『番町皿屋敷 お菊と播磨』
監督・脚本:伊藤大輔
原作:岡本綺堂
美術監督助手 太田誠一☆
出演:長谷川一夫 津島惠子 田崎潤 東山千榮子 進藤英太郎
1954年
大映
94分
モノクロ
名門旗本の青山播磨と腰元のお菊との悲恋を描いた時代劇。炎に包まれた青山邸で、播磨の愛情を確かめるために、南蛮絵皿を井戸に投げ込んだお菊を手打ちにした播磨が、お菊を抱き寄せ自らも命を絶つクライマックスシーンが秀逸。岡本綺堂の『番町皿屋敷』を長谷川一夫、津島恵子の主演で映画化。
播磨と岩の美しいラブ『番町皿屋敷』
歌舞伎で『番町皿屋敷』を見ていると、いつも釈然としない部分があった。
「皿がおしうて、殺すのではない。私の愛をうたごうて確かめた。その心が許せないのだ、わかるか、菊…」
この筋書きは歌舞伎でも今回見た映画でも同じ。(正確には複数パターンの歌舞伎の筋書きがあるが、ここでは省きたい)
だが、芝居では殺した後井戸に沈め、一枚、二枚となじみの『番町皿屋敷』に展開する。
これが女性からすれば、きれいごとか言い訳にしか思えない。
ところが、伊藤大輔監督の『番町皿屋敷』は見事にその不満を解消してくれた。
自ら一代きりと屋敷に火をつけたが、菊へのはなむけにと、その手柄を菊の兄(火消し)に託す。
播磨は息絶えた岩を抱き寄せ、
「そなたのいないこの世に、何の未練があろう。そなた一人ではいかさぬ。」
と自害する。
この場面での播磨の男らしさ。
怪談もの、夏芝居(映画)というより、出来のいいヒューマンストーリー。