今日の「お気に入り」は。「愛子さま」が中学1年生のときに書かれたという「作文」。
「 私は看護師の愛子。最近ようやくこの診療所にも患者さんが多く訪れるようになり、
今日の診療も外が暗くなるまでかかった。先生も先に帰り、私は片付けと戸締りを任されて、
一人で奥の待合室と手前の受付とを行き来していた。
午後八時頃だろうか。私は待合室のソファーでつい居眠りをしてしまった。翌朝眩しい
太陽の光で目が覚め、私は飛び起きた。急いで片付けを済ませて家に帰ろうと扉をガラッ
と開けると、思わず落っこちそうになった。目の前には真っ青な海が果てしなく広がっていたのだ。
診療所は、一晩でどの位流されたのだろうか?
いや、町が大きな海へと姿を変えてしまったのかもしれない。助けを呼ぼうとしたが、電話も
つながらない。私は途方に暮れてしまった。
あくる朝、私は誰かが扉をたたく音で目を覚ました。扉の外には片足を怪我した真っ白なカモメが
一羽、今にも潮に流されてしまいそうになって浮かんでいた。私はカモメを一生懸命に手当てした。
その甲斐あってか、カモメは翌日元気に、真っ青な大空へ真っ白な羽を一杯に広げて飛び立って行っ
たのであった。
それから怪我をした海の生き物たちが、次々と愛子の診療所へやって来るようになった。
私は獣医の資格は持っていないながらも、やって来た動物たちに精一杯の看護をし、時には魚の骨
がひっかかって苦しんでいるペンギンを助けてやったりもした。
愛子の名は海中に知れ渡り、私は海の生き物たちの生きる活力となっていったのである。
そう。愛子の診療所は、正に海の上の診療所となったのだ。
今日も愛子はどんどんやって来る患者を精一杯看病し、沢山の勇気と希望を与えていることだろう。
( 出典:学習院女子中等科・高等科『生徒作品集』(平成26年度版))」
「 私は看護師の愛子。最近ようやくこの診療所にも患者さんが多く訪れるようになり、
今日の診療も外が暗くなるまでかかった。先生も先に帰り、私は片付けと戸締りを任されて、
一人で奥の待合室と手前の受付とを行き来していた。
午後八時頃だろうか。私は待合室のソファーでつい居眠りをしてしまった。翌朝眩しい
太陽の光で目が覚め、私は飛び起きた。急いで片付けを済ませて家に帰ろうと扉をガラッ
と開けると、思わず落っこちそうになった。目の前には真っ青な海が果てしなく広がっていたのだ。
診療所は、一晩でどの位流されたのだろうか?
いや、町が大きな海へと姿を変えてしまったのかもしれない。助けを呼ぼうとしたが、電話も
つながらない。私は途方に暮れてしまった。
あくる朝、私は誰かが扉をたたく音で目を覚ました。扉の外には片足を怪我した真っ白なカモメが
一羽、今にも潮に流されてしまいそうになって浮かんでいた。私はカモメを一生懸命に手当てした。
その甲斐あってか、カモメは翌日元気に、真っ青な大空へ真っ白な羽を一杯に広げて飛び立って行っ
たのであった。
それから怪我をした海の生き物たちが、次々と愛子の診療所へやって来るようになった。
私は獣医の資格は持っていないながらも、やって来た動物たちに精一杯の看護をし、時には魚の骨
がひっかかって苦しんでいるペンギンを助けてやったりもした。
愛子の名は海中に知れ渡り、私は海の生き物たちの生きる活力となっていったのである。
そう。愛子の診療所は、正に海の上の診療所となったのだ。
今日も愛子はどんどんやって来る患者を精一杯看病し、沢山の勇気と希望を与えていることだろう。
( 出典:学習院女子中等科・高等科『生徒作品集』(平成26年度版))」