”農”と言える!?

元・食推おばさんのソムリエ日記

ふんわりと重たい在来作物

2014-07-14 10:41:23 | 在来種 伝統野菜

静岡大学大学院教授 稲垣栄洋先生による

在来作物の講演を拝聴しました。

テーマは、「静岡の在来作物と種から見た現在の野菜」。

腑に落ちる・・・という言葉がありますが、

まさにそう感じたお話でした。

   

●ふんわり固定種と在来作物

 まず、在来作物の定義を見ていきましょう。

 今、世間に出回っている種子の大半はF1品種ですが、

 F1品種ではなく、農家の方が選抜を繰り返し、

 守ってきた品種を固定種と言います。

 固定種は、F1品種のように、例えば・・・

  ・収量が多い

  ・病気に強い

  ・大粒のものが採れる

  ・甘みが強い

 といった明確な特徴はありません。

 

 「何となくこんな感じ」といったふんわりした統一感はあるのですが、

 そのあたりが曖昧なのが特徴。

 そんな固定種の中で

  ・古い時代から栽培されているもの

  ・特定の地域で守り継がれているもの

 を在来作物と言うことが多いようです。

 


●食べるたびに味が違う?

 私は今まで何回か井川の「おらんど」というじゃがいもを

 いただいたことがあります。

 ところが、食べるたびに味が違うのです。

 貯蔵期間が異なるものはもちろんのこと、

 同時期に収穫されたものでさえも、味が微妙に違っていました。

 すぐ隣りの畑で作ったものでさえ、味が違うこともあるそうです。

 これは、固定種の「ふんわりした統一感」がもたらしているのでしょう。

 


●面倒くささに付き合えるのか?

 在来作物の中には、中山間地でおばあさんがたった一人で

 作っているものもあります。

 その作物は、おばあさんが亡くなってしまえば、

 ひっそりと姿を消していきます。

 では、在来作物を守るためにするべきことは何か?

 後継者を育てること?

 

 でも、在来作物は、食べ物が少ない地域で、

 急斜面の狭い農地を活用し、

 それに合った農法で作り続けられてきたものです。

 そして、その不安定な味にふさわしい食べ方をされてきました。

 つまり、その地域で作り、食べないと、

 本当のおいしさがわからないのです。

 そこまでの面倒くささに付き合える覚悟がないと

 後継者にはなれないでしょう。

   
 

●何ができるのか?

 農業者でもない私にできることは、

 ・在来作物が作られている土地に出向くこと、

 ・そこに暮らす方々の日常に触れること、

 ・そして、在来作物のお話をできるだけ多くの人に伝えること

 でしょうか?

 

 でも、お祭り的なイベントに参加したり、

 一度や二度その作物を味わったくらいで、

 在来作物が生き抜いてきた歴史、 風土、食文化を

 わかったような気になることだけは慎みたいと思います。

 

   

在来作物と、それを作り続けてきた人たちに対する

尊厳の気持ちは持ち続けなければならない。

Img_9506


おじいさんの手と小さな種を映したこのスライドが

在来作物のすべてを伝えているようです。


稲垣先生、

そして、この講演会を企画してくださった

「つなぐ はぐくむ 命のたね」の皆さま、

ありがとうございました。

 

コメント (4)
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