:世界から存在しないことにされた人たちを掬う
村上靖彦 (著)
誰も取りこぼされない社会へ
制度と制度の「すき間」に落ち込んで這い上がれない人たち、 当事者と支援者の実態に現象学的方法から迫る。
何人も取りこぼされないように制度化されたはずの我が国の公共の福祉。しかし制度と制度の「すき間」に陥り、この社会から存在しないことにされてしまったり、法権利に守られない人たちがいる。本書では、すき間に陥った当事者と支援者の証言の交点、そして社会的理論からその全体像を読み解く。そのうえですき間を生まないオルタナティブな社会の実現へ向けて何が必要なのかを議論する。
【目次】
序 章 すき間に追いやられた人への眼差し
第Ⅰ部 すき間を生む世界──排除の構造について
第1章 国家水準の排除
1 国家・社会・家
2 法にかかわる排除
第2章 社会水準の排除
1 恐怖にもとづく排除
2 コロナ禍で働いた排除の力
3 優生思想と自己責任論
第3章 家の水準の排除
1 家と政治
2 虐待と住居の内破
第4章 排除の可視化と不可視化、足元に拡がる逆境
1 可視化する排除と感情
2 ひきこもりや虐待──見えなくされる排除
3 名前がないことで生まれるすき間
4 横軸のすき間と縦軸の逆境
第Ⅱ部 すき間と出会う──かすかなSOSへのアンテナ
第5章 すき間と出会うための論理
1 すき間を探すアウトリーチと居場所
2 アウトリーチでキャッチされるSOS
第6章 すき間と出会うための歩行
1 俯瞰と順路
2 歩行と多元的世界
3 歩行と出会いから生まれる言葉について
第7章 かすかなSOSへのアンテナとその地平
1 社会契約論からヌスバウムのケイパビリティへ
2 プラグマティズムとしてのすき間の哲学
3 ケイパビリティとかすかなSOSへのアンテナ
第Ⅲ部 すき間からの声──当事者の声と空間
第8章 当事者の声と空間の闘争
1 権力勾配を回避することの難しさ
2 横田弘と自立生活運動
第9章 居場所の多島海
1 居場所
2 言葉と居場所
第Ⅳ部 すき間を生まない世界──社会的開放性について
第10章 自分とは異なる人と出会う社会
1 社会的包摂から社会的開放性へ
2 ハイデガーの世界概念を批判する
3 開かれた社会と顔──社会的開放性の基層
4 レヴィナスの顔
第11章 ユニバーサルなケア
1 ユニバーサルな居場所
2 社会的共通資本とユニバーサルなサービス
第12章 社会的開放性と傷つけやすさ
1 マジョリティ特権と傷つけやすさ
2 ディナーテーブル症候群──気づかずに起きる排除
3 SOSへのアンテナとメタファーとしての通訳
終 章 一人ひとり、そして誰もが
方法論について 現象学とすき間の哲学
あとがき
人名・事項索引
制度と制度の「すき間」に落ち込んで這い上がれない人たち、 当事者と支援者の実態に現象学的方法から迫る。
何人も取りこぼされないように制度化されたはずの我が国の公共の福祉。しかし制度と制度の「すき間」に陥り、この社会から存在しないことにされてしまったり、法権利に守られない人たちがいる。本書では、すき間に陥った当事者と支援者の証言の交点、そして社会的理論からその全体像を読み解く。そのうえですき間を生まないオルタナティブな社会の実現へ向けて何が必要なのかを議論する。
【目次】
序 章 すき間に追いやられた人への眼差し
第Ⅰ部 すき間を生む世界──排除の構造について
第1章 国家水準の排除
1 国家・社会・家
2 法にかかわる排除
第2章 社会水準の排除
1 恐怖にもとづく排除
2 コロナ禍で働いた排除の力
3 優生思想と自己責任論
第3章 家の水準の排除
1 家と政治
2 虐待と住居の内破
第4章 排除の可視化と不可視化、足元に拡がる逆境
1 可視化する排除と感情
2 ひきこもりや虐待──見えなくされる排除
3 名前がないことで生まれるすき間
4 横軸のすき間と縦軸の逆境
第Ⅱ部 すき間と出会う──かすかなSOSへのアンテナ
第5章 すき間と出会うための論理
1 すき間を探すアウトリーチと居場所
2 アウトリーチでキャッチされるSOS
第6章 すき間と出会うための歩行
1 俯瞰と順路
2 歩行と多元的世界
3 歩行と出会いから生まれる言葉について
第7章 かすかなSOSへのアンテナとその地平
1 社会契約論からヌスバウムのケイパビリティへ
2 プラグマティズムとしてのすき間の哲学
3 ケイパビリティとかすかなSOSへのアンテナ
第Ⅲ部 すき間からの声──当事者の声と空間
第8章 当事者の声と空間の闘争
1 権力勾配を回避することの難しさ
2 横田弘と自立生活運動
第9章 居場所の多島海
1 居場所
2 言葉と居場所
第Ⅳ部 すき間を生まない世界──社会的開放性について
第10章 自分とは異なる人と出会う社会
1 社会的包摂から社会的開放性へ
2 ハイデガーの世界概念を批判する
3 開かれた社会と顔──社会的開放性の基層
4 レヴィナスの顔
第11章 ユニバーサルなケア
1 ユニバーサルな居場所
2 社会的共通資本とユニバーサルなサービス
第12章 社会的開放性と傷つけやすさ
1 マジョリティ特権と傷つけやすさ
2 ディナーテーブル症候群──気づかずに起きる排除
3 SOSへのアンテナとメタファーとしての通訳
終 章 一人ひとり、そして誰もが
方法論について 現象学とすき間の哲学
あとがき
人名・事項索引
出版社より
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入国管理事務所における死亡事件のように国家がもたらす排除、不特定多数の人が持つ差別感情のような社会の水準の排除、家族のなかで生じる虐待というように、国家・社会・家という三つの層から排除を考える。そのうえで差別において典型的な可視化する排除と、福祉制度のすき間で苦しむような見えなくなっていく排除、さらには名前を持たないことによる排除を考える。アガンベンやレヴィナスを導き手に。 |
すき間は俯瞰的な眼差しからは見えなくなる人の居場所であり、歩行によってしか出会うことができない。「かすかなSOSへのアンテナ」という概念を提案しつつ、レベッカ・ソルニット、ティム・インゴルド、宮地尚子、ベンヤミンなどを参考にしながら歩行についての哲学的な考察を試みる。 |
脳性まひ者の自立生活運動や居場所の例から、すき間へと追いやられていた当事者が声を出し、マジョリティの占める世界のなかで場を持つことについて議論していく。 |
ベルクソンの開かれた社会やヌスバウムのケイパビリティ概念を手がかりにしながら、ユニバーサルな居場所、ユニバーサルなサービス、ユニバーサルなケアの可能性を考える。また支援者が持つパターナリズムやマジョリティ特権についての概念に触れつつ、当事者から声が上がり、空間を獲得していく当事者主権の運動について考えていく。 |
商品の説明
著者について
《著者紹介》*本情報は刊行時のものです
村上靖彦(むらかみ・やすひこ)
1970年 生まれ。
現 在 大阪大学大学院人間科学研究科教授,感染症総合教育研究拠点CiDER兼任教員。
主 著 『在宅無限大──訪問看護師がみた生と死』医学書院,2018年。
『子どもたちがつくる町──大阪・西成の子育て支援』世界思想社,2021年。
『ケアとは何か──看護・福祉で大事なこと』中公新書,2021年。
『「ヤングケアラー」とは誰か──家族を“気づかう”子どもたちの孤立』朝日新聞出版,2022年。
『客観性の落とし穴』ちくまプリマー新書,2023年。
『傷の哲学,レヴィナス』河出書房新社,2023年。
『アイヌがまなざす──痛みの声を聴くとき』(石原真衣との共著)岩波書店,2024年,ほか。
村上靖彦(むらかみ・やすひこ)
1970年 生まれ。
現 在 大阪大学大学院人間科学研究科教授,感染症総合教育研究拠点CiDER兼任教員。
主 著 『在宅無限大──訪問看護師がみた生と死』医学書院,2018年。
『子どもたちがつくる町──大阪・西成の子育て支援』世界思想社,2021年。
『ケアとは何か──看護・福祉で大事なこと』中公新書,2021年。
『「ヤングケアラー」とは誰か──家族を“気づかう”子どもたちの孤立』朝日新聞出版,2022年。
『客観性の落とし穴』ちくまプリマー新書,2023年。
『傷の哲学,レヴィナス』河出書房新社,2023年。
『アイヌがまなざす──痛みの声を聴くとき』(石原真衣との共著)岩波書店,2024年,ほか。
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