ここでいう「血液の審美」とは,民族的性格の賛美のことを指しています   よく知られているように,伊福部は北海道の田舎でアイヌと付き合ってきたことから,「民族」を強く意識した作品を数多く残しています

ピア二ストの小山実稚恵が下野とともに登場しピアノに向かいます   下野の指揮で第1楽章が開始されます.冒頭から「日本のストラヴィンスキー」とでも言いたくなるような,リズムが炸裂する曲想です   あの「ゴジラ」のメインテーマを思い出しました   第2楽章はオーボエとフルートが寂寥感を湛えた音楽を奏で,ピアノが呼応します   第3楽章は再び,リズム中心の管弦楽炸裂の音楽です.こういう音楽を聴くと日本人の血が騒ぎます

満場の拍手に,小山は伊福部昭の「ピアノ組曲」から「七夕」をしみじみと演奏,聴衆のクールダウンを図りました

 

           

 

2回目の休憩の後は諸井三郎(1903-77)の「交響曲第3番」です   この曲は1943年4月から翌44年5月にかけて作曲され,1950年5月に山田一雄指揮日本交響楽団(同上)により初演されましたが,その後は1978年の作曲者の追悼コンサートまで演奏されず,それ以降は本名徹次と飯守泰次郎の指揮で新交響楽団(アマオケ)が取り上げています   プロのオケが公開で演奏するのは今回が39年ぶりとのことです

この曲は第1楽章「静かなる序曲ー精神の誕生とその発展」,第2楽章「諧謔について」,第3楽章「死についての諸概念」の3つの楽章から成ります

全曲を通して聴いた限り誰とも違う曲想ですが,これと言った特徴が捉えにくい曲という感じがします   その中で,印象に残ったのは第3楽章のフィナーレです.交響曲と言えば,管弦楽総動員による大音響のフィナーレを思い浮かべますが,この曲はまったく反対で,曲で例えれば,ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」のフィナーレのように穏やかに幸福感に満ちて終わります   特徴と言えばそれが特徴だと思います

下野はこの曲が終わると,拍手の中 舞台袖に引き上げ,この日演奏したすべてのスコアブックを両手に抱えて登場し,譜面台に置き,「この作品たちに拍手を」と賞賛を求めました   聴衆は作曲者と演奏者に大きな拍手を送りました

この日演奏された4曲の中では,伊福部昭の作品が一番私の好みに合っていました   伊福部のLPを何枚か持っていたはずですが,見つからないので,折を見てCDを買おうかと思います

 

     

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パーヴォ・ヤルヴィ+NHK交響楽団でモーツアルト「ドン・ジョヴァンニ」を聴く~充実した歌手陣:NHK音楽祭2017

2017年09月10日 08時05分12秒 | 日記

10日(日).わが家に来てから今日で1075日目を迎え,北朝鮮が9日建国記念日を迎えたが,日米韓の3か国は追加の挑発行動をとる恐れがあるとして引き続き警戒を続ける というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                    最後は 先日訪朝したアントニオ猪木さんに 場外乱闘で決めてもらうしかないか

                    金正恩の暴挙を止めるように説得出来たら「アントキノ猪木」とヒーローになる

 

                                           

 

昨日,NHKホールで「NHK音楽祭2017」の初日公演,モーツアルトの歌劇「ドン・ジョバン二」(演奏会形式)を聴きました    

 

     

 

出演は,ドン・ジョヴァンニ=ヴィート・プリアンテ(バリトン),騎士長=アレクサンドル・ツィムバリュク(バス),ドンナ・アンナ=ジョージア・ジャーマン(ソプラノ),ドン・オッタ―ヴォ=ベルナール・リヒター(テノール),ドンナ・エルヴィーラ=ローレン・フェイガン(ソプラノ),レポレッロ=カイル・ケテルセン(バス・バリトン),マゼット=久保和範(バリトン),ツェルリーナ=三宅理恵(ソプラノ),管弦楽=NHK交響楽団,合唱=東京オペラシンガーズ,指揮=パーヴォ・ヤルヴィです

 

     

 

自席は1階R7-8番,右ブロック右から3つ目です.会場は9割方入っているでしょうか.相当人気があります   午後3時の開演に先立って,2時半から作曲家・西村朗氏によるプレトークがありました   同氏はオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の特徴として,①第2幕でドン・ジョバンニが歌うカンツォネッタの伴奏で弾かれるマンドリンは,当時のオペラでは珍しい使用例だった,②第2幕終盤で騎士長がドン・ジョバンニを追い詰めていく時にトロンボーンが響き渡るが,トロンボーンは神を象徴する楽器であり オペラでの使用は稀だった,③第1幕フィナーレのドン・ジョバンニ邸での宴の場面で,ダンスのために舞曲が演奏されるが,楽師たちは3つの楽団に分かれて舞台に上がり,まったく別の舞曲を同時に演奏するという離れ業を披露する,の3つを挙げました   モーツアルトはいつでも時代の先端を走っています

ステージ上にはオケの手前に長いベンチが2脚並べられています.これを小道具として演技をするようです   オケの並びは,左奥にコントラバス,前に左から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置をとります   コンマスはマロこと篠崎史紀氏,その隣は伊藤亮太郎氏です.ここで1000円で購入した音楽祭の総合プログラムでN響のメンバー表を見たら,チェロ首席の向山佳絵子さんの名前がありません.どうしたんでしょう

パーヴォ・ヤルヴィが登場しタクトを振り下ろします.それと同時に会場の照明がパッと消え,指揮者にスポットライトが当てられます   これは佐藤美晴さんによる演出ですが,デモーニッシュな開始の「序曲」の演奏にドラマティックな効果を与えました   どうやら佐藤さんは照明によっていろいろと仕掛けてくるようです

序曲が終わり,レポレッロ役のカイル・ケテルセン(アメリカ出身)がカジュアルなスタイルで登場,人使いの荒い主人ドン・ジョバンニへの不満を歌います   どうやら登場人物は現代の衣装で出てくるようです   そこに,ドンナ・アンナを誘惑しようとして抵抗にあって失敗したドン・ジョバンニが 追われて逃げ出してきます   ここでレポレッロとの三重唱になりますが,この音楽は最高です  

ところで,この時ドンナ・アンナ役のジョージア・ジャーマン(アメリカ出身)はワイン・レッドの派手な衣装で登場しましたが,これは演奏会形式だから許される色で,本物のオペラだったらあり得ないことです   騎士長である父親が刺殺される立場にある娘役が赤い派手な衣装を身に着けて登場することは演出上あり得ません.一方,主人公ドン・ジョバンニ役のヴィート・プリアンテ(イタリア出身)は同じ現代の衣装でも 如何にも貴族といったセレブの衣装を身に着けています

第1幕でレポレッロが「カタログの歌」を歌う時,オーソドックスな演出では小さな手帳のようなものを持って歌いますが,ケテルセンが持っていたカタログは黄色のタブレットでした   そして,ドンナ・エルヴィーラ役のローレン・フェイガン(オーストラリア出身)が歌い出すとスマホで写メしていました   いかにも現代的な演出で,思わず笑ってしまいます

正式なオペラと演奏会形式との一番の違いは,正式なオペラでは奥の舞台で歌手が歌い,手前のオーケストラ・ピットでオケが演奏する形を取るのに対し,演奏会形式では,オケが舞台に上がり奥で演奏し,その手前の客席に近いスペースで歌手が歌う形を取ることです   指揮者の立場からみると,正式なオペラは歌手とオケを目の前にしながら指揮をすることが出来るのに対し,演奏会形式では,オケは目の前なのに歌手は後ろで歌うので,前後に目配りしながら指揮をしなければならなくなります.ヤルヴィの責任重大です

 

     

 

今回の公演に出演した歌手で名前を知っているのはマゼット役の久保和範(バリトン)とツェルリーナ役の三宅理恵(ソプラノ)だけで,先に挙げたヴィート・プリアンテ,ジョージア・ジャーマン,ローレン・フェイガン,カイル・ケテルセンをはじめ,ドン・オッタ―ヴォ役のベルナール・リヒター,騎士長役のアレクサンドル・ツィムバリュクを含めた全員が初めて聴く歌手たちでした   この公演のチケットを購入するに当たり,全く知らない歌手陣を聴くことに一抹の不安がありましたが,「ヤルヴィが連れてくる歌手だから間違いないだろう」と思い,「清水の舞台から飛び降りる」思いで買いましたが,結果的には大正解でした

タイトルロールを歌ったヴィート・プリアンテをはじめ,出演者全員が演技を伴った見事な歌唱力で,素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました   特に印象に残った歌手を一人だけ挙げるとすれば,ドン・オッタ―ヴォを歌ったベルナール・リヒターです   第1幕,第2幕の両方で歌われるアリアを美しくも力強いテノールで立派に歌い上げました   改めてプログラムで彼のプロフィールを見たら今年5~6月にヤルヴィ指揮ミラノ・スカラ座公演でこの役を歌っていました

演奏会形式の良い点は舞台転換がないので,テンポよくストーリーが進み,弛緩なく歌が歌われ 音楽が演奏されることです   ヤルヴィのメリハリのあるタクトさばきによりN響は終始引き締まった演奏を展開しました 最後に,色とりどりの光の演出で舞台を盛り上げた佐藤美晴さんに拍手を送ります

 

     

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「METライブビューイング アンコール2017」でロッシーニ「オリー伯爵」を観る~ベルカント・オペラの傑作を最高の歌手で聴く

2017年09月09日 07時45分03秒 | 日記

9日(土).東京交響楽団から「2017-2018シーズン定期会員券」の請求書が届いたので,サントリーホールでの「定期演奏会」と東京オペラシティコンサートホールでの「オペラシティ・シリーズ」の会費をコンビニから振り込みました   気のせいか請求書が届くのが早かったように思います

話はまったく変わりますが,なぜ有事になると円高になるのでしょうか? 頭の悪い私にはさっぱり分かりません   北朝鮮によるミサイル発射と核実験が,アメリカ,韓国,そして日本に大きな恐怖を与えていますが,ミサイルが飛んでくるかも知れない”危ない”日本なのに,どうして”安全な通貨”として円が買われて円高になるのか 考え出すと夜も眠れません(昼寝はしますけど).だれか合理的でわかり易い説明をしていただけないでしょうか

ということで,わが家に来てから今日で1074日目を迎え,10日に初日を迎える大相撲秋場所で白鳳,鶴竜,稀勢の里の3横綱が休場することになった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                いつの時代から横綱は怪我に弱くなってしまったの? 本当は気が弱くなった?

 

                                           

 

昨日,夕食に「鶏手羽先のスープ」と「生野菜サラダ」を作りました   「鶏手羽先~」は本当は手羽元が食べやすいのですが,売り切れだったので手羽先にしました   あとはジャガイモ,大根,玉ねぎ,人参で,味付けは醤油と日本酒のみです  コスパ抜群の超簡単料理ですが美味しいです

 

     

 

                                           

 

昨日,東銀座の東劇で「METライブビューイング アンコール2017」のロッシーニ「オリ―伯爵」を観ました   これは2011年4月9日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です   キャストは,オリ―伯爵=ファン・ディエゴ・フローレス(テノール),アデル=ディアナ・ダムラウ(ソプラノ),イゾリエ=ジョイス・ディドナート(メゾ・ソプラノ),ランボー=ステファン・デグー(バリトン),養育係=ミケーレ・ペルトゥージ(バス),ラゴンド夫人=スサネ・レーズマーク(メゾ・ソプラノ).管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団,指揮=マウリツィオ・ベニーニ,演出=バートレット・シャーです 

ベニーニの指揮,シャーの演出,フローレスとディドナートの組み合わせは,先日観たロッシーニ「セヴィリアの理髪師」と同じです

 

     

 

時は13世紀の初め.フォルムディエ伯爵は部下を連れて十字軍遠征に出ており,妹のアデルら女性たちは皆,城で男たちの帰りを待っている   なぜか遠征に出なかった好色な貴族・オリ―伯爵はアデルに言い寄ろうと作戦を練っていた   修行者に化けてアデルの相談に乗り,男子禁制の城に入り込もうとしていた.しかし,彼の小姓イゾリエもアデルに恋しており,彼女に会うためにオリ―を手伝い知恵を貸すが,オリ―伯爵は正体がバレて計画はもう一歩のところで失敗に終わる   それでもオリ―は諦めず,今度は部下たちとともに修道女に化けて城に入り込む   しかし,主人の企みを見抜いたイゾリエはそれを阻止すべく行動に出る.その時,十字軍の帰還が近づいていた

 

     

 

ロッシーニのオペラって何と楽しいんだろう,と思います   「セヴィリアの理髪師」にしても,この「オリ―伯爵」にしても,ロッシーニの喜劇オペラは最高に楽しい   作品自体が優れたコメディなのに加え,バートレット・シャーの演出が冴えわたっています   舞台は劇中劇のような設定になっており,先日の「セヴィリアの理髪師」で1曲も歌を歌わなかった男優が,演出者として登場し,狂言回し役を担います   彼の指示で幕が開け閉めされ,役者が入退場し,大道具・小道具が運ばれ撤去されます 「セヴィリアの理髪師」の時はほとんど眠っている役でしたが,このオペラではキビキビと働いています

私がこのライブ映像を観るのは2回目ですが,6年前に観て忘れていたことが思い出され,あるいは新たな発見があったりしました   何よりもフローレスの歌を聴くのが最大の目的でしたが,彼の場合は,超高音のアリアの魅力に加え,コメディアンとしての才能が最大限に発揮されていて,何度も笑ってしまいました   幕間のインタビューで,この公演の当日 子どもが生まれ,出産に立ち会っていたので前夜は一睡もしておらず,すぐに歌劇場に駆けつけなければならなかった と語っていましたが,驚くべき歌手です   歌は完璧,演技も完璧です

フローレスに負けずコメディアンとしての才能を開花させていたのが女伯爵アデルを歌ったディアナ・ダムラウです   ダムラウと言えば,「ランメルモールのルチア」(2011年MET来日公演で聴いた)や「ロメオとジュリエット」(METライブ2016-17に出演)のタイトルロールなど 悲劇のヒロインを思い浮かべますが,どうしてどうして,喜劇を演じてもハマっています

そして,オリ―伯爵とアデルを奪い合うライバルの立場のイゾリエを歌ったジョイス・ディドナードのコメディアンとしての魅力は「セヴィリアの理髪師」のロジーナ役で証明済みです   今回はズボン役(女性歌手が男性を演じる)でしたが,男性でも女性でも,どちらを演じても魅力的です

第2幕の夜のシーンで,この3人の登場人物が大きなベッドで歌いながら三つ巴で絡むシーンは,可笑しくて笑い死にしそうでした

METがこのオペラを上演したのは,この公演がMET史上初めてだそうですが,その理由は,優れたベルカント歌手を3人揃えなければならないからだとのことです   その意味では,今回の公演は当時の最高レベルのベルカント歌手が,しかも演技力抜群の歌手が3人揃った公演だったと言えます

今回の成功は,3人の超一流の歌手陣はもちろんのこと,最初に書いた通り,バートレット・シャーの演出によるところが大きかったと思います

 

                                           

 

「METライブビューイング2017-18」の新しいチラシが出来ました   11月18日から始まるシーズンが待ち遠しいです

 

     

     

     

     

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東京藝大モーニングコンサートを聴く~ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」から,ギルマン「オルガンとオーケストラのための交響曲第1番」 / 新国立劇場第2回避難体験オペラコンサートを体験する

2017年09月08日 07時58分27秒 | 日記

8日(金).わが家に来てから今日で1073日目を迎え,「週刊新潮」の中づり広告を「週刊文春」が公表前に入手していた問題で,文芸春秋社の松井社長が5日付で新潮社に謝罪文を出したことが分かった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                両誌はスクープと称して どーでもいいスキャンダル暴露合戦を繰り広げてるけど

       そういうのは少なくともジャーナリズムじゃないから 勘違いしないでほしいなあ

 

                                           

 

昨日,夕食に「豚バラ大根」「生野菜とサーモンのサラダ」「冷奴」を作りました   「豚バラ~」は大根をピーラーで薄く剥くのがコツです

 

     

 

                                           

 

昨日は午前11時から上野の東京藝大奏楽堂で「第10回モーニングコンサート」を聴き,午後3時から初台の新国立劇場オペラハウスで「第2回避難体験オペラコンサート」を体験しました   

第10回藝大モーニングコンサートのプログラムは①ドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」より,②ギルマン「オルガンとオーケストラのための交響曲第1番」です   ①のソプラノ独唱=松岡多恵,バリトン=井上大聞,②のオルガン独奏=阿部翠,管弦楽=藝大フィルハーモニア管弦楽団,指揮=山下一史です

 

     

 

ウィークデーの昼間にも関わらず,多数の聴衆が押し掛けました   全自由席です.1階12列13番,センターブロック左通路側を押さえました

プログラム前半は,ドニゼッティの歌劇「ランメルモールのルチア」から3曲が歌われます   最初に藝大大学院声楽専攻2年の井上大聞(たもん)君によりルチアの兄エンリーコのアリア「残酷で,不幸をもたらす怒りよ」が歌われます   この曲は,エンリーコの所属党派が敗れ,家の危機を回避するために妹のルチアを政略結婚させようとするが,彼女が素直に承諾しないため腹を立てて歌うアリアです   井上君は声も良いし,声量もあるところは良いのですが,エンリーコの怒りがまったく伝わってきません   そこに物足りなさを感じました

2曲目は藝大大学院声楽専攻2年の松岡多恵さんにより,ルチアのアリア「あたりは静寂に包まれ」が歌われます   この曲は,ルチアが恋人のエドガルドを待つ間に歌うアリアです   マリンブルーの衣装に包まれて登場した松岡さんは,高音の伸びが素晴らしく,歌の表情も豊か   ブラボーがかかりました.気持ちはよく分かります

3曲目は二重唱「こちらへおいで,ルチア ~ 恐れに色を失うならば」が歌われます   この曲は,結婚式の準備を急ぐ兄に怒りをぶつけるルチアに,兄がエンリーコからの偽の手紙を読ませて ルチアが気が狂わんばかりになり,絶望して死を願うアリアです   この曲では,山下一史指揮藝大フィルハーモニアのしっかりした伴奏に支えられ,2人はドラマティックに二重唱を歌い上げました

 

     

 

プログラム後半は,藝大大学院器楽専攻オルガン研究分野1年の阿部翠さんによるギルマン「オルガンとオーケストラのための交響曲第1番」です   この曲は,フランスのオルガニストで作曲家のギルマンによる1878年の作品ですが,彼はパリのトリニテ教会のオルガニストを務め,パリ音楽院で後進の指導に当たるなど,生涯をパイプオルガンに捧げた人です

当時は教会の中だけに設置されていたパイプオルガンが,ホールなどにも設置されるようになった時期で,オルガンの音色の種類や音域が飛躍的に広がり,オーケストラに匹敵する音色が出せるオルガンが作られるようになった時期とのことです   それに伴って,フランス独自の「オルガン協奏曲」のジャンルが確立されたそうです

この曲は第1楽章「イントロダクションとアレグロ」,第2楽章「パストラーレ」,第3楽章「フィナル」の3つの楽章からなります

阿部翠(みどり)さんが 名前の通りグリーンの衣装で登場,ステージ正面2階に設置されたパイプオルガンに向かいます   山下一史の指揮で第1楽章が開始されますが,冒頭から力強いパイプオルガンが奏でられ圧倒されます   その後,ペダルによる低音部の胸に響く音楽が奏でられ,オーケストラとの掛け合いが始まります.ダイナミックな曲想です

第2楽章は穏やかな曲想ですが,パイプオルガン特有のフルートの音,トランペットの音,クラリネットの音,といった具合に様々な楽器を模した音色が楽しめます

第3楽章はロンド形式で,一つのテーマが繰り返されます   最後はパイプオルガンの華麗で荘重な響きが会場いっぱい広がります   ダイナミックで素晴らしい演奏でした

 

                                           

 

初台で昼食をとって,午後3時から新国立劇場の「第2回避難訓練体験オペラコンサート」に参加しました   これは演奏中に災害に見舞われることを想定したコンサートです   会場は新国立劇場オペラハウスです

 

     

 

開場時間の午後2時半に会場に着くと,すでに長蛇の列が出来ていました   説明によると,参加者は指定されたエリアごとに自由に座ることになっています.私が指定されたのは1階16~22列の間です.その範囲内ならどこに座っても良いので20列31番,センターブロック右通路側を押さえました   前回の参加者は約1300人だったそうですが,今回も同じくらい参加したのではないでしょうか

最初に進行係からこのコンサートの流れについて説明があり,「コンサートのどの時点で地震が起こるか分かりません」「係員の指示に従って避難してください」というアナウンスがありました  

コンサートは2部制で,第1部はオペラ・アリア集,第2部はミニ・オペラ「ラ・ボエーム」ハイライトとなっています

第1部の「オペラ・アリア集」は次のようなプログラムになっています

①プッチーニ  オペラ「ジャンニ・スキッキ」より「私の愛しいお父様」

②ヴェルディ  オペラ「椿姫」より「花から花へ」

③ビゼー    オペラ「カルメン」より「闘牛士の歌」

④プッチーニ  オペラ「つばめ」より「ドレッタの歌」

⑤プッチーニ  オペラ「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」

歌うのは新国立オペラ研修所修了生によるオペラユニット「PIVOT!」のメンバーで,,飯塚茉莉子さん,今野沙知恵さん,村松恒矢さん,林よう子さん,岸浪愛学さんで,ピアノ伴奏は高田絢子(あやこ)さんです おそらく上記5曲のどこかで”地震発生”となるんだろうな,と思うものの予想が付きません   結局 地震発生の合図は⑤のトゥーランドットを歌い始めたすぐあとでした   これには,やられました   「そうだよな,地震だものな,誰も寝てはならぬ,だよな」 新国立なかなかやるじゃん

すぐに「席を立たずにそのままご着席ください.この施設は安全です」というアナウンスが入り,その後,「地震は東京湾を震源として発生し,都内で震度5だった」旨の報告があり,またしばらくして建物内点検の経過報告があり,次に「地震に伴い機械設備の一部から煙が出たため,念のため避難していただきます」というアナウンスが入り,係員の誘導で全員がテラスに出ました   こういう時こそ通路側席は一番早く避難できるのです   外は雨模様なのでどんよりと暗い空です.暗いMAXです

 

     

 

避難完了後,”参加賞”として備蓄用の飲料水をいただきました  普通のペットボトルより一回り大きいサイズなので,カバンに入らず苦労しました   ただでもらったのだから,好意に”水を差す”ようなことは言いたくないのですが・・・避難訓練じゃなくて非難訓練になっちゃうし・・・すいません,つまらないシャレ,水に流してください

 

     

 

その後20分くらいしてからコンサートが再開されました   第1部最後の曲「誰も寝てはならぬ」が中途半端だったので,この曲から始まるのかと思ったら,第2部に入ってしまいました   第2部はプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」の抜粋です   第1幕から第4幕まで代表的なアリア,二重唱が各1場面ずつ演技を伴って歌われました

拍手の中 幕が下りて,カーテンコールになりましたが,オペラの語り手の女性歌手が「まだ最後まで歌っていない曲がありましたね」と言って,最後にトゥーランドットの「誰も寝てはならぬ」を全員で歌いました   地元消防署による訓練の講評,主催者側の挨拶が終わり,すべての予定が終了したのはぴったり17時でした   さすがは国の”公益財団法人”です

 

     

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ヤツェク・カスプシク+ギドン・クレーメル+読売日響でヴァインベルク「ヴァイオリン協奏曲」,ショスタコーヴィチ「交響曲第4番」を聴く~第571回定期演奏会

2017年09月07日 08時01分05秒 | 日記

7日(木),わが家に来てから今日で1072日目を迎え,トランプ政権が5日,オバマ前政権の移民救済制度(子どもの時に親に連れられ米国に入国した不法移民の若者や労働者ら約80万人を救う制度)の段階的撤廃を発表したことについて感想を述べるモコタロです

 

     

       若者たちは自らの責任で米国に来たわけではないよね  キミ 初めて見るけど異民?

 

                                           

 

昨日,夕食に「麻婆茄子」と「生野菜サラダ」を作りました   涼しかったので「冷奴」は休止です

 

     

 

                                           

 

昨夕,池袋の東京芸術劇場コンサートホールで読売日本交響楽団の第571回定期演奏会を聴きました   プログラムは①ヴァインベルク「ヴァイオリン協奏曲ト短調」(日本初演),②ショスタコーヴィチ「交響曲第4番ハ短調」です   ①のヴァイオリン独奏=ギドン・クレーメル,指揮=ヤツェク・カスプシクです

これまで1階右サイドのバルコニー席=RBC列2番でしたが,サントリーホールのリ・オープンに伴って,次回の11月公演からサントリーホールに戻ります

 

     

 

1曲目はヴァインベルク「ヴァイオリン協奏曲ト短調」です   ヴァインベルクは1919年 ポーランド・ワルシャワ生まれのユダヤ人で,家族をホロコーストで失い,亡命先の旧ソ連でも不遇だったようですが,ショスタコーヴィチとはお互いに刺激し合う関係にあったと言われています

「ヴァイオリン協奏曲ト短調」は1959~60年に作曲された4楽章からなる作品です   レオニード・コーガンに献呈され,彼の独奏,ロジェストヴェンスキー指揮モスクワ・フィルにより初演されました   それ以降忘れ去られていましたが,近年クレーメルが蘇演してから再び脚光を浴びるようになりました

ヴァイオリンのソロを受け持つギドン・クレーメルは1947年ラトヴィアのリガ生まれ,モスクワ音楽院でダヴィッド・オイストラフに師事,70年のチャイコフスキー国際コンクールをはじめ世界的なコンクールで優勝しています   81年にロッケンハウス室内音楽祭を創設し,毎年夏に開催,97年にはバルト3国の若い音楽家の育成を目的としたクレメラータ・バルティカを設立し,世界各地でツアーを行っています   読響との共演は1986年以来31年ぶりとなります

ヤツェク・カスプシクはポーランド出身,1977年のカラヤン指揮コンクール第3位に入賞した指揮者で,2013年からワルシャワ・フィルの音楽監督を務めています   読響との共演は1987年,89年に次いで今回が3回目で28年ぶりとなります

オケはいつもの読響の編成です.コンマスは4月から読響コンマス陣に加わった萩原尚子です  2007年からドイツ・ケルンWDR放送響でコンマスを務めています    彼女のコンマスで読響を聴くのは初めてです

クレーメルがカスプシクとともに登場します.奇才クレーメルも70歳,すっかり頭が白くなりました

カスプシクのタクトで演奏が開始されます.初めて聴く曲ですが,聴き易い曲だと思いました   全楽章を聴く限り,ヴァイオリンとオケとの丁々発止のやり取りを楽しむ曲というより,ひたすら寄せては返す波のように奏でられるヴァイオリンの独奏を楽しむ曲といった感じです   とくに,第3楽章「アダージョ」は美しく優しいメロディーがクレーメルの独奏で綿々と奏でられます   CDではあれこれと聴いていますが,生でクレーメルを聴くのは今回が初めてです   弱音に魅力があるな,と思いました

繰り返されるカーテンコールに,クレーメルはヴァインベルク「24のプレリュード」から第4番と第21番を鮮やかに演奏,喝さいを浴びました 第21番はいつかどこかで聴いた覚えがあります

     

     

 

プログラム後半は,ショスタコーヴィチ「交響曲第4番ハ短調」です  これは1936年5月20日に完成した作曲者29歳の年の作品です   この年の12月にフリッツ・スティドリー指揮レニングラード・フィルによる初演が予定されていましたが,数回のリハーサルの後,作曲者自身により初演が撤回され,以来26年間 陽の目を見ることなく,やっと1961年12月30日に キリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィルにより初演されました   26年間の沈黙は,当時のソ連の文化政策「社会主義リアリズム」の影響であったことは言うまでもありません

この曲は第1楽章「アレグレット・ポコ・モデラート ー プレスト」,第2楽章「モデラート・コン・モート」,第3楽章「ラルゴ ー アレグロ」の3つの楽章から成ります   大雑把に言うと,30分,10分,30分という配分の作品です

性格的には,ショスタコーヴィチの交響曲全15曲の中で楽器編成は最大規模で,初期の作風の集大成と言われています   暴力的な強音,葬送行進曲,ワルツ,ギャロップ,レントラー等の多彩な音楽が登場し,壮大な宇宙的な概念から通俗的な人間の感情表現までを包括した曲想はマーラーの交響曲様式によく似ています   その反面,3つの楽章とも弱音で終わるというところに大きな特徴があります   「大衆が喜ぶ分かり易い音楽を書け」という社会主義リアリズムの考え方からすると,この終わり方は受け入れられないと若き作曲者は考えたのかも知れません

オケの規模が拡大し100人を超えるメンバーが舞台に上がります   管楽器だけで4列は壮観です   カスプシクのタクトで長大な第1楽章が開始されます   この楽章で一番強烈な印象を受けるのは中盤での弦楽器の超高速によるフガートです   暴力的なまでの強奏は まるでショスタコーヴィチが「社会主義リアリズムなんかぶっ飛ばせ」「ジダーノフなんかぶったおせ」と叫んでいるかのようです.後半ではコンマスの独奏によりカッコウの鳴き声が奏でられ,引き続き美しいメロディーが演奏されます   「ああ,これはマーラーの第1交響曲の冒頭のパロディだな」と思いました.この時のソロで読響の新人コンマス萩原尚子の実力が試されたわけですが,まずは合格でしょう   

比較的短い第2楽章を経て,再び長大な第3楽章に入ります   冒頭は葬送行進曲です.ここでもマーラーを思い起こします   次いでアレグロに転じるとショスタコーヴィチの本領発揮です.管が咆哮し,弦が唸り,打が炸裂します   そして,最後はチェレスタとハープにより静かに曲が閉じられます

最後の音が鳴り終わって,カスプシクのタクトが下されるまでかなりの”間”がありました   指揮者がタクトを下すと2階席を中心にブラボーがかかり,会場一杯の拍手がステージに押し寄せました

70分にも及ぶ交響曲を聴き終わって思ったのは,社会主義リアリズムに”負けた”第5交響曲よりも第4交響曲の方がよっぽど感動的な良い曲ではないか,ということです

 

     

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「 METライブビューイング アンコール2017」でロッシーニ「セヴィリャの理髪師」を観る~喜劇オペラの最高傑作を最高の歌手陣が歌う

2017年09月06日 08時15分31秒 | 日記

6日(水).わが家に来てから今日で1071日目を迎え,5日午前10時ごろ,埼玉県蕨市にあるJR東日本の変電所の点検・修繕作業中に作業員が機器の操作を誤ったため,大規模な停電が発生し,山手線など首都圏の7路線で一時電車の運転が出来なくなった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     現代は停電になるだけで何万人もの人が移動できなくなってしまう 世の中 便利?

 

                                           

 

昨日,夕食に「鶏のしぐれ煮」「生野菜とアボカドのサラダ」「冷奴」を作りました   「鶏の~」は大根おろしを10センチくらい下ろします

 

      

 

                                           

 

昨日,東銀座の東劇で「 METライブビューイング  アンコール2017」のロッシーニ「セヴィリアの理髪師」を観ました   これは2007年3月24日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演された公演のライブ録画映像です   キャストは,ロジーナ=ジョイス・ディドナート,アルマヴィーヴァ伯爵=ファン・ディエゴ・フローレス,フィガロ=ピーター・マッテイ,バルバロ=ジョン・デル・カルロ,ドン・バジリオ=ジョン・レイリ―.管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団,指揮=マウリツィオ・ベニーニ,演出=バートレット・シャーです

 

     

 

こんなに楽しいオペラがあるのだろうか,と思うくらい楽しいオペラです   これに匹敵するのはモーツアルト「フィガロの結婚」しかありません   しかもこの公演は当時の最高レヴェルの歌手が勢ぞろいで,バートレット・シャーの演出もシンプルかつオーソドックスで最高です   ステージの特徴としては,客席への張り出し舞台があり,通路の舞台がオーケストラ・ピットを囲むような形になっており,歌手は指揮者の後方に回って歌うシーンが数多くあります   最前列の客席からは歌手はすぐ目の前です.これほどの贅沢なないでしょう

まず最初は序曲です.この序曲は前述の「フィガロの結婚」の序曲に匹敵する,オペラの内容をすべて語った見事な音楽です   聴いているだけで楽しくなります.ベニーニのテンポ感は抜群です

歌手陣では,アルマヴィーヴァ伯爵を歌ったファン・ディエゴ・フローレスは当時 最高のテノールと言っても良いでしょう   喜劇,悲劇のどちらも完璧に役柄を歌える歌手ですが,とくに喜劇でのユーモアあふれる演技は他の追随を許しません

彼は2011年9月のボローニャ歌劇場来日公演の「清教徒」でアルトゥーロを歌うはずでしたが,声帯を痛め,急きょ来日中止となり,代わりにアントニーノ・シラクーザが代役と務めました   私としては何としてもフローレスを生で聴きたかっただけに本当に残念でした

ロジーナを歌ったジョイス・ディドナードは若い   何しろ10年前ですからね   それにしても容姿端麗だし,コロラトゥーラ・ソプラノも完璧だし,演技も自然だし,申し分ありません

そしてもう一人の主役と言えるのが「町の何でも屋」フィガロを歌ったマッテイです   彼の歌を聴くと,「出来ないことは何もない」と思わせる力強さがあります   彼はその後のMETライブで,ワーグナー「パルシファル」のアムフォルタス(2013年3月),チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」のオネーギン(2017年4月:ディミトリ・ホヴォロストフスキーの代役)などを歌っていますが,私にとっては,フィガロ役のマッテイが最高です

幕間のインタビューでも話題に出ましたが,バートレット・シャーによる今回の演出で一番大きな特徴は,ロジーナの後見人バルトロを前面に押し出したことです   バルトロはこのオペラの唯一の悪役ですが,「悪役がいるから喜劇が引き立つ」というのがシャーの考えです   バルトロを演じたジョン・デル・カルロは恰幅も良く,ユーモアあふれる演技は”どこか憎めない悪役”といった感じです   早口言葉による歌唱も見事にこなし聴衆の喝采を浴びます

バルトロの女使用人ベルタが第2幕で歌うアリアは,彼女の歌う唯一のアリアで,「年寄りは妻を求め,娘は夫を持ちたがる.一人はせっかち,一人はきちがい,二人とも縛っておけばいいのに.だけど,みんなを夢中にする恋とは一体なんだろう?」という内容ですが,若くはない女使用人の悲哀と恋への憧れが軽快な音楽に乗せて歌われていて,何度聴いても飽きません   歌手名は分かりませんが,素晴らしい歌唱です

この公演の演出では,男の使用人ロベルトも登場しますが,彼は1曲も歌わないのに,客席を沸かす重要な役割を担っています   いつも居眠りしていて,騒ぎが起こるとその中心にいたりします   どうやら本物の役者さんのようですが,シャーの演出ではオペラの進行にスパイスを与えています

モーツアルトのオペラと同様,アリアもデュオも六重唱も美しく楽しさに溢れていますが,とくに第1幕と第2幕のフィナーレでの六重唱は興奮の坩堝です

METライブのこの公演(2007年)を観るのは,記憶が正しければ今回が3度目ですが,何回観ても飽きません   観るたびに新たな発見があったりします   このアンコール上映は9月25日(月)18:30からが今年最後となります.上映時間は休憩・インタビュー等を含めて3時間21分です.絶対後悔しません.お薦めします

それから,今回のアンコール上映で是非観ていただきたい公演がもう一つあります   それは2009-2010シーズンで上演されたプッチーニ「トゥーランドット」です   マリア・グレギーナのトゥーランドット姫,マルチェッロ・ジョルダ―二のカラフという最高の歌手陣,アンドリス・ネルソンズの指揮,そして何よりフランコ・ゼフィレッリによる絢爛豪華な演出・舞台が最大の魅力です   東劇での上映は9月11日(月)18:30~,同19日(火)14:30~,同23日(土・祝)11:00~の3回です   上映時間は3時間4分です.私はコンサートの予定が入っていて観に行けませんが,観て絶対後悔しません.お薦めします

 

     

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「戦後日本と雅楽~みやびな武満,あらぶる黛」公演を聴く~サントリー サマーフェスティバル「片山杜秀がひらく『日本再発見』」

2017年09月05日 08時06分38秒 | 日記

5日(火).昨日は月曜日から涼しく,また9月に入ったこともあって,思い切って衣替えをしました   と言っても,半袖シャツを長袖に替えただけで,まだジャケットは早いのではないかと思います

ということで,わが家に来てから今日で1070日目を迎え,トランプ米政権が3日,北朝鮮の6回目の核実験を受けて圧力をさらに強める姿勢を鮮明にした というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      中国が動かないなら 軍事力しか解決策はないような気がするけど 出来ないよね

 

                                          

 

昨日は,久しぶりに「カレーライス」を作りました   あとはいつもの「生野菜とサーモンのサラダ」です

 

     

 

                                           

 

昨夕,サントリーホール「ブルーローズ」で「片山杜秀がひらく日本再発見 戦後日本と雅楽~みやびな武満,あらぶる黛」公演を聴きました   プログラムは①武満徹「秋庭歌一具」,②黛敏郎「昭和天平楽」です   演奏は伶楽舎,②の指揮は伊佐治 直です

     

     

 

全自由席なので良い席を取るために早め家を出たのに,何をとち狂ったか上野の東京文化会館に行ってしまい,入口でもらった1Kgは超えるチラシの束を抱えて 慌てて銀座線で溜池山王に向かいました   幸い開演10分前に会場に着きましたが,最近こういうヘマが時々あるので困ります   多分 脳細胞がマッハ並みのスピードで減少しているのだと思います   

会場の「ブルーローズ」は床の寄木細工が張り替えられています   結局,後ろから2列目の右端の席を押さえました

さて,コンサートですが,1曲目の武満徹「秋庭歌一具」は1979年に初演された雅楽のための作品で,①参音聲(まいりおんじょう),②吹渡(ふきわたし),③塩梅(えんばい),④秋庭歌(しゅうていが),⑤吹渡二段(ふきわたしにだん),⑥退出音聲(まかでおんじょう)の6部から成ります

武満徹(1930-96)は1973年に国立劇場の委嘱で「秋庭歌一具」の第4曲に当たる,雅楽のための「秋庭歌」を作曲しましたが,79年に再び国立劇場からの委嘱を受け,新たに5曲を作曲し「秋庭歌一具」を完成させたのでした   武満は73年10月の国立劇場での雅楽公演のプログラム・ノートに,この作品について次のようなことを書いています

「たぶん,昔日は現在よりも自由であったであろうと想像される楽器配置について,風または木魂(こだま)と呼ばれる管楽を,一管どおりの管弦とは別に配置すること.形式は自由.秋から冬へ向かう季節の歌であり,私たちの遠い祖先が先進文明に初めて触れた愕きを,私自身のものとして失わないようにすること.新雅楽を創るというような気負いを捨てて,ただ,音の中に身を置きそれを聴きだすことにつとめる.以上が秋庭歌についての私の心づもりである

雅楽の合奏研究を目的に1985年に発足した雅楽演奏グループ「伶学舎(れいがくしゃ)」の面々が4つのグループに分かれます   ①秋庭(グループA)の9人はセンターに,②木魂1(グループA’)はセンター後方に4人,左右に各2人が配置され,③木魂2(グループB)の6人は左サイドに,④木魂3(グループC)の6人は右サイドにスタンバイします   グループAの秋庭だけが床に座り,他のグループは椅子に座ります

演奏者は”雅楽の制服”である平安時代風の色とりどりの衣装で,烏帽子を被っています   彼らが入場する時,われわれは拍手をしてもよいのかどうかわからず,結局誰も拍手をしませんでしたが,良かったのでしょうか

この作品の演奏には指揮者がいません   演奏に入りますが,いったい誰がコンサートマスターの役割を果たしているのかまったく分かりません   あるいは全員が阿吽の呼吸で演奏しているのかも知れません  

そもそも私は,箏,琵琶,笙,太鼓以外の楽器は 名前もろくに知らないので 演奏をどう表現すべきか困ります

6つの楽曲の中では,最初に作曲された第4曲「秋庭歌」が一番充実していたように思います   全曲を通して聴いた印象は,間(ま)が多いということです   楽譜がどう書かれているか知りません(五線譜?)が,休符だらけではないかと想像します   もう一つは,武満は雅楽の歴史を踏まえて,楽器の特性を最大限に生かした曲を書いたのではないか,ということです

大きな拍手の中,演奏者が退席しましたが,カーテンコールはありませんでした.これでよろしかったでしょうか

 

     

 

休憩時間の間に,ステージに敷かれていたシートが剥がされ,椅子が並べられます

2曲目の黛敏郎「昭和天平楽」は1970年の作品です   この曲は①序(じょ),②破(は),③急(きゅう)の3部から成ります.演奏は伶学舎ですが,この曲は伊左治 直が指揮をとります

伶学舎の編成は,センター手前に琵琶と箏,後方に横笛と笙,左サイドに箏,右サイドに太鼓といった並びで総勢28人です   黛敏郎(1929-97)は1970年10月の初演時のプログラム・ノートに次のように書いています

「私は,現在ふつうの雅楽では使用されなくなった楽器で,昔は使われていたに違いないと思われる楽器を,出来るだけ多く使うことにした   通常の演奏形態の約2倍となる.曲の構成は,大きく3部に分かれ,全体で序・破・急を構成するように構想した   第1部は,拡大された「音取」の様式を模した序奏部と,唐楽風な部分に分かれ,終結部分には「残楽」が用いられている.第2部は,笛を中心とした「乱声」に続いて,笙の「音取」から始まる林邑楽の趣を持つ.第3部は,高麗楽風の終曲である

第1部で一番驚いたのは,センターにスタンバイした箏をコントラバス用の弓で弾いていたことです  現在であれば普通かも知れませんが,当時は斬新な奏法だったと思います   黛ならではの試みでしょう

曲の全体を聴いた印象は,武満の曲とは対極にある作品で,3楽章形式ということもあり,休符の少ない交響曲のような曲想で,比較的わかり易い曲だと思いました   第2部の冒頭は縦笛による耳をつんざくような高音が鳴り響き,第3部では「まるでフリージャズじゃん」と思うほどに混沌とした音楽が顔を見せ,黛が雅楽の世界に新風を吹き込もうとする意欲を感じました

 

     

 

この企画のプロデューサーである片山杜秀氏がプログラム冊子の「イントロダクション」に次のように書いています

「日本の作曲の本筋は近代ヨーロッパのこだわる論理性や有機性を超克してゆくところにあるという視点.そこから眺めると『近代の超克』とは,伊福部昭を家元とする『ストラヴィンスキー・繰り返し』と,早坂文雄を家元とする『ドビュッシー・朦朧流』の二筋道で,前者から黛敏郎,後者から武満徹がスターとして現れたという見立てもあり得るのではないでしょうか」「この雅楽を土俵にして黛と武満が『最終決戦』をし,同時代的文脈では武満がより高い評価を得たことになる

と書いていますが,事実はそうだとしても,黛はもっと評価されても良いと思います

片山氏がこのコンサートのキャッチとして「みやびな武満,あらぶる黛」を掲げたのは,雅楽に対する二人の作曲家のアプローチをひと言で表現していて,さすがだと思います     

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