乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

『平家女護島 俊 寛 鬼界ヶ島の場』 我當 吉弥 薪車 中村京妙 片岡當十郎 進之介

2008-06-24 | 歌舞伎

 

 (写真は、開演前のロビーです。)

  

 平成20年度 歌舞伎鑑賞教室歌舞伎

               その美と歴史への招待

 

 『平家女護島 俊 寛 鬼界ヶ島の場』

 俊 寛・片岡我當

  6月21日(土) 午後1:00 クレオ大阪中央にて

 

 はじめに

  坂東薪車丈による、歌舞伎の説明

 

 第一部 『加賀美山』

  (お初が尾上の仇討ちをする一場面のみ)

   岩藤 上村純弥

   お初 片岡當史弥

 

  第二部 『平家女護島 俊 寛 鬼界ヶ島の場』

   俊寛僧都 片岡我當

   丹波少将成経 上村吉弥

   平判官康頼 坂東薪車

   千鳥 中村京妙

   瀬尾太郎兼康 片岡當十郎

   丹左衛門尉基康 片岡進之介

 

 

 今年も家族と、歌舞伎鑑賞教室歌舞伎を観ることができた。

 今回も我當丈の大熱演。

 我當丈、仁左衛門丈の俊同様、写実的な演技を披露。

 力のこもった匠の演技とでも言っておこう。

 とにかく素晴らしい感情移入に大満足。

 終わる頃には涙はあふれ、まっすぐに舞台を直視することはできない。

 終了後、席を立つ頃には、腰が抜けそう。

 役者魂の名演技に満足する私であった。

 

 我當丈、最近では先代の仁左衛門はんに、声も表情も、仕草までも似てこられた。

 といっても、初めて観たのは高校生の頃で、歌舞伎は今以上にわかって無かった。

 若い頃は感覚的に観ていたので、的を得てないのかも知れない。

 やはり、素人がむやみにこのようなことを申すのは、控えておこう・・・。

 ここはひとまず 見巧者の方の教えを請うのが最良といえる・・・。

 

『俊』は今まで多くの役者で楽しんできた。

 中でも、仁左衛門丈や幸四郎丈、吉右衛門丈、勘三郎丈他・・・などが印象に残る。

 役者によって形で演じる方もあれば、写実的に演じる方もあり、観る度に、感じ方が違う。

 又同じ役者の俊であっても、周りの役者で、芝居は大きく変わる。

 極端に言うと会場の観客さえも巻き込み、芝居は大きく異なってしまうのである。

 

 我當丈の俊においては、今回一つの観るべきテーマを抱いていた。

 失礼ながら、『どのようにやつれさせてみせるか・・・。』が、観る上での一つのポイントであった。

 期待の通り、化粧、演技、声色他で、見事に 島に住む俊を演じた。

 

 足取りのよろけ方は、結構好きだった。

 小屋の昆布をつかむ部分は省かれた。

 島の高台に登る部分は、意外とあっさり。

 最後 船を見送る部分は、静かでしみじみとした演技で、こういった演じ方もまたいいものだな!と、心打たれた。

 

 娘が三歳の頃、京都の南座の顔見せで、『俊』を観たことがある。

 確か吉右衛門丈の俊だったと記憶しているが、定かではない。

 その時 娘は大泣き。舞台の上から、役者群の篤い暖かい視線を受けたことがあった。

 終了後、彼女曰く、

「かわいそうすぎる~~!いっしょに、乗せてあげれば良かったのに~!」

と涙ながらに、訴えていた。

 なるほど、彼女の言うとおりである。

 幼いこどもの、概念では観ない素直な感想に、私は感動したものである。

 

 今回は大阪市民歌舞伎ということもあったせいか、役者が形や声色、台詞を強調されるごとに、会場のあちらこちらから爆笑が巻き起こった。

 とある見巧者の方に、ブログ上で、上方歌舞伎の良さだと教えていただき、納得。

 だが涙流して食い入って観ていた私と、爆笑客との温度差は大きい。

 どちらの見方が正しいというのではなく、どのように観ても歌舞伎の味わいなのだが、写実で演じておられた我當丈には、気の毒といえよう。

 

 或いは我當丈の演技を引き立てるため。重ねて、一般市民に歌舞伎を馴染ませるために、瀬尾太郎兼康訳の 片岡當十郎丈は、心地演技をユーモラスにしたのかも知れない。

 楽しく演じられたのだが、我當丈の悲しみの『ひだ』にはまり、私は笑いにはついて行くことは不可能だったことを付け加えておく。

 

  

   写真上は会場でいただいたパンフレットの一部。

 

 

 坂東薪車丈による、歌舞伎の説明も楽しかった。

 素顔、紺瑠璃のおめしものに薄鈍色の袴の坂東薪車丈は、結構小粋であった。 

 始終笑顔を絶やすことなく、舞台人に徹しておられたのは好印象。

『歌舞伎』の歌部に焦点をあて、起承転結を持って、旨く説明。

 藤舎勘秀氏の太鼓をはじめ ツケ。それらにあわせての新車丈の寸劇なるポーズは楽しませていただいた。

 

『俊』の前の『加賀美山』。若い役者の気の入り込んだ芝居は、観ていていいものである。こなれた演技とは言い難いが、懸命な姿は心地が良い。将来を担う役者の姿を楽しませていただいた。

 

 幕間休憩では『加賀美山』にあわせて、

「これ、尾上!こりゃ、便所下駄ではないかぇ!!」

と、花組芝居の『ザ・隅田川』をものまねすると、ものの見事に、私、家族には鼻であしらわれてしまった。

 落ち着きのない乱鳥である。

 

 長文、お付き合い下さいまして、ありがとうございました。

 心より、感謝申しあげます。

 

コメント (9)
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