この春、いくつか行っておきたいところがあった。ひとつはムーミンの映画、昨日は永青文庫、そしてこの岡崎京子展だ。
いろいろと忙しくて、行けるかどうか危ぶまれたが、とりあえずスケジュールを靴べらですべりこませた。
岡崎京子は僕と同世代だ。高校生の頃、「ポンプ」という雑誌があったが、彼女はそこに盛んに投稿していた。
僕はけっこう影響を受けていて、彼女のイラストを模写したりもしていた。ポンプではほかに、岡林みかんという人も良く投稿していたな。
ただ、80年代半ば以降、彼女の名をポンプ以外で見るようになると、だんだんと作品をフォローしきれなくなってくる。
何かを受け止めるにも才能が必要だ。僕はだんだんと保守的になり、噂程度にしか彼女の作品を見聞きしなくなった。
高校生の頃は、男子が少女漫画を読むのが「新し」かった。24年組とかは、時期的には後から「学んだ」かたちになるが、僕も粋がって読んでいたことがある。岡崎氏も萩尾望都などを読んで影響を受けたようだ。
その岡崎氏自身が漫画界の新潮流となっていくのだが、あの頃の女性は強かったなあ。内田春菊や桜沢エリカ、少し傾向はちがうけど、中尊寺ゆつこなど、癖のある描き手が多かった。まあ、時代時代でいつでも強い個性と才能の人が、新しい流れを作っていくのだろうけどね。
特に、性を前面に押し出した作品を、若い頃は読むことができなかったな。なんだか、とりとめのない不安感に襲われてしまう。今読めば、また違う感想になるかも知れないが・。
自分にはない、そして近づくことができない世界を見せられているような気がして不安だった。
高校生の頃は、自分と同じ世界にいると思っていた人だが、いつのまにか、それこそあっという間に、遠いところに行ってしまった気がした。まあ、もともと同じところにいると思っていたのが勘違いなのだろうけど。
若い人たちがたくさん来ていた。
彼らが岡崎作品を、どのように感じているのか興味がある。
漫画について、今なにが新しく、なにが古いもののか、もう僕にはわからない。
ただ、帰りにほろ酔い気分で図録のページをめくると、僕にはあの頃に直結しているような気持ちにさせられたが。