今日の「 お気に入り 」は 、作家の村上春樹さんが 、
1994年か1995年頃に書かれたエッセー「 うず
まき猫のみつけかた 」( 新潮文庫 )の中の一節 。
引用はじめ 。
「 この前ある大きなショッピング・センターの
駐車場で 、ついうっかり優先車線じゃないと
ころで車を先に出してしまったら 、優先車線
にいた三十歳前後の黒人ドライバーに " You
scumbag!" と開いた窓から怒鳴られた 。た
しかに僕が悪かった 。でも言い訳するんじゃ
ないけれど 、地面の白線が消えていてどっち
が優先なのかわかりにくかったのだ 。そんな
に真剣に怒ることもないだろうに 。
アメリカに住んでいると 、『 ファックユー 』
だの『 バスタード 』だの『 サノバビッチ 』
だの『 アスホール 』だの『 マザファッカ
ー 』だの 、そういうポピュラーな罵(ののし)
りの言葉には あっちこっちで もうすっかり慣
れっこになってしまって 、罵られてもとくに
なんとも思わないのだが 、この『 スカムバッ
グ 』はもちろん言葉としては知ってはいたけ
れど 、実際に面と向かって言われたのは初め
てだったので 、ちょっとぎくっとした 。『 ん 、
スカムバッグ?』
『 スカム 』はゴミのことだから 、文字どおり
に言えば『 ゴミ袋 』、辞書を引いてみると
『 無価値で道徳心のない輩(やから)に投げつ
ける侮蔑(ぶべつ)の言葉 、またはコンドーム 』
とある 。
なるほどね 。僕は無価値で道徳心のない輩だっ
たのだ 、以前からひょっとしてそうじゃないか
とは思っていたけれど ・・・ 。しかしこういう
目新しい言葉( もちろん僕にとってはというこ
とです )で罵られると 、罵られてもそれほど
悪い気はしない 。ちょっと珍しい昆虫を見つけ
たような 、あるいはこれまで手に入らなかった
野球カードをうまく手に入れたような気分になる 。
これはアメリカでも日本でも同じことだけれど 、
世間の汚い言葉 、荒ぶれた魂を採集したければ 、
都会で窓を降ろして車を運転するに限ります 。」
引用おわり 。
一年を締めくくる大晦日にふさわしい文章 、そんな訳ないか 。
早朝のラジオ番組「 あさぼらけ 」恒例の八代亜紀の「 舟歌 」
を 、耳にイアホンして 、聴きながら 筆写した 。
(⌒∇⌒)
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