「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2009・07・15

2009-07-15 07:00:00 | Weblog



今日の「お気に入り」は、加島祥造さん(1923- )の「『タオ――老子』第二章」から。

  名のない神秘の領域から、
  天と地が分かれた。
  この天と地の世界では、
  ものに名がつくし、観念にも名がつく。

  ところで、美しいものと醜いものがあるんじゃない
  美しいと名のつくものは、汚いと名のつくもののおかげで
  美しいと呼ばれるんだ。

  おたがいに片っぽだけじゃありえない。
  善だって、そこに悪があるからはじめて、
  善として存在するんでね。
  悪のおかげで、善があるってわけだ。

  同じように、
  いま存在しているものも、
  存在しないものが裏にあるから、存在しうるんだ。
  ちょうど、難しいことと易しいことが、
  片っぽだけじゃあり得ないのと同じさ。
  「長い」といったって、短いものと比べるから長いのさ。
  「高い」といったって、低いものがあるから高いんだ。
  歌だって、声とメロディーがあるから、歌なんだ。
  「前」という観念だって、「後」があるからのことなんだ。

  だから、本当に賢い人というのは、あまり手軽に判断しない。
  こうと決めたって、ことは千変万化して、
  絶え間なく動いてゆくからだ
  このタオの本当のリアリティを受け入れるとき、
  君は何かを造っても、自分の腕を誇らなくなる。
  よく働いて成功しても、その成果を自分のものにしなくなる。
  仕事をし終わったら、忘れてしまう。
  すると、かえって、
  その人のしたことは、ほかの人々に深く沁み込むのだ。



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