みつとみ俊郎のダイアリー

音楽家みつとみ俊郎の日記です。伊豆高原の自宅で、脳出血で半身麻痺の妻の介護をしながら暮らしています。

仕事であれ遊びであれ

2006-04-09 09:59:04 | Weblog
いつも旅行は一人で行くことが圧倒的に多い。一人旅ならでは貴重な体験ができるからだ。
今回のメキシコも、仕事には違いなかったし、滞在先では他の人たちと常に一緒に行動していたけれど(仕事なのだからしょうがない)、行き帰りはまったく一人。だからこその体験があり、とても面白かった。

行きの成田からサンフランシスコへの機内は超満員(この時期なのにナゼにこれだけの旅行者がいるのだろう?)。通路側に座りたいと何度も何度もしつこく掛かりの人に言うが聞き入れられず窓側の席をしぶしぶ受け入れる。そして、私の横に座ったのはタイ人老夫婦(なぜタイ人かとわかったかというと彼らの持っていたパスポートから)。
この二人、英語がまったくしゃべれないのにもかかわらず最初から最後までずっと私に純真な笑顔で話しかけてくる(本当に人のよさそうな人たちだ)。タイ語ではないのはわかっているのだけど、意味はまったくわからず対応に苦労する。ただ、かろうじてわかったことばが、first timeという英語。
ウム、何が初めてというのだろう?飛行機に乗ること?アメリカに行くこと?それとも、....?
いろいろ考えるがよくわからない。しかし、その後、彼らが私の行動のすべてに注目していることで、その意味も何となく理解できた。
私がヘッドホンを取り出して映画を見ようとすれば、すかさず彼らも私と同じ行動をとる。食事が運ばれてくれば、彼らも私と同じように食事に口を運ぶ(何かこんな光景を映画のワンシーンで見たことがあるような?)。
自分の行動がここまで逐一マネをされるのはとても不思議な体験だ。でも、彼らの人なつっこい純真な笑顔を見ると、何も言えなくなる。ことばではなく、身ぶり手ぶりで意志を伝えることの難しさと大切さをイヤというほど知らされ、サンフランシスコで入国手続きをする間に見失ってしまった彼らの旅が無事であることを祈るばかりだった。

帰りは帰りで、ナゼに飛行場でここまで走らなければならないのか?と思うほどの体験。
東京とメキシコの間に直行便はない。だから、乗り継ぎをいれると必然的にかなりの飛行時間になる。片道16時間はほぼ一日仕事だ。なので、帰りの便は、メキシコシティを早朝出発の便を使うしかない。前日のパーティの客が朝2時頃帰り、ようやくシャワーを浴びて、4時頃タクシーに来てもらい飛行場まで到着する。やれやれとチェックインをすませた私は、指定のゲートで入場の時間を待つがいつまでたっても一向に入場アナウンスがない。人もそれほど集まってこないので、これはひょっとしてゲートが変わったのか?と掲示モニターを見るがン何もそれらしき情報はない。
変だな?とは思いつつもそこで待つが、だんだんと出発予定時刻が迫ってくると、ノンビリ屋の私もさすがに「オイオイこれは変だぞ」と思い係りの人を探す。しかし、それらしき人が見当たらず、どうしようかと思案を始めた途端、館内アナウンスの声が突如私の名前を呼び始める。その瞬間私は、「あ、ゲートが変わって私だけが取り残されてしまったのだナ」と気づく。その時、もうすでに出発予定時刻の10分前。しかも、アナウンスされたゲートナンバーは、自分が待っていたゲートからはかなり離れた距離。あまり早くにチェックインしたせいで、その後搭乗ゲートが変わったしまったのがわからなかったのだ。
それにしても、その変更をモニターにきちんと書いておけよナと心の中でぼやくがそんなボヤキが聞こえるはずもなく、ここはひたすらそのゲートまで走るしかない。メキシコシティの飛行場もかなり広い。ゲート番号が20近く離れている場所まで歩いていくには軽く10分以上はかかる。通常、搭乗券を発行された人が全員乗込むまでは飛行機は飛び立てないことになっているのだが、私一人のために出発が遅れてしまう迷惑を考えるとここはひたすら走るしかない。そう思った私は、走ること、走ること(マジに心臓が飛び出るほど走ったので、ちょっとヤバイと思ったけど)。荷物を持ってのランニングだからそれほどスピードはでない。「なんでこんな思いしなきゃならないんだ」とぶつぶつツブやきながら何とかゲートに到着すると、今度は、入り口で念入りなボディチェックが始まる。
「遅れてるんだから、そこまできちんとチェックしなくてもいいっだろう」と思いつつも、担当のオネエさん、私の身体からピーという音が発せられた途端ここぞとばかりに端の寄れと言い出した。原因は私のベルトにあるのは間違いないのだが(彼女もそれをわかっているはずなのに)、どこまでもマニュアル通りの行動をとる。ヤレヤレ...。
メキシコに滞在した時間は実質3日あるかないかの旅行のうちまる2日は飛行機の中。こんな駆け足旅行のオチが本当に「駆け足」になってしまったなんて、シャレにもならないが、なんだかんだでようやく無事に帰りつくことができた。まあ、それだけでもヨシとしようか(笑)。