「お苦手なものやアレルギーはございますか」
コースやおまかせで料理を頼んだ時、そう尋ねられることがある。
ありがたい気遣いだが、僕はいつも答えに窮してしまう。
「お苦手なもの」が多いからである。
寿司屋であれば、まだ気は楽だ。
苦手なのは生の貝類とイクラなどの魚卵。これは答えやすい。
しかしこれが、割烹やフレンチ、イタリアンなどになると、答えるのが難しくなる。
僕の「お苦手なもの」は、魚介類以外だと、野菜はブロッコリー、カリフラワー、茄子、オクラ。
肉はレバー。納豆もダメである。
アレルギーならば堂々と断ることができるが、どう見ても単なる好き嫌いだとわかるラインナップである。
そもそも、これらの食材が今日の料理に使われるかどうかもわからないわけだし。
結局いつも「ありません」と答えてしまう。
するとたいてい、一つか二つ「お苦手なもの」が出てくる。
苦手なものはないと言ったにも関わらず残すのは失礼だと思い、そういう時は、なるべく噛まずに飲み物で流し込むようにして食べる。
実はこの程度のことは、さして苦でもない。
辛いのは好意で出してくれた時である。
以前、近所の寿司屋に一人で入った時のことだ。店主と話すうちに、僕と同じ高校出身であることがわかった。
彼の方が年上だった。
だから後輩の僕にサービスしてやろうと思ったのだろう。
「これよかったら」
目の前に小鉢が出された。
そこには山盛りの茄子の漬物があった。
鮮やかな紫の茄子。お好きな人にはたまらない色合いだろう。
だが、苦手な茄子の料理の中でも、僕がもっとも苦手なのが漬物なのだ。
なぜ高校の話なんかしてしまったのだろうか。
十数分前の自分を悔いながら、茄子を口に入れる。
ビールで流し込む。
茄子。ビール。茄子。ビール。茄子。ビール。
なんとかすべて茄子を食べ終えた時には、もうお腹はいっぱいだった。
その後、ほとんど寿司は食べずに帰った気がする。
コースやおまかせで料理を頼んだ時、そう尋ねられることがある。
ありがたい気遣いだが、僕はいつも答えに窮してしまう。
「お苦手なもの」が多いからである。
寿司屋であれば、まだ気は楽だ。
苦手なのは生の貝類とイクラなどの魚卵。これは答えやすい。
しかしこれが、割烹やフレンチ、イタリアンなどになると、答えるのが難しくなる。
僕の「お苦手なもの」は、魚介類以外だと、野菜はブロッコリー、カリフラワー、茄子、オクラ。
肉はレバー。納豆もダメである。
アレルギーならば堂々と断ることができるが、どう見ても単なる好き嫌いだとわかるラインナップである。
そもそも、これらの食材が今日の料理に使われるかどうかもわからないわけだし。
結局いつも「ありません」と答えてしまう。
するとたいてい、一つか二つ「お苦手なもの」が出てくる。
苦手なものはないと言ったにも関わらず残すのは失礼だと思い、そういう時は、なるべく噛まずに飲み物で流し込むようにして食べる。
実はこの程度のことは、さして苦でもない。
辛いのは好意で出してくれた時である。
以前、近所の寿司屋に一人で入った時のことだ。店主と話すうちに、僕と同じ高校出身であることがわかった。
彼の方が年上だった。
だから後輩の僕にサービスしてやろうと思ったのだろう。
「これよかったら」
目の前に小鉢が出された。
そこには山盛りの茄子の漬物があった。
鮮やかな紫の茄子。お好きな人にはたまらない色合いだろう。
だが、苦手な茄子の料理の中でも、僕がもっとも苦手なのが漬物なのだ。
なぜ高校の話なんかしてしまったのだろうか。
十数分前の自分を悔いながら、茄子を口に入れる。
ビールで流し込む。
茄子。ビール。茄子。ビール。茄子。ビール。
なんとかすべて茄子を食べ終えた時には、もうお腹はいっぱいだった。
その後、ほとんど寿司は食べずに帰った気がする。