昨夜の『世界の何だコレ!?ミステリー』で、
“文福”に興味を持たれた方へオススメしたい本。
『犬が看取り、猫がおくる、しあわせのホーム/石黒謙吾』
番組では、その性質上、
不思議な能力を持つ文福だけを取り上げましたが、
文福のいる「さくらの里 山科」という施設そのものが、
実は素晴らしい施設です。
そんな「さくらの里 山科」の現在を取材した一冊。
(番組では紹介できなかった文福のエピソードも出てきます)
同時にペットを巡る現代の諸問題に関して、
考えるきっかけとなる一冊でもあります。
ぜひ。
役者は台詞の意味を考えて、それを演技に活かす。
翻訳劇によく出演している俳優の話だ。
彼は台詞の意味を考える時、
その戯曲がどのようにして作られたものかを調べるという。
最近の欧米の戯曲には2種類あるそうだ。
劇作家がひとりで書いたものと、
役者たちとのワークショップを経て作ったもの。
前者の戯曲の場合、
台詞ひとつひとつに劇作家の意図=意味がある。
一方、後者の場合、
現場のノリで生まれた台詞も多数含まれている。
だから前者の戯曲の場合、
とことん意味を追求して演技をするけど、
後者の場合は、考えてもわからない時は、
深く考えるのをやめてノリで演技をするそうだ。
なるほど。
■2023年6月3日。
8回目の打ち合わせ。
僕が作成した構成案(第一稿)をもとに打ち合わせをする。
直前まで全体像は見えていなかったのだが、遡ること3日前、
1日半の休暇で箱根に行った際、金時山を登りながら考えていたら、
今までバラバラだったブロックの繋がりが見えてきたのだ。
山道の途中で立ち止まっては、スマホにメモをした。
■2023年6月28日。
9回目の打ち合わせ。
毎回最後まで悩むのがエンディング。
今回は、この日の打ち合わせでエンディングの概要が出来た。
ただし、オープニングと呼応するラストが決まったのは、
もう少し後のことである。
■2023年8月12日。
10回目の打ち合わせ。
ノートには「意識高い系」「ディズニー」などの書き込みがある。
古舘さんが新たに考えた要素だったようだ。
■2023年8月19日。
初めての立ち稽古。
実際は座ったまま大量の書き込みがなされた台本を読むかたちだった。
そうすることで現状の上演時間が判明。
長すぎるのでネタをいくつかカットする。
■2023年8月26日。
2回目の立ち稽古。
台本を放して、最初から通してみる。
目標の上演時間は1時間50分。
まだ長かったので、何箇所かカットする。
■2023年8月27日。
舞台スタッフも参加しての通し稽古。
以上が、9月公演の制作状況でした。
『古舘伊知郎トーキングブルース「現代の信仰」』
9月公演までの制作過程を記録しておきます。
■2022年12月27日。
最初の打ち合わせ。
古舘さんから次回のテーマは「宗教」もしくは「仏教」でやりたいと提案。
方向性はいいとして、テーマを表す他の言葉はないかと話し合う中、
「信仰」「推し」というワードが出てくる。
■2023年1月14日。
2回目の打ち合わせ。
前回出たワードや参考資料を読んで古舘さんが考えたことを話してもらう。
「ビーガンという信仰」は、この時点でもう出ていました。
■2023年1月30日。
作家、ブレーンを集めての初めての会議。
この時のブレストで「推し活を体験する」「陰謀論を信じている人を演じる」
といった今回の大ネタのアイデアが出る。
■2023年2月18日。
3回目の打ち合わせ。
前回の打ち合わせ後に古舘さんが考えたことを話してもらう。
とりあえず色々と要素を出す段階。
ノートを見る限り、この時に出たネタで、本編に残ったものはゼロ。
■2023年3月11日。
4回目の打ち合わせ。
前回から今回のあいだに、本編にも出てきた「推し活をしている女性」への取材を行った。
本編ではIVE推しの女性の話だけだったが、パンダ推しの女性にも話を聞いた。
パンダ推しの話も面白く、立ち稽古の段階までは残っていたが、
上演時間の関係で最終的にカットになった。
■2023年3月12日。
2回目の全体会議。
【神々のインフレ】【カジュアル化する宗教儀式】と名付けられたブロックのネタ出し。
「聖地巡礼」「神社のポイ活」など、この時に出たネタで本編に活かされたものは多い。
実はこの時のブレストで一番盛り上がったのは「マスク信仰」についてだった。
いいネタがたくさん出た。
しかしその後、9月にマスクの話はもう古いと判断、全面的にカットすることになる。
■2023年4月22日
5回目の打ち合わせ。
「陰謀論」ネタのオチのアイデアが出る。
■2023年5月7日。
6回目の打ち合わせ。
【推し活やってみた】ブロック担当の鮫肌さんも同席。
古舘さんの「3週間限定推し活体験」の話をしてもらう。
それを録音し、文字起こししたものを元に担当作家が台本のかたちにまとめる。
これに古舘さんが加筆修正を加えたものが、本番で上演される。
ちなみに古舘さんの加筆は、本人以外が読んでもまったくわからない。
■2023年5月10日。
7回目の打ち合わせ。
2回目の全体会議を受けて作家から集めたネタを検討。
ネタはふんだんにあり、幾つかのブロックが出来つつあった。
しかし、まだ全体像はまったく見えておらず。
近所の『ノジマ』に家電を買いに行った。
あいにく品切れでメーカーからの取り寄せになるという。
届くまでは約1ケ月。
念のため他店の在庫を確認してもらった。
すると、近くの店舗に在庫があることがわかった。
ついている。
取り寄せをお願いできないか頼むと、
「取り寄せはできますが先払いになります」
しかも、
「現金のみとなります」
家電はなかったが、他店から取り寄せをしてもらったことは何度もあるが、
先払いと言われたことはなかった。
理由を尋ねると、「店ごとの在庫管理で…」と曖昧な説明だったが、
いずれにしろ『ノジマ』の在庫管理・販売のシステムの問題だろう。
365歩譲って、先払いはまだいいとして、
「現金のみ」というのはなんとかならぬものか。
家電は数万円するものはザラ。
そんなに現金を持ち歩いていることはまずない。
『ノジマ』、接客もいいし好感度高かったぶん、
ちょっとがっかりした。
社内のシステムを変えればできると思うんだけど…
検討してくれないかなあ。
湘南平の展望台の金網に、
恋人たちが南京錠を付けるようになったのは、
いつ頃からなのだろうか。
最初に考えた人は本当にスゴいと思う。
その後、江の島の金網にも南京錠は付けられるようになり、
今では、専用の南京錠が販売されている。
これが商売になると最初に考えた人もスゴいと思う。
冬休みに読もうと思っていた一冊。
ようやく読了。
驚いた。
それが読み終えて湧いた最初の感想。
冒頭の書き下ろし作品『了見の餅』を読んだ時は、
「いかにも女性芸人が書きそうな小説だなあ」
と思った。
そこから『文藝』誌に発表された作品が4篇、
時系列で並んでいる。
最初の2篇『イトコ』『最終日』は、
冒頭作品の延長線上にある。
だからこの時点でも僕の感想は、
「いかにも女性芸人が書きそうな小説だなあ」
しかし次の『宵』で、
小説としての様相が急激に変わる。
怪奇譚の類でどう終わらせるのかと読み進めたが、
あんなふうに終わるとは!
続く『ファシマーラの女』は、
さらに新しい小説世界を作り上げていた。
わずか1年の間で、
こんなにも小説としてのバリエーションを生み出すなんて。
最後の書き下ろし『カーテンの頃』は、
王道の短編小説で、
「こういうのも書けるのか!」と驚いた。
いや、
実はもともといろいろな手札を持っていて、
「まずはこのへんから出して油断させようか」
という作者の企みにまんまと引っかかってしまった気もするが…
どうだろう?
猪木さんの訃報の後、すぐに古舘さんから「猪木さんのことを入れたい」と言われました。極論、古舘さんが今喋りたいことを披露するのが『トーキングブルース』です。観客も猪木さんの話を聞きたがるはずです。反対する理由はありません。
と思う一方で懸念もありました。ここまで「言葉」というテーマで作ってきた内容が猪木さんに全部持っていっていかれるのではないのかという懸念です。そこで折衷案として「時間は10分ぐらい」「テーマである“言葉”を絡めて欲しい」という提案をしました。
古舘さんから猪木さんブロックの初稿が上がってきたのは11月上旬でした。喋ったものを文字起こししたものなので時間もわかります。20分を超えていました。内容もかなり入り組んでいます。そこで初稿を元に打ち合わせをして内容を整理。それを録音、文字起こしという工程をして準備稿が完成しました。
並行して、各ブロックも固めていきました。
「政治」ブロックはネタが膨大にあるので、その取捨選択。
「エンディング」も初稿では20分はありました。さすがにこれは長すぎるので、説明を削ぎ落としていきました。
なかなか見えなかった「鼎談」もようやく形が決まり、数回の改稿を経て、準備稿が完成しました。
初めての通し稽古は11月20日。
ここで初めて今回の全体像が明らかになりました。
数日おいて2回目の通し稽古。
ここでスタッフから新たな意見が出ました。
猪木さんブロックがちょっと淡白なのではないかという声でした。
話し合いは長時間に及びましたが、結論は出ず、古舘さんの「そんなに長くはしないから、とりあえず次回の立ち稽古でやらせてくれ。それを観て判断してほしい」という言葉で、結論は次回に持ち越されることになったのです。
3回目の通し稽古で、猪木さんブロックの後半が足されたものが披露されました。内容はもちろんのこと、時間的にも全体のバランスを崩さない仕上がりとなっていました。
よし、このかたちで行こう!…とすんなり決まると思いきや。また新たな意見が出てきました。
従来のエンディングではなく、猪木さんブロックをラストにした方がいいのでは?という意見でした。
それもわかります。猪木さんブロックで感動した後、チョムスキーの話を聞いても入ってこないかもしれない。観客は猪木さんの話で感動してそのまま帰りたいのではないか。
ですがそれをやってしまうと、今回のテーマ「言葉」が薄れてしまうことにもなります。
どちらの終わり方もありでしたが、最終的には古舘さんの判断で、本編のあのかたちになりました。
ただし猪木さんブロックからエンディングへと切り替えるためには、やはり何かが必要ということで、言葉を少し足すことにしました。
エンディングで、古舘さんの持論が酒井先生に否定されるくだりは、確かに喜劇的な展開ではありますが、まさか笑い声が上がるとは思いませんでした。たぶん、猪木さんブロックの緊張があってこその笑いだったのでしょう。
『古舘伊知郎トーキングブルース「言葉2022」』制作備忘録、
以上を持ちまして終わりとさせて頂きます。
なお、次回に向けての打ち合わせが年内には始まります。
『古舘伊知郎トーキングブルース「言葉2022」』
本日いっぱい配信でご覧頂けます(上演時間約2時間)
<こちら>から配信サイトに行くことができます
みなさまぜひ!
ここまで出た要素を整理したところ、このままでも成立しているけれど、何かが足りないという気もしてきました。
そこであらためて考えたのは、20年ぶりに「言葉」というテーマをやる意味です。20年前に語ることができなかったことはなにか?
それは20年前と現在の「言葉」の変化です。
「言葉」の変化の顕著の場として選んだのは「政治」と「SNS」でした。
「政治」に関しては、古舘さんはお手の物。苦労することはありませんでした。
大変だったのは「SNS」。なにしろ、古舘さんの(語彙力)にない言葉の集積。自分のものにするのにもっとも苦戦したのが、このブロックです。
「政治」と「SNS」、新たな2つのブロックに加えて、これまでに出たネタの補強を7月8月9月で行いました。
並行して、冒頭の「いま気になる言葉」のネタも作り続けていました。
打ち合わせでは、前回からの間に古舘さんが気になった言葉をまず挙げるのですが、その時の枕詞は「これは使えないかもしれないけれど」
その一例を記したのが、こちらのメモです。
内容の詳細は忘れてしまいましたが、話を聞いた後でこう答えたはずです。
「よくわかりません」
9月末、ようやく準備稿の作成に入りました。
かつては、打ち合わせの後に作家が台本のかたちにまとめ、それを改訂していくという流れでした。しかし今回は、ネタの順番を記したメモ(構成表)を作り、それを元に古舘さんが喋り、録音。文字起こししたものを整えて、次に進むという工程にしました。
こうして、まだ歯抜けの部分はあるものの全体像の見える準備稿の目処が立ちました。後はいくつかの作り物部分を固めていけばいい、そう思っていたところに、新たなニュースが飛び込んできました。
2022年10月1日、アントニオ猪木さんの訃報でした。
続きは次回。
『古舘伊知郎トーキングブルース「言葉2022」』
現在、配信でご覧頂くことができます。
(12月11日23時59分まで)
<こちら>からぜひどうぞ!
<その2>
2回目の打ち合わせは2022年1月21日。
実はその前に、制作スタッフだけの打ち合わせがありました。
そこで2014年の一夜限りの復活以降もテーマを設けて来なかったが、今後はテーマを設けた方がいいのではないかという話が出たのです。
20年ぶりに「言葉」をテーマにという話もこの時に出ました。
この提案は古舘さんにも受け入れてもらえ、1月21日の打ち合わせは「言葉」というテーマで何ができるかを話し合うところから始まりました。
この時の僕のメモには、すでにソシュールの名前が出てきています。ただし、まだネタにするかどうか検討する段階ではなく、古舘さんがここ数年で学んだ「言葉」に関する知見を説明してくれる、その流れで出てきたに過ぎませんでした。
小ネタでいうと「若隆景」の名前はこの時すでに出ています。
本格的に打ち合わせが始まったのは3月に入ってから。
3月の時点で、
・ある人物をその側面だけで描いて観客に想像させる。
・口調と言葉遣いが気になる人たちの鼎談。
・いかにして言葉は生まれたか?
といった本編にも活かされたネタが出てきました。
といっても「鼎談」に登場する3人は本編とは一部異なり、
どんなかたちで見せるのかもまったくの白紙状態。
最終的に一番作るのに時間がかかったのは、あの「鼎談」でした。
後にエンディングとなる「いかにして言葉は生まれたか?」もまだチョムスキーを詳しく知る前の段階でした。
「覚えるのが難しい言葉を暗記する」というネタが出たのもこの頃。何を暗記するかで「ライトノベルのタイトル」といったアイデアも出て、古舘さんが実際に書店まで取材に行きましたがしっくりいかず、ピカソのフルネームに落ち着きました。
4月5月6月も月1回のペースで打ち合わせは続きました。
そんな中、6月上旬に東京大学の酒井邦嘉先生のもとを訪ねました。この取材のおかげで、いつもはもっとも苦労するエンディングの構想が早い段階で見えてきました。
ちなみに僕は取材の様子を録音したデータで聞いたのですが、凄かったですよ、酒井先生。古舘さんの縦横無尽な質問の数々に対し的確に答えてくれる。というか古舘さん、大好きな言葉の話だったので、明らかに途中で自分が取材に来たことを忘れていましたね、あれは。
6月終わりの時点で、かなり具材が出揃ってきたので、一旦ここまでのネタを整理してみました。そこで初めて気になることが見えてきたのです。
続きは次回。
『古舘伊知郎トーキングブルース 「言葉2022」』
その制作備忘録は、ネタバレを避けるため、
配信終了後から記していこうと思っていましたが、
予告代わりに少しだけ。
初回の打ち合わせは2021年12月27日でした。
この時点では「言葉」というテーマはありませんでした。
会場や日程も決まっていなかったはずです。
とりあえず集まって、次回は何をしようかというブレストをしました。
これがその時のノートの一部。
小説のタイトルがいくつか挙げられています。
この時に話したことは本編には1ミリも反映されていません。
次の打ち合わせは2022年1月21日。
ここで状況に大きな変化があるのですが…それは次回に。
『古舘伊知郎トーキングブルース 「言葉2022」』
12月11日まで配信でご覧頂くことができます。
詳しくは、<コチラ>に。
みなさま、よろしくお願いいたします。