雨の朝。
駅に向かっていると、
目の前をカップルが歩いていた。
二人でひとつの傘。
彼のさすビニール傘だ。
彼女が濡れないように配慮か、
それとも愛しさからか、
彼の腕が彼女の腰を抱いている。
見ると、
彼女の手には傘。
彼のビニール傘よりも高そうな傘。
傘を持っているなら、
二人それぞれさした方が濡れない。
でもそれは大人の理屈で、
恋をする二人にはそんな合理性など関係ないのかもしれない。
だけど、ほんとのところ、彼女はどう思っているんだろう。
心のどこかにその手の傘のことが引っ掛かっているのではないか。
私、傘、持っているのに・・・。
たぶん、そのうち二人はそれぞれの傘をさす。
その方が濡れないからだ。
それはどう始まるのだろう。
彼が彼女を自分の傘に入れるのを止めるのか、
それとも彼女が先に自分の傘を開くのか。