『海神(わだつみ)の島』
(池上永一著/中央公論新社)
「テンペスト」でおなじみの(再放送終了!)
池上さんの新作。
読了してしばらくたつのですが、
少し振り返ってみようと思います。
時代は現代。
主人公は沖縄生まれの三姉妹。
銀座の高級クラブのママ・汀(なぎさ)
若き水中考古学者・泉
地下アイドル・澪。
5億円相当の軍用地主であるオバアの遺言により、
相続の条件である「海神の秘宝」の謎を巡って
3姉妹は相続争いを繰り広げる。
舞台は東京、沖縄、福岡、日本各地。
さらにアメリカや中国、台湾など、
現代の基地問題、領有問題などもからんで
複雑に、しかしハチャメチャに(池上作品ですから!)
展開される物語。
そして、作中から感じる
これまでの池上作品のエッセンス。
(”北崎倫子”はもちろんのこと)
戦争(『ヒストリア』)に、
場天ノロの勾玉(『テンペスト』)に、
古代人(『黙示録』)。
こういうのは同一作者の本を読み続ける醍醐味でもありますね。
(テンペスト以前の本は読めてないけど、きっとあるに違いない)
それぞれ強烈すぎる個性を持つ3姉妹。
彼女らを取り巻く、また人間味豊かなキャラクターたち。
相変わらずの池上ワールドなので、
所々「うわぁ…(引)」となりつつも、
お宝探しの過程で出てくる
歴史学・考古学エッセンス、
水中考古のシーンには
わくわくドキドキして、
「ヒストリア」よりも没頭できました。
(過去に県博で開催された「水中文化遺産」展は
印象に残っている展示会の一つ!)
基地に関するくだりは、
一部「う~ん?」と感じる点もありましたが
最後まで読んで、なるほど言いたいことは分かった、と。
現代の諸問題における池上さんの主張、
メッセージが込められるなと感じました。
「私はアイデンティティに縛られて客観的視点を失うのが嫌なのよ。
物事を認識するときは、必ず複数の視点からアプローチするべきでしょ。
それが論理や化学というものよ。」
(P394 )
この本が出てすぐの頃、
新聞で池上さんのロングインタビュー記事が載っていたのですが
その記事も読んでみたくなりました(有料記事だったので未読)。
それを読めば、池上さんがこの作品に込めた
意図や思いがもっとわかるかもしれません。
今度図書館で探してみよう。