男の狡さである、昭は彩音に対しても、自宅を含め勤務先などの自分の連絡先を明らかにしていなかった。
だが、アンナとの関係は、昭の思惑どうりではなかったのである。
アンナとの出会いは、東京・亀戸駅近くのスナックだった。
その店は、昭が勤務する企業の先輩の森田優斗の兄が経営していた。
昭はアンナとは、できれば1回きりの男女の成り行き、つまり浮気ですませればと、男の身勝手さで打算していた。
だが、アンナは昭の思惑を逃がさなかった。
アンナから、昭の勤務先に電話がかかってきたのだ。
「島田さん、アンナだよ。明日、競馬へ行こう。森田さんも一緒だよ。いいね」昭は勤務先の隣の席に座る先輩の森田に視線を向けながら、唖然とした。
アンナと出会って、1週間が巡ってきたのである。
「森田さん、あの彼女からの誘いです・・・」
「ああ、あの子にせがまれてね、島田君、明日は中山競馬に付き合ってよ。いいだろう?」森田は意味ありげな笑顔となる。
昭は、改めれ落とし穴を意識するのだ。