「陳侃 使琉球録」(原田禹雄訳注/榕樹社/1995)を読みました。
陳侃(ちんかん)は尚清王(尚真の息子)の冊封正史として1534年に琉球に来た人物。
その時の様子ややり取りが記録された本なのですが、
冊封使も大変だったのねーとか、
尚清王の気の遣いようがハンパない(笑)とか、
中国の書物にあった琉球記述について
自らの見聞をもって考察・ダメ出ししているというのも
当時の琉球の様子を知れて実に興味深いです。
で、その中に陳侃が冊封を終え明国に帰る途中、
台風に遭ってしまいます。
それはそれは大変な恐怖体験で、記述の中にも
「一刻も早く溺死して、この恐怖から逃れたいとさえ願った」
とあるほど。
そんな嵐の中、陳侃一行は不思議な体験をします。
いくつかあるんですが、うち2つを紹介すると
(1)
暴風の最中、紅い光が見え、まるで灯籠のように空から舟へやってきた。
→天妃(航海の神様)が現れた!と皆喜び、舟も事なきを得た。
(2)
突然、大海原を渡れるはずもない一羽の蝶が現れ、舟の周りを飛びはじめた。
また一羽の雀も現れた。
→ 危険が近付いているのでその知らせに違いないと悟り、その夜確かに荒れた。
という具合。
これ読んで思ったのが、
「…同じこと書いてる!!」でした。
実はもう2年前に書いてそのまま放置している(汗)、
創作短編小説の第3弾のプロローグがこれと似た感じなんです。
(もちろん「使琉球録」は全く知らない時のモノ)
全く一緒ではないのですが、
琉球から明国への航路途中、嵐、謎の光、蝶、というキーワードが一緒で……
面白い偶然
ということでなんだか嬉しく、というか、
懐かしい気持ちになってしまいました(笑)
というわけで、
ちょっとその部分を掲載してみます。
制作途中のまま2年も放置して
書こう書こうと思いつつも手つかずの代物なんですが
「人の目にさらしてしまえば何か変わるかな?」
との気持ちも込めて(笑)
――プロローグ――
先ほどまでの穏やかな波が嘘のように荒れていた。
風を頼りに進む船は為すすべもなく波にもまれ、
海面高く押し上げられたかと思ったら、その直後には急落下というありさまを繰り返す。
風にあおられた波しぶきが容赦なく船上の男たちに覆いかぶさってくる。
船体がミシミシと悲鳴をあげ、今にも壊れそうだ。
必死に船の縁につかまっている男が青ざめた顔で叫び声をあげる。
「泰期殿!ダメです!どうしようもありません!」
「伊良波!あがくでない!我らの命がここまでなら、天の定めに従うまでよ!」
怒号のように鳴り響く波音に負けじと、泰期は大声を張り上げた。
1372年、秋。
琉球から初めて、公式に明国へ渡る船が出発した。
1368年に明国を建国した洪武帝は、周辺諸国へ明国の傘下にはいるように使者をつかわした。
それは皇帝を頂点とした君臣関係で近隣諸外国をつなぎ、
国際平和を築くという思想に基づく、中華外交政策の1つであった。
明国の強大な力と国際情勢をいち早く察知した中山王・察度はその求めに応じることを決め、
弟である泰期を名代として明国へ派遣したのだった。
しかし…
気まぐれな自然は容赦なく琉球からの使者たちを翻弄していた。
「(くそ…っ!おそらく明国まであと一歩だというのに、ここまできて嵐に巻き込まれるとは…。)」
泰期は恨めしく黒い空を仰ぎ見た。
風は収まる気配もなく、いよいよ荒れ狂う。
まるで泰期たちの行く手を阻んでいるかのようだった。
「(天よ。俺を試しているというのか?俺が中山王の使者にふさわしいかどうか…!)」
―――と、その時、泰期の目に低い雲の隙間からぼんやりと光る白い光が降りてくるのが見えた。
「(……なんだ…?)」
その光はまるで蝶のような形になり、ひらひらと船に近付いてきた。
「(――……蝶…?…いや、このような海上でしかもこんな荒れた日に、蝶がいるはずもあるまい)」
しかし、その白い蝶の群れは荒れ狂う風と波をものともせず、優雅に船の周りを舞い飛んでいた。
まるで蝶の周りだけ、風が吹いていないようだった。
泰期はその不思議な光景に心を奪われ、その行く先を目で追った。
蝶は何度か船の上を舞い飛ぶと、船を誘導するかのように船先に飛んだ。
蝶の群れが一直線に並び、まるで船を先導する光の筋のように見えた。
その不思議な光景に、泰期は自らの置かれている状況をも忘れ、思わず船先に近づこうと蝶に向かって手を差し伸べた。
その時、
これまでにない高波が船を襲い、ぐらりと大きく船体が傾いた。
バランスを崩した泰期の体を、波が呑み込む。
「――泰期殿!!」
伊良波の声が波音にかき消される。
海水がどっと体内に流れ込み、
とてつもない水圧が泰期の身体を押し潰してゆく。
「(もはや、これまでか…っ!)」
遠のく意識を必死でつなぎとめようとする中、泰期は幻を見た。
蝶が髪をなびかせた女の姿に変わりゆく幻を…。
その女の髪が手に絡みつくような気がしたが、
それきり、泰期の意識は途絶えてしまった……。
これで「THE END」だったらウケるね(笑)
もちろんこれは「プロローグ」で、これから物語が始まるんだけどね。
以下、ラストシーンとか山場ごとにぽつぽつと書いてはいるのですが
「物語」としては虫食いだらけのほったらかし状態です。
(ワタシは場面ごとに台詞や描写を書いて、後でつなげて流れを整える派です)
基本、ラブストーリーべ―スだからなぁ~
泰期とある中国女性(実はのちの○○!)との恋模様。
(※原案は仲宗根FMよみたん社長です)
案と資料はあるから誰か書いて―(笑)
カテゴリは読書レビューにしとこ。
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