「人生地理学」からの出発-牧口常三郎先生 生誕150周年記念|斎藤毅
牧口常三郎 (著)
自分の子どもの命と健康を支えてくれた乳製品や綿着を見る時、スイスの牧童や、炎天下で汗を流して働くインドの人々の存在が目に浮かぶ。
その眼差しは何より、<世界の見知らぬ人々の労苦>に向けられていた。
そうした人々に対する感謝の思いを、世界認識の基軸に据えていたのである。
目に見えない結びつきを通して日常生活に恩恵をもたらしてくれる人々をはじめ、同じ地球の上で暮らしている誰もが、共に平和で安心して生きられる時代を築かねばならないと考えた。
そして、その一心で「人生地理学」において、自他共の幸福を目指す「人道的競争」のビジョンを提唱したのではないだろうか。
その思想の基盤には、世界は「共同生活」の舞台にほかならないとの認識があった。
出会ったこともない世界の人々への尽きぬ感謝の思いが示すように、「共同生活」という言葉を世界のあるべき姿としただけではなく、見落とされがちな世界の現実(実相)として位置付けた。
世界は本来、多くの人々の営みが重なり合い、影響を与え合う中で成り立っている。
それにもかかわらず、その実相が見失われる形で競争が続けられることになれば、深刻な脅威や社会で生じた歪の中で苦しんでいる人々の存在が目に映らなくなってしまう。
だからこそ、「共同生活」を意識的に行うことが重要となる。
「自己と共に他の生活をも保護し、増進する」生き方を社会の基調にする必要がある。
その源泉には、仏教の「万人尊厳の思想」がある。
これからの人生で
学ぶべき基礎基本が書かれています。人生をより深くより広く生きたい方、おすすめの一冊です。
人生哲理を学びたい方、必須アイテムです。
牧口常三郎氏の地理学書。後の地理学研究に多大な影響を与えている。
本書は、1903年(明治36年)に、当時32歳だった牧口常三郎氏が、新しい地理学の書として発刊しました。
従来、川の長さや山の高さを測って記録することに重点を置いていた地理学を、著者は、人間生活とその周囲に存在する地理的条件とを観察して、それらの間に存在する関係性を発見しようと考えました。
海辺に住む人たちと山の中に住む人たちでは、気質が違うことは我々でも気がつきますが、環境が人間に及ぼす影響を、明治の日本で体系的に整理した発想力と行動力は、驚嘆に値すると思います。
本書では、太陽や月が与える影響、島・半島・山岳・平原・高原などが与える影響や、それらによって興る文明といった事柄について論じられています。
地理学を、太陽の放出する熱量やその変動の影響から生物の繁殖を考察したり、
山脈による地域の分断(中国地方の山陰・山陽のような)は、統合の障害となり、気候の分かれ目となって、住民の気質にも大きな影響を与えることなど、
明治期の中頃の日本で、30代の青年がこの発想をもったことにたいへん驚きました。
人生地理学について
地理学者にとっては研究の対象に値するすばらしい著書です。
また違った視点からでのアプローチもあり研究方法に新たな視座を与えると思っています。
柳田国男氏や新渡戸稲造氏ともご交友があったようです。
凄い
明治の文体でなかったら、もっと読む人が多いでしょう。内容は凄い。世界に誇れる本。
「人生地理学」からの出発-牧口常三郎先生 生誕150周年記念|斎藤毅
〇…『「人生地理学」からの出発』は、創価学会初代会長の牧口常三郎先生の生誕150周年記念出版です。
この本は、牧口先生が32歳の時、地理教育者として著した『人生地理学』に光を当てたものです。
「人道的競争の時代の到来」を予見するなど、牧口先生の先見性と世界性を分かりやすく解説するとともに、コロナ禍を生きる今だからこそ、「私たちが今いる世界をどう見るのか」を考え、豊かな世界像を自己の中に築くことは、創造的な人生観を形成することだ大事だと訴えています。
著者は、斎藤毅(たけし)・東京学芸大学名誉教授(日本地理教育学会元会長)です。
〇…1903年(明治36年)に発刊された牧口先生の大著『人生地理学』は、志賀重昂や新渡戸稲造、柳田國男など著名な地理学者から絶賛され、第11版まで版を重ねた、当時のベストセラーでした。
1世紀以上を経た今も、「自己の中にもう一つの新たな世界像を築く」ことを訴えた牧口先生の哲学が色あせることはありません。牧口先生の先見性と世界性を現代に蘇らせた、コロナ禍を生きる今だからこそ学ぶべき内容です。
〇…聖教新聞に昨年(2020年)4月から11月に連載された寄稿「人生地理学からの出発」をまとめ、加筆するとともに新たに2章を書き下ろして書籍化しました。また、「切手で築こう 現代の世界像」32回と、牧口先生の最新研究に基づく略年譜が掲載されています
更に、斎藤先生の門下で、奈良教育大学名誉教授の岩本廣美さんが、書籍の意義と恩師・斎藤先生との思い出を寄稿しています。
著:斎藤毅
地域性の把握の大切さが理解できた。
人々の生活の違いが地域に影響を及ぼしている。地理学の重要性が理解できた。
地理学は「自分がどこにいるのか」「どこへいくのか」という、より良い人生を歩むための礎となるもの。
現在では「社会科」の中に「地理」としてだけ取り込まれ、本来の「地理学」の意味を失ってしまっている。
本書では、最近の新型コロナという出来事なども含め「人生地理学」を解説、地理学とは単に地理の知識を得るだけのものではなく、人の生き方に大きな影響を与えるもの。
「人生地理学」に関する学術的、専門的な難しい研究書はいくつか発行されているようであるが、本書は一般人向けで、気楽に読めるよう平易な言葉で、現代的意義が解説されている。
切手による小国や地域、国際機関、南極などの紹介も面白い。
切手好きの方には良いかも
書籍、kindle両方を購入。牧口先生の人生地理学の世界観を現代に即して分かりやすく展開している点は評価できます。また、牧口先生の先見性も改めて再認識させられました。後半以降はすべて世界の切手のお話。賛否分かれると思いますが、切手収集が好きな人には楽しく読めるのではないでしょうか。私はすべて読み飛ばしました。kindle版だと切手がカラーで見られるので、切手に興味のある方はkindle版をお勧めします。
眼からウロコ
旧い話のようだが、現在にこそ必要か?
難しい
人生地理学も難しい漢字が多く解説書かな?と思い購入しましたが難しかった
難しい内容を簡潔に表現してある
「人生地理学」は、当初は題名を「社会地理学」としたかったが、社会という言葉が当時は違う意味で使われることが多く、誤解されることをおそれ、「人生地理学」としたということです。
牧口先生の「人生地理学」は、読み始めてみたものの、難しくて途中で諦めていました。
この、斎藤毅さんの解説書が出来て、ようやく内容が理解できました。
ブラタモリの番組や、小学生の社会見学が「地理学」であるとの内容も面白かったです。
社会・地理に限らず、広い視点から述べられています。
斎藤さんの趣味である切手収集の中から、何枚かが紹介されているのも、興味があります。
牧口先生の、学者としての、また違った素晴らしさがよくわかる書籍です。
分かりやすい
現在では、どのように解釈していけば良いか書いてあるので、分かりやすい