「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

スカムバッグ Long Good-bye 2024・12・31

2024-12-31 05:55:00 | Weblog

 

 今日の「 お気に入り 」は 、作家の村上春樹さんが 、

 1994年か1995年頃に書かれたエッセー「 うず

 まき猫のみつけかた 」( 新潮文庫 )の中の一節 。

  引用はじめ 。

 「 この前ある大きなショッピング・センターの
  駐車場で 、ついうっかり優先車線じゃないと
  ころで車を先に出してしまったら 、優先車線
  にいた三十歳前後の黒人ドライバーに " You
  scumbag!" と開いた窓から怒鳴られた 。た
  しかに僕が悪かった 。でも言い訳するんじゃ
  ないけれど 、地面の白線が消えていてどっち
  が優先なのかわかりにくかったのだ 。そんな
  に真剣に怒ることもないだろうに 。
   アメリカに住んでいると 、『 ファックユー 』
  だの『 バスタード 』だの『 サノバビッチ 』
  だの『 アスホール 』だの『 マザファッカ
  ー 』だの 、そういうポピュラーな罵(ののし)
  りの言葉には あっちこっちで もうすっかり慣
  れっこになってしまって 、罵られてもとくに
  なんとも思わないのだが 、この『 スカムバッ
  グ 』はもちろん言葉としては知ってはいたけ
  れど 、実際に面と向かって言われたのは初め
  てだったので 、ちょっとぎくっとした 。『 ん 、
  スカムバッグ?』
  『 スカム 』はゴミのことだから 、文字どおり
  に言えば『 ゴミ袋 』、辞書を引いてみると
  『 無価値で道徳心のない輩(やから)に投げつ
  ける侮蔑(ぶべつ)の言葉 、またはコンドーム 』
  とある 。
  なるほどね 。僕は無価値で道徳心のない輩だっ
  たのだ 、以前からひょっとしてそうじゃないか
  とは思っていたけれど ・・・ 。しかしこういう
  目新しい言葉( もちろん僕にとってはというこ
  とです )で罵られると 、罵られてもそれほど
  悪い気はしない 。ちょっと珍しい昆虫を見つけ
  たような 、あるいはこれまで手に入らなかった
  野球カードをうまく手に入れたような気分になる
  これはアメリカでも日本でも同じことだけれど 、
  世間の汚い言葉 、荒ぶれた魂を採集したければ 、
  都会で窓を降ろして車を運転するに限ります 。」

  引用おわり 。

   一年を締めくくる大晦日にふさわしい文章 、そんな訳ないか 。

  早朝のラジオ番組「 あさぼらけ 」恒例の八代亜紀の「 舟歌 」

 を 、耳にイアホンして 、聴きながら 筆写した 。

  (⌒∇⌒)

 

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