皆伐が行われた後の山では、再び、木(苗)を植栽します。
植栽する樹木の種類は、目的によって異なります。
木材生産が目的なら、スギやヒノキなどの針葉樹。
薪や炭の生産を目的とするなら、カシ・ナラ類。
水源涵養や土砂崩れの抑制など公益的機能の発揮が目的なら、根を深く張る深根性の樹木。
景観やレクリエーションが目的なら花や紅葉が楽しめるサクラやモミジなど。
・・・がオーソドックスではないかな~と思います。
皆伐された場所には、伐り捨てられた材や不要だった材、枝条が残されており、これらを総称して、林地残材と言われています。
林地残材は、はっきり言って、植栽作業や移動の邪魔になります。
この林地残材を整理し、片付ける作業のことを「地拵え(じごしらえ)」と言います。
←地拵え前
←地拵え後
皆伐から2年、3年、4年と時間が経過してしまうと、林地残材のほかに、灌木やつる類などが繁茂するため、それらも取り除かないといけません。
そこで、皆伐後(伐採後)、直ちに植栽作業に着手することができれば、灌木やつる類が繁茂する前に植栽作業を終えることが出来るだけでなく、地拵えの手間も増えません。
これは個人的な見解ですが、皆伐後直ちに植栽すると地拵えが省略できる・・・というわけではなく、皆伐から植栽作業の着手までに時間の経過が長くなれば長くなるほど、地拵えの手間が増える、という認識の方が正しいと僕は思います。
それと、バイオマスなど燃料材に使われるから、木は全木集材で、皆伐跡地には林地残材がない・・・みたいな認識(解釈?)をもっている方(主に行政の方に多いですね。)もいますが、全ての現場がそんな都合のいい現場になっていません。
地拵えは、伐採地に残された伐倒木や枝条を整理し、再び、木(苗)を植えられるよう、林地を整理する作業です。
地拵えの目的は大きく分けて2つ。(各書物に書かれている表現を少しアレンジしてます。)
①植栽作業の安全を確保し、作業効率を向上させること。
②植栽木の競争相手になる植生を除去すること。→ 植栽木の活着と成長の促進に繋がる。
この2つの目的を達成するために、地拵えを行います。(ちなみに、僕は特に①の”安全”を重視しています。)
そのため、「無地拵え」や「一貫作業による地拵えの省略」という方法を採用するときは、この2つの目的が達成できるか否かを考えることが重要ではないでしょうか。
他の植生が生える前に植栽するから無地拵え・・・。
植栽に支障がないから無地拵え・・・。というのは、少し「?」な判断だと、個人的には思います。
植栽作業が安全に行えるか否か。の検討が第一ではないでしょうか。
安全に作業できるから、植栽作業の効率化も図れるのではないでしょうか。
地拵えを省略できれば、確かにその分の費用は抑えられます。
その代わり、植栽コストは上がるかもしれません。
しかし、トータル的にはコストが下がるから地拵えはしないという、コスト縮減に偏った判断はナンセンスです。
その判断は、植栽作業に従事する作業員が安全に働けるための環境整備を怠り、ケガや事故が起こるリスクを現場に押しつけた、ということに繋がるように思います。
上述した地拵えの2つの目的が果たせているか否かの判断が乏しいまま、無地拵えという条件で植栽の公共事業を発注したり、補助事業の要件になっているものは、改めて検討した方がいいんじゃない?、と個人的に思いながら、要綱を見たり、書類を作っています(^_^;)。
林業は労働災害が多い産業です。
しかも、昔から今に至るまで、労働災害の発生率が改善していない産業です。
山で作業する人達の安全を第一に考えるべきであり、コスト縮減を第一に考えた無地拵えによる公共事業の発注や補助事業の要件って、どうなの?って、思わずにはいられません。
地拵えを行うと、こんなメリットがあります。
①植栽作業の安全性が向上する。
②植栽作業の効率が上がる(作業が捗る)。
③その後に行う下刈りやつる切りなど保育作業の安全性が上がる。
④下刈りやつる切りなど保育作業の効率が上がる(作業が捗る)。
植栽だけではなく、その後に続く、下刈りやつる切りなど保育作業の安全や効率にも影響を与えます。
ということは、安全性の評価をせず、コスト縮減第一主義による無地拵えは、植栽だけでなく、下刈りやつる切りなどの安全面にも影を指すことになります。
コスト縮減は大事です。
でも、一番大事なことは、山で働く人たちの安全です。
その考えを隅に置き、怠るような判断の下、無地拵えの採用はナンセンスだと思います。
地拵えの目的は、
①植栽作業の安全を確保し、作業効率を向上させること。
②植栽木の競争相手になる植生を除去すること。→ 植栽木の活着と成長の促進に繋がる。
これらの目的が、達成されるか否かが、無地拵え採用の判断基準ではないかと、僕は思います。
ちなみに、上記の目的は、林業技術ハンドブックなどの書物に、普通に書かれていることで、最新のことでも、珍しいことでも何でもなく、昔から、書籍に書かれています。(安全に関する部分は、書物によって、書いてあったり無かったりですが・・・。)