乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

妖怪の民俗学 日本の見えない空間   宮田登著  岩波書店

2007-08-07 | 民俗学、柳田國男、赤松啓介、宮田登、折口信夫

(写真は奈良の斑鳩。斑鳩では辻や境界地に多くのお地蔵さんが並べられている姿を、よく目にする。

小さな丘に作られた畑。そこには野菜や柿の木が植えられている。

小岡と柿や無花果(イチジク)、野菜の畑の真ん中には、一本の道。小丘と道の境界線を仕切るかのように、お地蔵さんの数々が、並べられている。

なんだか畑には息吹を感じるが、道は殺伐とした無味無臭で無色透明。今はコンクリートで舗装されているが、その昔は、小石などで歩きづらかったのだろうか・・・

息吹を感じる上下の畑に対して、この道はあの世につながるような錯覚に囚われる道で、気にかかる・・・黄昏時にひとりで歩くのは、御免こうむりたい。)

 

 

記録だけ 2007年度 70冊目                 

 

日本の見えない空間

  妖怪の民俗学

  

                                          

 著者  宮田登

 岩波書店 同時代ライブラリー

 1990年12月14日    

 255ページ 874円+税  

 

 八月六日。

 夫が、私の頼んでいた 宮田登の『日本の見えない空間 妖怪の民俗学』を持ち帰ってくれる。

 夜から一気に読みあげた。

 興味深い内容。誠に面白い。

 

 妖怪といって民俗学的に紐解かれた、大変深い内容。

 参考文献の一部、柳田國男氏の『妖怪談義』や井上円了の『妖怪談』なども参考にされているらしい。

 

 宮田氏は妖怪において、『人間の潜在的恐怖心が土台となり、不思議を生み出す精神構造』と『自然破壊という原罪意識』と考えているようだ。

 後者の例は多く出されており、一例として『皿屋敷』が『更(地)屋敷』であったとする説なども記している。話は名前にまで及び、菊やおさよなどに不幸がかかるなどにも発展。芝居の好きな私は歌舞伎の『番町皿屋敷』を思い浮かべながら、夜な夜な震え上がっていた。

『自然破壊という原罪意識』の原罪意識という展においては、柳田國男は、『お化け』と示し、『妖怪とお化けの混乱』について声を大にして、違うんだと!と唱えられていたような気がするが・・・私は宮田登る氏が好きである。

 ちなみに柳田国男氏は妖怪を『神の零落した姿』としている。

 

 この本は 

  『妖怪のとらえ方』

   柳田国男氏と井上円了氏の考えの違いを取り上げるが、遥は同じことを唱えているといった宮田氏の潔い書き方が好きだ。(P.47)

 

  『化物屋敷考』

      「開かずの間」や「入らずの間」などを例に出す「化け物屋敷考」が面白い。民話などのもよく見られる「開けるな」や「見るな」のパターン二共通すると思われる。

 

  『妖怪のトポロジー』

  今回この本で一番興味深かった項目。

   「辻」

   この項目がかなり興味深く好きだった。

   辻について、詳しくいわれや名神、習慣などが記されており、わくわくしながら読んだ。

   ①辻には霊が集まりやすい所とされている。

   ②葬儀の帰り道の辻には白布を櫛にさして、のろいを持つかもしれない死霊が村落(家)に戻らないようにした。

   ③辻はあの世とこの世の境界と考えられ、石やお地蔵さんをおかれていることも多い。

   ④そこには辻神とか道祖神と呼ばれる神がいたので、未来を占ってもらうことがあった。

   ⑤辻占いなどが流行る。辻は人気が少なく、人の声が聞きたくて、うあら内を聴くといったことも心理的に働くのか・・・辻神にあの世を見せてもらおうとするのである。

   ⑥辻では霊魂を鎮めるための舞いや芸能が発達。『辻わざ』といい今の歌舞伎もその一つである。

   ⑦辻の真正面に家を建てると災いが起こる。

                         

   「橋」

   「境界線」

   「あの世とこの世」

   「地名と因果」 (静岡県産女野交通事故 他、古いいわれ)

   「七不思議」

   「置いてけ堀」

    (映画「妖怪百物語」(大映)「おいてけ~、おいてけ~」を思い出す)

 

  『都市の妖怪』

   歌舞伎でもおなじみの「累」や「皿(更地)屋敷」「四谷怪談」話は、ここで取り上げられていた。

   他にも現代(約17年前)の病んで入る事件が、心理学的及び民俗学的に取り上げられていた。特にホテルでの怪奇行動は偶然にしては陳腐な話が多い。

 

という四部構成から成り立っている。

 

 

 この本、夢中で読んでいたが、夜中に読んでいると結構怖かった。

 内藤正敏撮影のモノクロの見事な写真は、よくみるとどこか背筋が凍りつく怖さを感じさせるユニークさを持つ写真。

 数々の素晴らしい写真にも見とれ、とても楽しい時間を過ごすことができました。

 

 

 

 乱鳥の『宮田登』読書記録

 『冠婚葬祭』 ↓

http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/650b65fddd7f45402ae5b8c9552f0a62

 『近世のこども歳時記』 ↓

http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/6eca86c2f777e87971bedc71e7432b7d

 

 


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6 コメント

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Unknown (オオタ)
2007-08-07 14:31:53
興味深いですな。妖怪というと、水木しげるの鬼太郎を思い出しますが、ちと、幼稚ですかな?これが、結構、好きな分類の漫画でしてな。民俗学と水木しげるを同等に扱うのは、いけませんな。いや、失敬。
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Unknown (オオタ)
2007-08-07 14:35:23
写真の地蔵はムードがありますな。言われるように、境目から世界が変わっておりますな。何か出てきそうで、鳥肌が立つ思いです。いや、この季節に、肌寒い。(二重投稿、許してくだされ。)
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Unknown (maki)
2007-08-07 16:51:26
むずそう、、
だけど、
妖怪って、親しみやすそう、、
チョイ、カワイイ、感じ、、
妖怪って、幽霊とは、違うよね、、
幽霊て、いそうだね、、
妖怪は、こどもたち、
怖がらせるためなんじゃない?
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Unknown (乱鳥からオオタさまへ)
2007-08-12 01:00:14
水木しげる氏は深く研究なさっていて、結構忠実ですね。
柳田国男氏や宮田登氏の書かれている妖怪が、そのまま、水木しげる氏の絵と重なって、理解が深まることも時々あります。
実際に宮田登氏の本にも、水木しげる氏の画が何枚か挿入されておりましたよ。
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写真 (乱鳥からオオタさまへ)
2007-08-12 01:01:17
ありがとうございます・・・うれしいです
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はい (乱鳥からmakiさまへ)
2007-08-12 01:03:10
その考え方、結構、柳田国男氏に近づいてるかも・・・ですヨン
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