「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

Long Good-bye 2019・09・01

2019-09-01 05:37:00 | Weblog




   今日の「お気に入り」。


   「 親は子のかがみである。子は初めは親を、次いで友を、やがて世間を模倣する。人は

    まねする動物で、創意工夫する動物ではない。お忘れだろうがむかしは『親が嘉兵衛

    なら子も嘉兵衛』といった。」


   「 先生が子供たちに意見を言わせ、それをディスカッションと称して聞くふりをするの

    は悪い冗談である。意見というものは、ひと通りの経験と常識と才能の上に生じるもの

    で、それらがほとんどない子供には生じない。」


   「 教えるということは才能である。または技術である。その才能のないものが教えると、

    教わるものは迷惑する。」


   「 非は常に他人にあって、みじんも自分になければ、経験が経験にならない。」


   「 帝王の堕落は一人の堕落にすぎない。貴族の腐敗は何千何百人の腐敗にすぎない。上流

    が堕落すれば、末流から身をおこした志士仁人(じんじん)が上流を倒せばいい。革命して

    旧弊を一掃すればいい。そして今度はその末流が上流に居すわって腐敗する番である。そ

    したら再び有志が倒せばいい。こうして、この世は健康をとりもどした。ところが今度堕

    落するのは、ひと握りの上流ではない。『大衆』である。」


   「 海がそこにあり、山がそこにあっても、だれひとり泳ぐものも、登るものもない時代が

    近く来る。何をばかなと信じないのは想像力がないからで、以前そうであったように、そ

    のしんかんたる時代は来る。」


        ( 山本夏彦著 「毒言独語」 中公文庫 所収 )







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