「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

Long Good-bye 2019・09・19

2019-09-19 03:33:00 | Weblog





   今日の「お気に入り」。


     「 筒井筒 井筒にかけしまろが丈(たけ)

          生(お)ひにけらしな 妹(いも)見ざる間に 」

     「 比(くら)べ来(こ)し 振分け髪も肩過ぎぬ

         君ならずして誰(たれ)か上(あ)ぐべき 」


     「 初めの業平から紀有常の娘への歌は、小さいころ、この井筒と比べた私の背丈

      も、いつのまにか井筒を越してしまいました。あなたと逢(あ)わないでいるうちに、

      という意味であり、娘からの返歌は、あなたと比べ合ってきた私の振分け髪も伸びて、

      もう肩を過ぎました。あなたでなくて誰がこの髪を結い上げるのでしょう、そう訳すのが

      たぶん正しいと思う、と。 」


     「 二人の子、互ひに五歳にして井筒の指出(さしい)でたるに長(たけ)をくらべて、

      これより高く成(なり)たらん時は、夫婦にならむと契(ちぎ)りけり 」
   
 
       ( 宮本輝著 「 慈雨の音 ‐ 流転の海 第六部 ‐ 」新潮文庫 所収 )



 





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする