過日、信号待ちをしているとき、車窓からどこかの家の庭を眺めていたら、ハナミズキの樹が目に留まった。
ハナミズキは春になると白または桃色のきれいな花をつけ、そのあとおおぶりの葉を茂らせる。
新緑の季節、その樹容も端麗だが、それは長くは続かない。
夏の終わり頃には早くも葉の端の方から赤く染まり始め、やがて琥珀のような色に変わる。
葉がすっかり落ちてしまうのは多少時間がかかるが、色が変わるのはまだ残暑が厳しい頃だ。このハナミズキと、少しずつ早くなってきた日の入りが、いつも夏の終わりを感じさせてくれた。
くれた、と過去形で書いたのは、現宅のまわりにはハナミズキを見かけないからだ。
前宅の、二階の寝室から向かいの家を見えると、ちょうど下にハナミズキの木が見えた。
毎日それを眺めながら、季節の移ろいを感じていた。
もうひとつ、サルスベリもあちこちの家の庭先に目立ち始める。
これなどは現宅近くのどこかでも咲いているはずだが、少なくとも今机に座って思い出そうとしても、思い出せない。
考えてみると、現宅周辺で写真を撮ったことはほとんどない。お祭りのとき、何枚か撮ったのと、カメラを買ったときに電車を試し撮りしたくらいだ。
前宅にいた頃はあるていど落ち着いた暮らしが続いていたのに対し、現宅ではいろいろなしがらみのようなものが増えて、生活自体にゆとりがあまりないせいかもしれない。
その辺は、まあ当面やむを得ないのかもしれない。