「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2007・05・11

2007-05-11 07:30:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「いったい明治はいつまで明治だったのだろうと私は考えることがある。明治が分れば江戸は察することができる。ところが、降る雪や明治は遠くなりにけりという中村草田男の句は昭和六年の作だそうである。してみれば昭和六年でも、すでに明治は遠くなって茫としてとらえられなかったのである。
 明治は大正十二年の大震災までだと私は思っている。それまで残っていた明治はこのとき焼けうせたのである。かすかに残っていた江戸も焼けうせたのである。」

   (山本夏彦著「『戦前』という時代」文藝春秋社刊)
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