★現代版組踊舞台レビューについて
百十~MOMOTO~
2017年11月4日(土)・5日(日)
きむたかホール
出演/肝高の阿麻和利高校生メンバー・Team NEXT TAO
※今回のレビューは、ストーリーのネタバレを含みます。
土曜日の昼・夜公演、
日曜日の夜公演に行ってきました!
和々的泣ける現代版組殿堂入りのこの舞台。
現代版組踊で初めて落涙した初演から、
毎回必ず行っているので
(百十観劇は今回で10回目★)
そろそろ慣れてきてもよさそうなのです、が、
今回も泣かされました…。
土曜日の昼公演で涙ぼろぼろ、鼻水ぐしゅぐしゅ
客席にいるのでこれでも抑えてたつもりだけど、
もし周りに人がいなければ、
終わった頃にはティッシュ山盛りだったはず。
しょっぱなからこんなに泣かされるんだから、
もう一回は見ないといかん!
と、予定外だった土曜日の夜公演もチケット取ったもん(笑)
落涙ポイントは前回までのシーンはもちろん、
(カーテンコールでも泣けるって百十以外にない)
今回は、
王妃
の存在がとにかく大きかった…。
新キャラとして王妃(=百十踏揚の母)が出る、
ということは事前に聞いていて
(HPなどでも紹介があったし)
なるほど、
これまで以上に「母」に趣を置いてくるのね(ニヤリ)
とある程度読めてはいたのですが、
いやはや、
想像をはるかに超えていました。
まず、
王妃の出番、がっつり。
百十踏揚が首里に戻ったところでのやり取りは
思戸から全て王妃にチェンジ。
(思戸とは越来で再開)
百十踏揚の自殺未遂を身を挺して止めるのも
あなたのせいでない、と言いきかせるのも王妃。
そして傷心の百十踏揚に寄り添い、
「生きるのです」と励まし、指針を与えたのも王妃。
王妃自身、父である護佐丸を殺されており
身内を身内に殺されるという
大きな傷を抱えていて、
百十踏揚の気持ちは痛いほどに知っているからこそ。
金丸の進言によって、
百十踏揚の心の傷も癒えぬままに
再度賢雄に嫁入りさせることを決めた尚泰久が
そのことを告げに部屋に行ったシーン、良かった。
(尚泰久のあの内容のセリフがここで復活(笑))
賢雄への嫁入りの命を受け、
ショックを受ける百十踏揚、
抗議する王妃、
「お国のため、お国のためにと…
お国の前に、わらわたちの心が壊れてしまいます」
その抗議に対して
「そんなこと、わしも分かっておる!」
と一喝する尚泰久。
この3人の心のせめぎあいと葛藤が
痛いほどに伝わってきて。
最初に泣いたのはここでした。
嫁入りに反対の意を重ねる王妃に
業を煮やした尚泰久は王妃を"謀反人(護佐丸)の子"として
追放を命じる。
うわーーーーーん(涙腺崩壊)
抑える侍女たちを振り払い
百十踏揚にかけより最後の言葉をかける王妃、
縋りつく百十踏揚…。
「父上は私たちが憎くなってしまわれたのですか!」
尚泰久!ひどい!
…ということは到底思えず、
ただただ、3人それぞれの苦悩が伝わってきて。
「どうしてこうなってしまうのだ」
「家族の幸せを願わぬ父親などいるはずもないのに」
ほんとにね(´;ω;`)
そして幼い頃の百十踏揚と母との思い出の回想シーン。
楽しかった、母との思い出…。
これだけでも十分なのに、
たたみかけるように
今度は百十踏揚の越来への嫁入りシーン。
祝言を祝う越来の民たちの雑踏に混ざって
王妃が嫁入りの百十踏揚を見つめる。
百十踏揚は一瞬母を見た気がして、
雑踏の中を探すけれど
もうそこには母の姿はなくて…。
うわーーーーーーーん
(いかん、今書いてて思い出しても泣けてくる)
百十踏揚は辛い気持ちを持ちつつも、
母の強さと「生きるのです」という言葉を胸に
新たに進むことを決意する。
このシーン、
日曜日の夜公演を見た時は
尺が長くなっていました。
雑踏の中で母を見つけることはできないのですが、
簪?を拾い、母がいたことを確信する百十踏揚。
これまではそこでそのままハケていた母が
最終では、時が経ち百十踏揚は子を産み…という
次のシーン(演出)まで遠くから見守っていて。
娘を見守り幸せを願う「母」の想いが
より強く出ていました。
この王妃と百十踏揚のシーンは
母をテーマにした「にぬふぁ星」の曲で
一連の流れをつないでいました。
(にぬふぁぶし=北極星のこと、道しるべ)
この曲が、また泣かす。
歌詞もメロディーも歌声も、
すごくすごくきれいで
この曲抜きではこのシーンは成立しないほど
効果抜群でした。
百十のCD化、お待ちしております!
今回、この王妃とのシーンががっつり入ったことで
百十踏揚の傷心具合や賢雄との再婚との葛藤、
そして少しずつ立ち直っていこうとする
リアルな心の移り変わりが感じられて
とても良かったです。
前回までの展開も特に無理があったわけではなかったのですが、
今回は更に深みとリアリティが出た感じ。
+
最初の頃は小説「百十踏揚」の舞台化!
と言っていいほど小説そのまんまの印象が強かったですが、
今回の王妃とのやりとりはオリジナル脚本。
(小説では護佐丸討伐前に王妃は病死しています)
それからこれは初演からだけど
賢雄や百十踏揚の最期のシーンなど
小説にはないオリジナルの場面がどんどん入ってきて
しかもそれが物語の核になっていて、
もう小説の舞台化とは違うな、
もうオリジナルの「百十」になったな、
と思いました。
本当に、素晴らしいです
+ + +
百十踏揚は去年と同じくチヒロさんと、
去年肝高の阿麻和利を卒業したリサコさん。
どちらも安定の百十踏揚
お二人とも、去年よりも
「強い百十踏揚」になってると思いました。
強いというか、きっぱりしてるというか。
幼少期の百十踏揚と賢雄が登場するようになって感じたのは
やっぱり幼少期のおてんばお嬢様っぷりと、
大人になってからの麗しく儚いTHE姫というキャラクターや、
幼馴染として身分の差なく言い合ってた賢雄との関係のギャップ。
百十踏揚のキャラクター表現がより強くなったことによって
これらのギャップはだいぶ縮まってる印象でした。
賢雄との関係もフランクだったのが
夫婦になった後も随所に感じられ良かったです(^^)
賢雄と百十踏揚・思徳金一行との別れのシーンは、
幼少期の百十踏揚や賢雄の回想シーンで
「これから何があってもお前を守ってやるからな」
をリンクさせて☆
(小説ではここが泣ける!百十踏揚が賢雄に対して本当にわだかまりが溶ける所なの)
+ + +
そして、今回の特記事項。
日曜夜の、最終公演。
尚徳出た。
この1公演のみ!
この1公演だけ、実験的な試みなのか、
間に休憩も挟んでの2幕構成。
1幕のラスト、金丸のクーデター勃発のシーンで。
「おのれ金丸!」
「父(尚泰久)の恩を忘れたか!」
舞台上の人の発声ではなく、
舞台裏からのマイク発声(もしくは事前録音)。
え、え、えっ!?
この感じ、
このセリフ、
まさか、尚円王回顧譚!!??
中央には逆光で顔の見えない男が一人。
誰!?
金丸!?
えっ、うそ、
尚徳!!???
自害する尚徳。
そして、ライトダウン、緞帳が下りる。
・・・・・・(口あんぐり)
休憩に入り、会場が明るくなっても、
しばらく口開けたまま放心状態でした(笑)
マージーかー!?
(↑は帰ってからツイッターにあげたもの。
このイラストよりも、もっとあんぐり+放心って感じでした)
今度は尚円王回顧譚の再演を、と願っていて
その日のかっちんカナーのレビューでも書いてたばかりだったのに、
まさか、こんな形で再会するとは。
(台詞とか違うかもだけど、
回顧譚では舞台上にいたのは金丸で尚徳は出てないけど、
でもあれを彷彿とさせる感じでした)
これは完全に予想外でした。
見れて良かった。
マジでこれはラッキーでした。
尚徳!継続求む!!
ちなみに、この時の尚徳、
土曜日の百十踏揚役のちひろさんだったことをツイッターで知り、
二度度肝抜かれた、という後日談。
+ + +
賢雄はリョウ君一人で4公演、お疲れ様でした!
越来での祝言のシーンで
衣替え(頭巾)が行われたのも
阿麻和利の戴冠式のシーンみたく
按司になった感が出てよかったな(^^)
(そして隣に立つもやつれて元気のない百十踏揚…)
賢雄最期のシーンは、
現代版組踊シリーズの中でも特に好き!
私、この系統の死ぬシーンが好きなんだね。
(アカハチとかワカチャラとか、これ系)
賢雄の戦いのシーンは
賢雄は体をいっぱい動かして、
「コノヤロー!」とかの雄たけびもあり、
アンサンブルさんのメンバーも増え(たよね?)、
迫力満点!!
知花大親がソロで死ぬシーンも追加されてました。
(今回の百十、死ぬシーンめちゃ多い。未遂含む(笑))
三つ巴松明隊の踊り、好き!
(百十CD化の際にはこの曲も収録してほしい!)
ボーカルさんのコーラスが入るまでの
松明隊だけの演舞だけの所は
音的にちょっと物足りないから、
唸るとかなんかあるといいのかも、
と思ってましたが、
日曜日公演では、敵兵の男サンが
客席でうろうろしながら大声出しててよかったです
+ + +
他にも細かい変化は色々あったのですが、
今回は大きい変革がありすぎたので
これくらいにしておきます。
やっぱり、この舞台は私にとって特別な作品です!
今回もばっちりデトックス・涙活させていただきました!
ありがとう百十~MOMOTO~!
次回も楽しみにしています
137