【解説】北朝鮮部隊の派兵 ウクライナをめぐる戦争は
NATO=北大西洋条約機構のルッテ事務総長は28日、北朝鮮の部隊が、ウクライナ軍が越境攻撃を行っているロシア西部のクルスク州に配置されたことを確認したと述べました。
一方、ロシアのラブロフ外相は、欧米側は、北朝鮮の部隊のロシアへの派遣を非難することで、ウクライナに軍関係者を送るなどの軍事支援を正当化しようとしているとけん制しました。
別府正一郎キャスターの解説です。
(「キャッチ!世界のトップニュース」で2024年10月29日に放送した内容です)
・戦争の国際化
北朝鮮の部隊の参戦によって、ウクライナをめぐる戦争は、急速に新たなフェーズになっています。戦闘では、確かに、ロシア、ウクライナ双方に、志願兵などの形で少数の外国人が加わっているのは知られていますが、外国の部隊が派兵という形で、直接、大規模に参戦するのは初めてだと見られているからです。
これにより、ヨーロッパにいわば留まっていた戦争は、アジアの国も当事者にしながら国際化しています。
・ウクライナ侵攻をめぐる国際関係は
2022年2月にロシアがウクライナ侵攻に乗り出すと、ウクライナの領土を奪おうとするロシア軍と、国土防衛のために抵抗するウクライナ軍の間で戦闘になりました。ウクライナに対しては、アメリカをはじめNATO諸国が軍事支援に乗り出しました。
韓国は、ウクライナに対して、直接の兵器供与をしていませんが、欧米には輸出しています。欧米がウクライナに供与した兵器の、いわば、穴埋めをする形で、ウクライナには間接的に支援を行ってきたことになります。日本は、防弾チョッキなど、殺傷能力のない自衛隊の装備品を提供してきました。
こうした各国の支援の背景には、ロシアの行動は、「武力で他の国の領土を奪ってはならない」という、国際法の根幹に関わる決まり事への重大な違反だということがあります。こうした中で、ロシアが頼っているのが、中国、イラン、そして北朝鮮です。
プーチン大統領は、中国の習近平国家主席と繰り返し首脳会談を行い、2024年7月には「ロシアと中国の協力関係は、歴史上、最も良好だ」とまで述べています。
実際、中国は6月に開かれた、ウクライナの和平案について話し合う「平和サミット」も欠席しています。イランは、ロシアに対して、無人機やミサイルを供与しているとされています。北朝鮮は、ロシアに対して、弾薬を供与しているとされています。こうして改めてみますと、双方ともさまざまな形での支援を受けながらであれ、戦闘を行っているのは、あくまでウクライナ軍とロシア軍です。
ところが、 ここに来て、北朝鮮軍が、直接戦闘に加わることになれば、これまでとは大きく構図が変わることになります。ウクライナ軍が北朝鮮の兵士と交戦したり、欧米から提供された兵器が北朝鮮の兵士に向かったりすることもありうる状況です。
・中国の動き
こうした中で注目されるのは北朝鮮の後ろ盾の中国の動きです。フィナンシャル・タイムズは、対照的な専門家の見方を伝えています。
ひとつは、中国が、ロシアと北朝鮮の関係が深まっていることを全く歓迎していないだろうという見方です。両国の関係強化を受けて、東アジアでの日米韓の結束がより強まり、朝鮮半島のバランスが変わることを嫌がっていることがあるのではないかと指摘しています。
一方で、中国は、北朝鮮が弾薬を提供していることで、みずから提供するプレッシャーが小さくなっているとして歓迎しているのではないかという見方も伝えています。
北朝鮮の参戦により、ウクライナ情勢の波紋はアジアにもいっそう広がっています。
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