ミャンマーだったかラオスだったか忘れたが、
その辺りをロケしたＶＴＲの中に、
空から撮った映像があった。

しかし、ヘリを飛ばして空撮するほど金のある番組ではない。

あの映像はどうやって撮ったのかディレクターに尋ねると、

「現地でラジコンヘリを持っている人を探して、
　ラジコンヘリにカメラをつけて飛ばしてもらったんです」

現場に行ってみたら俯瞰の画を撮れる場所がなかったので、
急遽、この手を考えたのだそうだ。

ハードな海外ドキュメントを手がけるディレクターは逞しい。
残念ながら、国内でタレントロケばかりしているディレクターには、
こんな臨機応変な動きはちょっとできないのではないか。

ある番組の企画で、
アニメ番組の映像を借りようという話になったら、
あるディレクターが、
「アニメは高い」
としきりに繰り返す。

確かにアニメ番組の映像を借りるのには金がかかるし、
作品によっては高いものもある。
だが、そこまで「高い！」と主張するほどでもない。

以前、アニメ番組の映像を使った時、
びっくりするほど金がかかったと語るそのディレクターの話を詳しく聞くと、

曰く「◯秒×万円のところを◯秒から数秒オーバーして、追加料金を請求された」
曰く「映像にテロップなどを入れてはいけないと言われたのに、テロップを入れて罰金を請求された」

高かったのは、自分のせいじゃん。

「トリガー」

最初、聞き間違いだと思った。
ある会議でのことだ。
ペットの話をしているところだった。

「トリガー」

その人は繰り返し、そう言った。

トリマーじゃないのか。

それでもまだ聞き間違いかもしれないという思いだったが、
その人が提出したネタを見て驚いた。

「トリガー」

そう書かれていたのだ。

トリマーとトリガー。
どこでそんな覚え間違いをしてしまったのか。

できることなら、
間違っていることを教えてあげたいが、
僕より年長の人なのでなかなかできない。

誰か教えてあげて下さい。

悪筆で有名なベテラン放送作家がいる。

彼がまだ駆け出しの頃の話だそうだ。

侍が出てくるコントを書いた。
その中にこんなト書きがあったそうだ。

「侍、魚を抜く」

敵と戦う場面で、
刀ではなく魚を抜くのだ。

意味不明だ。

その意味不明さに、
「あいつは天才だ」と評判になったそうだ。

だから彼は言い出せなかった。
本当は「魚」ではなく「刀」と書いていたことを。

彼の悪筆で書かれた「刀」という文字を
みんな「魚」と誤読していたのだ。

それにしても、
どう書いたら「刀」を「魚」と読み間違えられるのか。

近所の回転寿司屋に行った。

とんかつののった軍艦巻きとか、
いろいろ変わったものがあるが、
その中に気になる一品が。

「手作りハンバーグ巻き」

小さなハンバーグがのった軍艦巻きだ。

そんなジャンクな寿司で「手作り」をウリにしなくても。

そもそもあの小さなハンバーグ、
本当に手作りなのか？

疑惑が残ったのだった。

ビルの解体作業に携わる人から聞いた話だ。

古い病院を改修するため、
建物の一部を壊すことになった。

解体作業を進めていると、
基礎のあたりから人骨が見つかったという。

事故で亡くなったのか、
それとも意図的にそこに隠されたのか。

いずれにしろ、
病院が建てられた頃の話には違いないのえ、
真相はわからない。

彼曰く、
「古い建物を壊しているとしばしばこういうことがある」

今さら警察に届けたところで、
その人骨が誰なのか、
なんでそんなところにあったのか、
いずれもわかるはずもなく、
いろいろと面倒になるだけなので、
そのまま埋め戻したという。

桜の木の下には屍体が埋まっているが、
ビルの下にも意外と屍体は埋まっている。

掃除のバイトをしていた知人から聞いた話である。

彼の働く会社には、
夜逃げした人の部屋を片付ける依頼が来ることがあった。

その日、彼が派遣されたのは、
住人が夜逃げした古いアパートの部屋の片付けだった。

なんでも夜逃げしたのは東南アジア人だったという。

部屋に入ると異臭がした。
臭い。
とても臭い。

臭いの原因を探す。

その中で冷蔵庫を開けた。

冷蔵庫の中はほぼ空だったが、
一番下の引き出し部分に何かが入っていた。

ビニール袋に入っていた赤黒い何かだ。

それが臭いの原因だった。

その赤黒いものが何かわからない。
怖くなった彼が中身を確認せぬまま捨ててしまったからだ。

「こんな塊が入っていたよ」

話してくれた知人は、
胎児のようなポーズをした。

本当に袋の中に胎児が入っていたのかわからない。
単に腐った肉が入っていただけかもしれない。

でも正体がわからないからこそ、
怖い感じは今なお続いているのだ。

飲み屋で、
隣の席の客が間違ったことを話しているのが聞こえてくると、
気になって仕方ない。

昨夜も、

「『もしもドラッカーが高校野球のマネジャーになったら』ってあったじゃん」
「ドラッカーって誰？」
「なんか経営学の本を書いた人だよ。AKBで映画になっただろ」

タイトルが間違っているのはさておき、
うっすらとドラッカーがどんな人か知っているようだ。

じゃあ、彼の頭の中では、
この小説はどんなイメージなのか。

オジサンが野球部のマネージャーをやっているイメージなのか。

だとしたら、前田敦子は何役で出てくるんだ？

早く間違いに気づいてほしいものである。

工事現場で働いていた人から聞いたという話の又聞き。

マンションなどの基礎を造るため、
コンクリートを流していると、
そこに猫が飛び込むことがあるのだという。

なんで猫がそんな無謀なことをするのかわからない。

でも、時どき、飛び込むのだという。

かわいそうだが、
そうなってしまうともう助けることができない。

コンクリートの中に沈みゆく猫。

マンションの下には猫が埋まっている。

都市伝説的なものかもしれないけれど。