はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

広葉樹の林内樹形

2021年05月13日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 広葉樹の森。

 環境に良くて、災害に強いというイメージを持つかもしれませんが、「針葉樹だけの森」より良い・強い。ってだけで、広葉樹さえ植えれば、良いという訳ではなく、スギやヒノキの人工林同様、手入れは必要です。

 

 植栽した広葉樹林かどうかは、分かりませんが、ある日、ヒョロっとした広葉樹林に出会いました。

 基本的に、森の中に生育する樹木は、一定のエリアに生えている本数が多い(本数密度が高い)とヒョロっとした樹形になります。

 大雑把な表現になりますが、イラストにすると、次のような感じです。

 左は、本数が多い場合。

 右は、本数が少ない場合。

 

 本数が多いと言うことは、隣り合う樹木の間隔が狭い。

 本数が少ないと言うことは、隣り合う樹木の間隔が広い。

 

 隣り合う樹木の間隔が狭いと言うことは、枝を十分に広げられないので、葉っぱの量も少なくなります。

 葉っぱの量が少ないと言うことは、光合成の生産量も減少し、結果、幹は太らず、細い幹になってしまう上、根っこにも十分な栄養が行き届きません。

 

 一方、隣り合う間隔が広いと言うことは、枝を十分に広げられ、葉っぱも多く着けることが出来ます。

 葉っぱの量が多いと言うことは、光合成の生産量も増え、結果、幹が太り、根っこにも十分な栄養を届けることが出来ます。

 

 本来の広葉樹は、「この~木、なんの木、気になる木~♪」で有名な日立のCMソングに出てくるような樹形を理想としています。

 日立CM この木なんの木 HITACHI

 

 さて、「広葉樹の森を作るゾ!」という行動を起こすにあたって、一番大切なことは「目的」です。

 

 広葉樹の資源を利用した森を作る場合、漠然とした利用ではなく、建築材に利用するのか、キノコ原木に利用するのか、薪や炭などの燃料に利用するのか、製紙用チップに利用するのか、家具に利用するのか、などなど「資源の利用目的」によって、植える樹種はもちろんのこと、森を作るための施業方法も変わります。

 一方、資源利用ではなく、山崩れが起こりにくい森にしたい、観光やレジャーで楽しめる森にしたいなど、環境思考的な「森林の利用目的」も同様です。

 

 資源利用を目的とした場合、基本は、本数密度が高い(樹木同士の間隔が狭い)方が有利です。

 

 それは、次のような利点があるから。

 ・幹の根元の直径と先の直径の差が少ない木材(完満材)に育つので、歩留まりが良い。

 ・枝があまり大きく広がらないので、伐採時に出来る枝条のゴミが少ない。

 逆に、欠点としては、

 ・健康とは言えない樹木の集団になるため、根の発達に不安があり、山崩れを防ぐ能力も万全とは言えない。

 

 スギやヒノキの人工林同様、本数密度が高い広葉樹の森林も間伐によって、本数密度を下げることで、樹木の成長・林冠の広がりをコントロールする必要があります。

 しかし、スギやヒノキと異なり、広~く枝を張りたい広葉樹は、樹木の間隔を広くして欲しい!と、願っています。(たぶん。)

 

 いずれにしろ、植栽した広葉樹も人工林なので、森づくりの「目的」に応じて、お世話をする必要があります。

 環境林的な目的で、広葉樹の森を育てたい場合、上のイラストのように、枝が広げられる空間を確保してあげることが、基本となります。

 資源利用を目的とした場合、利用目的、収穫時の効率、伐採後の片付けなども考えながら、生産者の都合や目的に応じて、コントロールする必要があります。

 

 木材も利用しつつ、環境に貢献できる広葉樹の森を作りたいな~・・・という場合。

 例えば、6mの広葉樹材を確保する!という目標を設定した場合、イラストのように、一番下にある大きな枝の位置を、地上から7~8mくらいの位置になるようコントロールするといいと思います。

 

 必要とする広葉樹の木材を確保した上で、健康的な広葉樹を育てることが可能になります。

 その代わり、樹木の本数密度は低いので、歩留まりが悪く、面積に対しての収穫量も少なくなります。

 あと、枝葉の量も多いので、処理が大変・・・。枝葉を使うにしても、使わないにしても・・・。

 

 あくまで、広葉樹の基本的な、学問的な特徴によるお話ですが、理解しておいた方が、森づくりのイメージを描けるし、何より応用力が身に付きます。

 さらに、地形や方位など現場の環境条件の加わってくるので、スギやヒノキのようにはいきません。

 

 実は、今回、潜伏芽(せんぷくが)とか、ここに書かなかった広葉樹の特徴もあります。(それは別の機会に。)

 

 伝えたかったことは、広葉樹をコントロールして、森林として仕立て上げるのは、難しいぃ~。ということです。

 僕がよく講義の中で、「針葉樹は犬。広葉樹は猫。」という例え話をしています。

 それは・・・、猫のしつけは、犬のしつけより難しいってことです。