博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『清国文明記』

2006年05月13日 | 中国学書籍

宇野哲人『清国文明記』(講談社学術文庫、2006年5月)

著者の宇野哲人は中国哲学の泰斗です。もともとの書名は『支那文明記』といい、明治39年(1906年)から41年(1908年)にかけて著者が北京、山東、長安、江南の諸地域を旅行してまわった際の見聞記です。

まだ最初の北京の部分しか読んでませんが、名所旧跡の紹介だけではなく当時の北京の街並みや人々の様子なども割と詳しく記録しています。例えば当時の通貨は馬蹄銀や銅銭・銀銭に加えてメキシコ弗(ドル)や仙(セント)といった外国の通貨も通行しており、両替が極めて煩瑣であったこと、当時からスイカやカボチャの種をおやつに食べる習慣があったこと、当時は青天のもと路地でしゃがみ込んで用を足す人が多かったことなどを記述しており、名所旧跡の紹介よりもこっちの方が却っておもしろく読めます(^^;) また当時は義和団事件の衝撃がまだ冷めやらぬ状況であったらしく、義和団事件の影響に関する記述も多いです。

名所旧跡については、京師大学堂(現在の北京大学)の創設や科挙の廃止、西洋の学問の流行が影響して、国子監や貢院が閑散としていたことが興味深かったですね。また頤和園なんかも中を見回っていますが、よく考えたら当時はまだ頤和園の主である西太后が在世しているんですよね。今みたいに入場料を払って見学というわけにもいかないだろうにと思いきや、どうやら特例で見学が許されたみたいです。

また長安の旅では中国史学の泰斗、桑原隲藏と同行し、桑原隲藏の方は『考史遊記』(岩波文庫、2001年)にその時の旅の様子を記録しているとのことです。こちらの本も持っていることは持っているのですが、実は以前に途中まで読んでそのまんまになってます(^^;) 『清国文明記』を読み終えたらこちらもちゃんと読まないといけませんなあ……

コメント
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