
今日の「お気に入り」。
” At home I serve the kind of food I know the story behind.”
( Michael Pollan )

もうひとつ、石垣りんさん(1920-2004)の「空をかついで」から「儀式」。
「 母親は
白い割烹着(かっぽうぎ)の紐(ひも)をうしろで結び
板敷の台所におりて
流しの前に娘を連れてゆくがいい。
洗い桶(おけ)に
木の香のする新しいまないたを渡し
鰹(かつお)でも
鯛(たい)でも
鰈(かれい)でも
よい。
丸ごと一匹の姿をのせ
よく研(と)いだ庖丁をしっかり握りしめて
力を手もとに集め
頭をブスリと落とすことから
教えなければならない。
その骨の手応えを
血のぬめりを
成長した女に伝えるのが母の役目だ。
パッケージされた肉の片々(へんぺん)を材料と呼び
料理は愛情です、
などとやさしく諭(さと)すまえに。
長い間
私たちがどうやって生きてきたか。
どうやってこれから生きてゆくか。 」
