博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『人物を読む日本中世史』

2006年05月24日 | 日本史書籍
吉梨さんのブログによると、『陸小鳳伝奇』1~2は昨日の晩にはAmazonで注文できる状態になっていた模様。お前は大学生協に注文するのを1日2日辛抱できなかったのかとツッコまれそうですが…… まあ、ブツが届くまでの1~2週間、他の本でも読みながら待つことにします。

で、今月の面白かった本第二弾。

本郷和人『人物を読む日本中世史』(講談社選書メチエ、2006年5月)

話は変わりますが、以前に中国の小学校で使われている歴史教科書を読んだ時に感心したことがひとつあります。それは前近代の歴史の部分では、秦の始皇帝や孔子などの人物の事績を中心にまとめられているということです。日本でも、特に小学校の歴史教科書は各時代の政治家や文化人などの人物の事績を中心としたものにすれば、随分と面白い物になるんじゃないかと思いました。(もちろんそこは中国の歴史教科書でありますから、イデオロギーの面では非常にアレな記述が目立つわけですが……)

で、今回紹介する『人物を読む日本中世史』はまさにそういった発想で書かれた日本史の入門書で、源頼朝や足利尊氏、織田信長といった人物の生涯や事績を読んでいくことで日本の中世史の流れを理解できるという仕組みになっています。

文章の方も非常にわかりやすく、戦国大名が上洛して天下統一を目指していたなんていうのは、ゲームの中だけの話だとか、鎌倉幕府というのは武士の、武士による、武士のための機構であって、民衆をどのように統治するかなんてことはあんまり深く考えていなかったが、長い時間をかけて積極的に民衆を統治しようという意思と、統治のための技術を獲得していったという指摘は面白かったです。
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『コメを選んだ日本の歴史』

2006年05月24日 | 日本史書籍
早稲田出版から発売になっている『陸小鳳伝奇』第1~2巻ですが、書店では見掛けず、Amazonでは品切れで注文できない状態が続いていたので、月曜日に大学生協の書店で注文してしまいました。ブツが届くまで1~2週間かる見込みですが、今月は『清国文明記』『ハリポタ』以外にも色々と面白そうな本が出てるので、それを読みながら届くのを待つ所存です。

というわけで、近日出た本の中で面白かったもの第一弾です。

原田信男『コメを選んだ日本の歴史』(文春新書、2006年5月)

農耕が始まった縄文晩期・弥生時代から現代に至るまでの食の歴史を振り返り、なぜ米が日本人の主食として特別な存在となったのかを考察した本です。

米を主食としている地域は日本の他にもあるとは言っても、他の地域では稲作と豚や鶏などの家畜の飼育がともに行われており、日本で魚肉以外の食肉が長らく忌避されてきたのは極めて特殊であるとか、日本人が思うままに米が食べられるようになったのは高度経済成長期のことで、日本人は米食民族ではなく、米食を悲願してきた民族であると言うべきだとか、面白い指摘が多いです。

結論としては、米が特別な食物となっていったのは、民衆の意思というよりは、古代以来の支配者の要請によるものである、言い換えれば、日本の歴史とは米を神聖視する人々が古代以来多数派を形成していき、狩猟や漁労、焼畑農耕を生業とする人々を服従させていった過程であるということになります。

この結論を受け入れるかどうかは別としても、稲の品種や起源地に関する議論、日本での稲作の受容といった基礎知識部分が要領よくまとめられているので、稲作に関する参考図書としても利用価値のある本だと思います。
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