『お経1999』は、
『トーキングブルース』12th『お経』のエンディングを飾るネタです。
(映像は⇒
公式『古舘伊知郎トーキングブルースアーカイブス』でご覧頂けます)
上演時、「現代のお経」と呼んでいたこのブロックは僕が担当しました。
まずは古舘さんがテーマごとに訴えたいことを挙げ、
それを僕が、お経風にすべて四文字熟語に変換したのです。
(既存の熟語が中心だが、中には強引に作った新熟語もある)
さすがに四文字熟語だけを詠唱するというのは、
伝わりにくいということで、
上演時には、四文字熟語以外の語り部分もあるが、
台本上は、四文字熟語の羅列でした。
あれは本多劇場で芝居を観ていた時だったが、
終演後、携帯の留守電をチェックしたら、
古舘さんから台本のお礼のメッセージが入っていて、
感激したものです。
と、ここまでは、表エピソード。
実は、この台本には、古舘さんも知らない裏事情があります。
打ち合わせから台本の締め切りまでは、一ヶ月ほどありました。
当然のことながら、締め切りが迫ってこないと取りかかりません。
さすがにそろそろ書き始めないと間に合わないと、
打ち合わせのメモを取り出し、読み始めて、ゾッとしました。
1枚足りない。
テーマだけはすべて覚えていましたが、
あるテーマに関するメモがなかったのです。
探しても、どこにもなかった。
誤って、捨ててしまったようです。
テーマは覚えているが、内容はすっかり忘れている。
このままでは書くことができない…どうしよう…
1999年の僕は古舘さんのマネージャーに連絡をしました。
「台本を書き始めたんですけど、
何箇所か古舘さんに確認したいことがあるので、
時間を取ってもらえませんか」
メモを無くしたことは言わず、
あくまで「確認」の打ち合わせということでお願いしたのです。
すぐに古舘さんは打ち合わせ時間を作ってくれました。
積極的に打ち合わせをしたいと申し出てくれたことが、
嬉しかったとまで言ってくれました。
…。
こうして「確認」の打ち合わせをし、
無事、紛失した1枚のメモの内容を聞き出し、
書いたのが、「現代のお経」です。
『トーキングブルース』に一番貢献できたのは、
このブロックを書いたことだと、今でも思っています。