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スギノアカネトラカミキリ 防除方法

2018年05月13日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)に関する今回のお話は、第3部「防除」・第4章「防除方法」について。

  防除方法について言えば「枝打ち」が必勝法です。

 しかし、木材価格の低迷から、行いたくても行えないという状況にあり、この必勝法が使えないというのが現状です。

 

 アカネの訪花行動を利用し、「誘引剤」で捕殺するという研究も行われ、誘引剤が商品化されましたが、今では農薬登録もされておらず、実質的には使えません。

 誘引剤も欠点があり、専用の捕殺するトラップを設置し、それを維持管理しないといけないので、広大な林地では現実的な対策とは言えません。

 また、枯れ枝に近いある程度の高さに設置しないと捕殺効率も悪くなります。

 何より、枯れ枝から脱出してすぐに交尾産卵ができるアカネにとって、真っ先に訪花するとは限らず、産卵後に捕殺される可能性もあります。

 被害をある程度抑制できるかもしれませんが、その効果は不明確ではないかと思われます。

 

 被害を受けにくい品種や樹幹注入など薬剤防除といった試験も取り組まれましたが、実用化まで至っていません。

  ※樹幹注入試験について → https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/127/0/127_579/_article/-char/ja/

 あと、天敵である「アシブトクロトガリヒメバチ」、「クロアリガタバチ」という幼虫に卵を産みつける寄生バチもいますが、これも決定的ではありません。

 

 やはり、産卵場所となる枯れ枝をなくす「枝打ち」が有効と言わざるを得ません。

 昔のような良質材生産を目的とした枝打ちではなく、被害を防ぐ「枯れ枝打ち」が望ましいと思います。

 

 そこで、アカネの被害を防ぐことを目的とした枝打ちのご提案です。

 アカネが産卵する枯れ枝は、枯れてから2年とされているので、枯れ枝の発生を確認してから2年以内に枝打ちを行います。

 そして、枝打ちの対象は、間伐対象外となる残存木のみとします。

 このときの枝打ちは、枯れ枝のみでも良いですし、生枝を枝打ちしても良いと思います。

 できれば、最初の枝打ちで、4~5m高までの実施を目標にします。

 少なくとも、アカネの被害がない、死節などの欠点も少ない元玉が確保できると思います。

 ちなみ5mとしたのは、シカの剥皮に備えて、地上高1mの部分を捨てる事も想定しています。

 初回間伐後に枝打ちを行うことで、被害を受けることなく、約4mの元玉を確保出来た事例もあります。

 枯れ枝の発生と初回間伐の時期が重なると、理想的かなと思います。

 ただ、枯れ枝が多い環境で、光環境が改善されると、アカネの好む環境になるので、間をあけずに取りかかることが望ましいと思います。

 

 そして、アカネが好む立地条件(西向き・西南向き斜面、乾燥気味の劣悪な土壌、尾根筋)への植林を避けるのも1つの選択だと思います。

 そもそも、アカネが好む立地条件は、スギやヒノキの植林地として適しているのか、という点でも疑問があります。

 拡大造林時代は、劣悪な環境でもスギやヒノキを植えましたが、今の時代には合わないので。

 

 アカネの防除は、やはり枝打ちです。

 ただし、「良質材生産を目的とした枝打ち「ではなく、「アカネ被害の防止を目的とした枝打ち」という施業があってもいいのではないかと思います。

 施業時期も、「初回間伐と同時に行う」または、「初回間伐後、直ちに行う」。

 特に、まだ間に合う、若い林分では非常に重要な施業になると思います。

 採算が合わないことが多い林業で、目の前の課題に手一杯ですが、将来の資源となる若齢林の育林に取り掛かることも重要だと個人的には考えています・・・それは、きっと、将来の問題になるから・・・。

 その前に、「枝打ち」という施業ができる技術者が、果たしてどれくらいいるのか・・・、こっちの方が問題かも。

 下手な枝打ちは、材の変色を起こして、アカネの被害どころか、人害になってしまう。。。かもしれない。

 

 それと、キツツキがアカネの幼虫を食べてくれます。

 残念ながら防除になるとは言い難いんですが・・・。

 キツツキとアカネに関するお話は、こちら ☞ スギノアカネトラカミキリ(アカネ材) 天敵防除

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