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料理業界よ、これでいいのか? 波紋呼ぶミシュラン3つ星シェフの自殺

2016-02-09 | Weblog

 

欧州最高のシェフの一人が自殺した。ミシュランガイドで3つ星をとりながら死を選んだ背景には、彼らを追い詰める激しい競争がある。次の犠牲者を防ごうと、料理業界を変えようという議論が国境を越えて広がっている。

シェフのブノワ・ヴィオリエは絶頂期にあった。2015年12月12日、フランス政府は、ヴィオリエのスイスのレストラン「ロテル・ド・ヴィル」を公式のレストランランキング「ラ・リスト」で世界一のレストランに認定した。「紛れもない美食の殿堂!」とのコメントとともに、ミシュランガイドでも3つ星を獲得したヴィオリエの店は、最高のレストランとしての地位を築いていた。

しかし、報道によると、ヴィオリエは、苦労して手にした成功が崩れ去ることを恐れていた。フランスで最も強い影響力を持つレストランガイド「ゴー・ミヨ」が最近、彼のレストランを少し降格したことで、誰もが羨むミシュランの星を失うかも知れないと話していたようだ。

ヴィオリエの遺体は、1月31日、スイスのクリシエの自宅で発見された。警察は「銃で自殺したと見られる」と、声明の中で述べた。

この44歳だったシェフの死は、フランスの伝統的な高級料理である、オートキュイジーヌの世界を混乱に陥れた。

「同世代で最も才能に恵まれたシェフを失ってしまった」とゴー・ミヨは声明の中で述べた。

ヴィオリエの自殺は、大西洋を越えたアメリカの料理業界でもメンタルヘルスへの支援についての議論も呼び起こした。

「ブノワの死を知った時、私は『二度と繰り返してはいけない』と思いました」とリアリティ料理番組「トップシェフ」に出演しているヒュー・アチソンはBuzzFeed Newsに語った。「料理業界はストレスだらけで、シェフたちは常に監視されている状態です。強烈な個性を持った多くの人たちが特別なことを成し遂げようと、しのぎを削っています。この状況を生き抜くのは容易ではなく、犠牲者が出るのも不思議ではありません」

シェフの仕事は羨むようなものではない。美味しい創作料理がテーブルに素早く一斉に届くよう、段取りを調整しなければならない。個人的な事情は全く関係ない。その上、大勢のキッチンスタッフとともに暑くて窮屈な厨房で、やりくりしていかなければならない。

腹をすかせた大勢のお客と衛生検査官のチェックに加え、厳しい批評家からは完璧を求められ、たった一つの批評で評判を落とす可能性もつきまとう。先月「ニューヨーク・タイムズ」の料理評論家がトーマス・ケラーのニューヨークのレストラン「パ・セ( Per Se)」を厳しい批評で4つ星から2つ星に格下げした時、読者は記事の中のあらゆる辛辣な言葉に大喜びした。この記事は、1月の最も読まれた新聞記事のひとつとなった。

「シェフやレストランを評価する時に忘れられているのは、評価している対象が人間だということです」とアチソンは語った。

アチソンは、ジョージア州でいくつかのトップレストランを支えてきた。しかし、これまで、シェフたちとメンタルヘルスについての話をした記憶がないという。

「歴史的にキッチンは、厳しくてつらい男の世界です」とアチソンは述べる。「常に自分で何とかしなければならないこの業界が、犠牲者を出すかも知れないという現実と向き合おうとしたのはつい最近のことです。この業界は変化が必要です。ここまで過酷であってはならないのです」

CNNのフードブログ「Eatocracy」を運営していたライターのカット・キンズマンは、メンタルヘルスの記事もよく書いていた。インタビューした多くのシェフと、オフレコで抱えている苦悩について会話をしたことを思い出した。

「食事客は、何が起きているか全く気づきません。裏方のシェフたちは骨身を削っているのです」とキンズマンはBuzzFeed Newsに述べ、こう続けた。「彼らは死にそうなのに、誰もそのことを口にしません」

キンズマンは、現在料理サイト「Tasting Table」の総監修を務めている。先月、キンズマンはウェブサイト「Chefs With Issues」を立ち上げ、プロの料理人がメンタルヘルスに関するサポートや資料を見つけられるようにした。これまでに600人以上の厨房で働く人がサイトの非公式の調査に協力した。

その結果、多くのシェフたちが、うつ病、不安神経症、および薬物乱用に苦しんでいることが明らかになった。

「誰も自分を変だとか弱いとか思われたくありません。誰かから『君はここではやっていけない』と言われたくないのです」とキンズマンは述べた。「極端な体育会系文化で弱みを見せることが許されないのです。でも、もし隣で働いている人が自分と同じつらさを経験していると知っていたなら、話は早いでしょう」

アメリカの一部の料理学校は、自分の生徒に業界の厳しい現実に対する覚悟を持たせる必要性を認識している。ザ・カリナリー・インスティテュート・ オブ・アメリカ(CIA)の学務担当バイス・プレジデントのマイケル・スパーリングは、自分の新しい学校は近年「進化」を遂げ、現在はメンタルヘルスに重点を置いていると、BuzzFeed Newsに語った。

「料理にはmise en place(下ごしらえ)という言い回しがあります。料理の下準備をするという意味です。この考えをバランスの取れた生活、つまり心身共に健康な生活を送る、という意味に拡大しました」とスパーリングは語った。

CIAの生徒は瞑想の研修会に参加し、スポーツチームでプレイし、悩みがあればカウンセラーに相談できる。

「料理の世界は本当に過酷なので、生徒にはバランス感覚を養ってもらいたいのです」とスパーリングは述べる。「精神的なバランス感覚がないと成功する可能性は低いでしょう」

とはいえ、業界は、まだ対応の遅れを取り戻す途中だ。料理の世界はワーク・ライフ・バランスを成し遂げるための一層の努力が必要、と語るのはHeirloom Foundationのディレクターでシェフのジョナサン・オリーだ。彼は、若者の育成プログラムに加え、キッチンにおけるメンタルヘルス問題の認識向上にも努めている。

オリーとアチソンは、体育会系のキッチン文化の変革が必要だと述べる。「テレビ番組や一部のキッチンで存在感を発揮しているのは声が大きく、押しの強いシェフたちです」とオリーは語る。「良い仕事をする健康な人が欲しければ、ただいじめるのではなく、一緒に働いていけるよう時間を割いて付き合っていくことが重要だと思います」

素晴らしい仲間を得るためには、理解と思いやりを示すことが必要だとアチソンは述べ、こう付け加えた。

「我々が変化をすることが必要なのです」

2月1日、ミシュランガイドの国際ディレクターのマイケル・エリスは、2015年の星を発表する前に、ヴィオリエを偲んで1分間の黙とうを捧げた。ヴィオリエのレストラン「ロテル・ド・ヴィル」の評価は変わらずだったが、2003年に自殺したフランスの有名なシェフ、ベルナール・ロワゾーのレストランからは星が1つ減らされた。

「難しい判断でした。しかしこれも仕事です」とエリスは語った。

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