(写真は奈良の斑鳩。斑鳩では辻や境界地に多くのお地蔵さんが並べられている姿を、よく目にする。
小さな丘に作られた畑。そこには野菜や柿の木が植えられている。
小岡と柿や無花果(イチジク)、野菜の畑の真ん中には、一本の道。小丘と道の境界線を仕切るかのように、お地蔵さんの数々が、並べられている。
なんだか畑には息吹を感じるが、道は殺伐とした無味無臭で無色透明。今はコンクリートで舗装されているが、その昔は、小石などで歩きづらかったのだろうか・・・
息吹を感じる上下の畑に対して、この道はあの世につながるような錯覚に囚われる道で、気にかかる・・・黄昏時にひとりで歩くのは、御免こうむりたい。)
記録だけ 2007年度 70冊目
日本の見えない空間
妖怪の民俗学
著者 宮田登
岩波書店 同時代ライブラリー
1990年12月14日
255ページ 874円+税
八月六日。
夫が、私の頼んでいた 宮田登の『日本の見えない空間 妖怪の民俗学』を持ち帰ってくれる。
夜から一気に読みあげた。
興味深い内容。誠に面白い。
妖怪といって民俗学的に紐解かれた、大変深い内容。
参考文献の一部、柳田國男氏の『妖怪談義』や井上円了の『妖怪談』なども参考にされているらしい。
宮田氏は妖怪において、『人間の潜在的恐怖心が土台となり、不思議を生み出す精神構造』と『自然破壊という原罪意識』と考えているようだ。
後者の例は多く出されており、一例として『皿屋敷』が『更(地)屋敷』であったとする説なども記している。話は名前にまで及び、菊やおさよなどに不幸がかかるなどにも発展。芝居の好きな私は歌舞伎の『番町皿屋敷』を思い浮かべながら、夜な夜な震え上がっていた。
『自然破壊という原罪意識』の原罪意識という展においては、柳田國男は、『お化け』と示し、『妖怪とお化けの混乱』について声を大にして、違うんだと!と唱えられていたような気がするが・・・私は宮田登る氏が好きである。
ちなみに柳田国男氏は妖怪を『神の零落した姿』としている。
この本は
『妖怪のとらえ方』
柳田国男氏と井上円了氏の考えの違いを取り上げるが、遥は同じことを唱えているといった宮田氏の潔い書き方が好きだ。(P.47)
『化物屋敷考』
「開かずの間」や「入らずの間」などを例に出す「化け物屋敷考」が面白い。民話などのもよく見られる「開けるな」や「見るな」のパターン二共通すると思われる。
『妖怪のトポロジー』
今回この本で一番興味深かった項目。
「辻」
この項目がかなり興味深く好きだった。
辻について、詳しくいわれや名神、習慣などが記されており、わくわくしながら読んだ。
①辻には霊が集まりやすい所とされている。
②葬儀の帰り道の辻には白布を櫛にさして、のろいを持つかもしれない死霊が村落(家)に戻らないようにした。
③辻はあの世とこの世の境界と考えられ、石やお地蔵さんをおかれていることも多い。
④そこには辻神とか道祖神と呼ばれる神がいたので、未来を占ってもらうことがあった。
⑤辻占いなどが流行る。辻は人気が少なく、人の声が聞きたくて、うあら内を聴くといったことも心理的に働くのか・・・辻神にあの世を見せてもらおうとするのである。
⑥辻では霊魂を鎮めるための舞いや芸能が発達。『辻わざ』といい今の歌舞伎もその一つである。
⑦辻の真正面に家を建てると災いが起こる。
「橋」
「境界線」
「あの世とこの世」
「地名と因果」 (静岡県産女野交通事故 他、古いいわれ)
「七不思議」
「置いてけ堀」
(映画「妖怪百物語」(大映)「おいてけ~、おいてけ~」を思い出す)
『都市の妖怪』
歌舞伎でもおなじみの「累」や「皿(更地)屋敷」「四谷怪談」話は、ここで取り上げられていた。
他にも現代(約17年前)の病んで入る事件が、心理学的及び民俗学的に取り上げられていた。特にホテルでの怪奇行動は偶然にしては陳腐な話が多い。
という四部構成から成り立っている。
この本、夢中で読んでいたが、夜中に読んでいると結構怖かった。
内藤正敏撮影のモノクロの見事な写真は、よくみるとどこか背筋が凍りつく怖さを感じさせるユニークさを持つ写真。
数々の素晴らしい写真にも見とれ、とても楽しい時間を過ごすことができました。
乱鳥の『宮田登』読書記録
『冠婚葬祭』 ↓
http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/650b65fddd7f45402ae5b8c9552f0a62
『近世のこども歳時記』 ↓
http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/6eca86c2f777e87971bedc71e7432b7d
だけど、
妖怪って、親しみやすそう、、
チョイ、カワイイ、感じ、、
妖怪って、幽霊とは、違うよね、、
幽霊て、いそうだね、、
妖怪は、こどもたち、
怖がらせるためなんじゃない?
柳田国男氏や宮田登氏の書かれている妖怪が、そのまま、水木しげる氏の絵と重なって、理解が深まることも時々あります。
実際に宮田登氏の本にも、水木しげる氏の画が何枚か挿入されておりましたよ。