米NBCのドラマ「ザ・ホワイトハウス」(1999-2006)のことは、このブログで度々取り上げていますが、このドラマのすごいところは、時々現実に起こる政治的な出来事について、エピソードを通じて勉強できてしまうところです。
一例をあげれば、予算をめぐる議会との確執(シャットダウン)など。
とはいえ、もともとアメリカ政治の専門家でも何でもないので、たいていのエピソードは漫然と表面をなぞっているだけで、お話のベースとなった法律関係とか過去の事例などはわからないままでいることも多いです。
反対にドラマで取り上げたことが、あとから現実世界のニュースを見ているときにピンとくる、というのもあります。
トランプ大統領がコロナウィルス陽性となり、驚いたということは昨日書きました。
その後、ワシントン近郊の軍の病院に入院しながら執務を継続している、と、テレビのニュースは報じています。報道では一時的に健康状態が悪化したものの、現在は落ち着いているとのこと。
このまま順調に回復してくれることを祈りたいですが、万一職務の遂行が困難になった場合はどうするか。こうした大統領の職務不能についての規定が憲法修正第25条第3節です。
法律の具体的な内容や、現実世界での適用例は調べていただくとして、ドラマではどう取り上げていたかというと;
ジョサイア・バートレット大統領の末娘ゾーイ・バートレットは、卒業パーティのクラブで誘拐され消息不明になります。折しも中東をめぐるテロ活動を暗示する動きや事件が起きており、ゾーイの誘拐についても脅迫状が来ていることがわかります。(シーズン4、第22,23話「悪夢のシナリオ」「孤高のリーダー」)
自分の身内を誘拐されたことにより、大統領としての公正な判断が困難になったと悟った大統領は、修正25条3節の規定に基づき、一時的に職務を退く判断をします。ドラマでは全閣僚を集め、自らの考えを表明したうえ、法の規定にはないが、と断ったうえで各閣僚にこの決定の賛否を問うています。
このときバートレット政権は、少し前に情報漏えい問題で副大統領が辞任しており、副大統領職が空席の状態でした。大統領権限の継承は第二順位となる下院議長になされることになり、ミズーリ州選出共和党のグレナレン・ウォーケン下院議長が大統領代行として宣誓をします。
ペンス副大統領も大統領としばしば行動を共にしていたことから、万一ペンス氏も感染してしまったら、承継順位第二位のナンシー・ペロシ下院議長(民主党)が大統領代行を務める可能性もあると、SNSで一時話題になりました。
ただ、すぐにペンス氏が検査の結果陰性であることがわかり、噂も沈静化しています。
シリーズの最終シーズンである第7シーズンは、2期8年務めたバートレット大統領の後任を決める選挙運動がドラマの中心です。
民主党はマシュー・サントス下院議員と、バートレット政権で長年補佐官を務めたレオ・マクギャリーが副大統領候補として立候補しています。共和党はベテランの上院議員アーノルド・ヴィニックが候補です。
サントス・マクギャリー候補は終盤追い上げ、勝利の可能性が高まりますが、投票日にマクギャリー氏は心臓まひで倒れ、そのまま不帰の人となってしまいます。
サントス候補はマクギャリー氏の死を公表しますが、投票と開票作業はそのまま進み、サントスは選挙戦を制します。
副大統領候補が空席のままの勝利です。現実世界でもこんなことはないそうですが、ドラマでは他の閣僚指名と同じプロセスで、副大統領を決めようとしています(閣僚は大統領就任後に議会に諮り、上下両院の承認を得て決められる)。
ただこれは、そういう決まりになっているわけではなく、「司法長官経験者の意見では、理論的には選挙人に候補者を承認してもらうこともできる」と、ドラマでは語られています。議会の承認を求める場合、次の大統領選で勝てそうな副大統領候補(=有力な候補)では、議会は承認したがらないだろう、という懸念があるために示された助言です。(シリーズ通算エピソード番号152 「党派を超えた人選(The Last Hurahh)」)。
これもイフの世界ですが、トランプ氏がコロナの影響で、大統領候補を続けることが難しくなった場合、ペンス氏が自動的に大統領候補になりうるか、というと、そういう決まりがあるわけではない、とこれは、SNSで会話した友人のコメント。たしかに、有権者は正副大統領として立候補したペアを判断するわけで、片方がいなくなればその判断も大きく変わってくるでしょうね。。
これは余談ですが、選挙戦に敗れたヴィニック氏は、スタッフに次期大統領選への出馬意欲を示します。怪訝な顔をするスタッフに対しヴィニック氏は「わかってる、年齢のことだろう。心配ない、70歳でも気分は60だ!」と答えています。
この頃(15年ぐらい前)のアメリカの政治家は年寄り=ディスアドバンテージでしたが、今やトランプ氏74歳、バイデン78歳ですからね。いつの間にこんなになってしまったのでしょうね。。
これも余談。
このザ・ホワイトハウス、基本民主党視線によるドラマなのですが、先日このドラマの「同窓会」番組を企画しているというニュースが流れました。アメリカのケーブルで放映するもので、日本では見られないと思いますが。
選挙運動の一環として企画されているものらしいです。
長くなってしまいましたが、とりあえず推敲なしでアップします。後で書き直すかもしれません。。