遠くから見たらサスペンス、では近くなら…

2016年05月31日 10時07分23秒 | コメディのかけら

知人の目撃談。

ある駅の改札付近でバイト仲間の女性を見かけた。
婦人警官に腕をつかまれている。
その傍らには中年男性がおり、
もう一人の警官に激昂した感じで何かを訴えている。

何らかのトラブルが起きているようだ。
巻き込まれては面倒だと、
知人はすぐさまその場を立ち去った。

後日、そのバイト仲間と顔をあわせる機会があり、
話の流れで、実はあの時の様子を目撃したという話になった。

「えー、あれ見られてたの」
と照れるバイト仲間の口から語られたのは予想外の内容だった。

その日、移動中の電車の中で体調が悪くなった彼女。
その時、隣にいたのが例の中年男性だった。

彼女に行き先を訪ね、自分も同じ方向だからと付き添い、
わざわざ一緒に降りてくれたのだという。

しかし彼女の体調は悪くなる一方。
たまたま駅前に、おそらくサミットのためだと思うが警官がいたので、
事情を話し、救急車の手配をしてもらったのだという。

つまり知人が目撃した、「婦人警官に腕を掴まれていた」のは、
「捕まった」のではなく「体を支えられていた」だけ。
「中年男性が激昂して何かを訴えていた」のは、
「早く救急車を呼んでくれと訴えていた」だけだった。

遠くから見た時は事件の予感がしたが、
いざ近くによってみるとそれは善意の出来事だったのだ。

ホテルと忘れ物

2016年05月29日 09時13分02秒 | アイデアのかけら

引き続き、家人(大)の思い出話。

これも10年近く前になるが、
夏になるとよく箱根の富士屋ホテルに行った。

お目当てはプールだ。
室内プールも良いが、
森の中のプールはいつも空いていて心地良かった。

ある時、家人(大)が日傘を忘れてきてしまった。

ホテルに連絡すると、すぐに探してくれ、数日後、我が家に届いた。

こちらの落ち度なのに、送料はホテル側がもってくれた。
これはあるグレード以上のホテルでは当たり前のことなのか。
こういう経験は初めてだったので、それだけでも驚いた。

そしてもう1つ驚いたのは梱包だという。
家人(大)曰く、

「まるでその日傘のための梱包用セットを用意した、
 そんな感じの丁寧な梱包だった」

なるほど。

「ホテルにいる時、快適に過ごせるようにしてくれるサービスはもちろん嬉しいけど、
 こんなふうに困った時に助けてくれる、そんなサービスの方がより心に染みる」

これはホテルに限らず、
そしてサービス業に限らず、
あらゆる職業で心得ておいた方がよいことだと思う。

味は忘れてもサービスは記憶に残る

2016年05月28日 09時21分40秒 | アイデアのかけら

家人(大)が突然、もう10年以上前に行ったある店のことを話し出した。

あれは我が家3人と両家の母親を招いての、
ちょっとあらたまった食事で、
それならばと某ホテル内の懐石料理店に行った。

その時のことで家人(大)が今でもよく覚えていることがあるという。

我が家の家人(小)は左利きなのだが、
食事を始めてすぐそれに気づいたフロアの責任者と思しき人間が、
僕たちのテーブルの担当者に、
「あちらのお子様は左利きだから」という旨を指示していたそうだ。

そしてその直後から、
家人(小)にだけは左利きでも食事がしやすいかたちに対応が変わった。

「何を食べたかはもう忘れちゃったけど、
 このことだけははっきり覚えていて、
 今でもあの店はいい店だよなあと思うんだよね」

ゲリラ的取材と街の防衛力

2016年05月26日 09時26分51秒 | 業界のかけら

春風亭昇太師匠は、
僕の住む街に良く飲みに来る。

僕もしばしば遭遇するが、
会うのはいつも、
地元民に愛されている「個人店」だ。

昇太師匠が『笑点』の司会に大抜擢となって以来、
そんな個人店にあやしい女性が出没しているという。

店に来るなり、
名刺のひとつも出さずに、
昇太師匠についてアレコレ聞いてくるらしい。

そんな失礼な人物に答える店主はいない。
常連客も同様だ。

しかし彼女は懲りずに、
まだ別の店に現れ、同じことを繰り返す。

実はすでに、
週刊誌の記者と思われる不躾な女性が、
昇太師匠について嗅ぎまわっているという情報は、
地元個人店の間に行き渡っている。

それどころかこんな注意も、

「記者は可愛らしい女性なので、
 ついつい酔った勢いで適当なことをしゃべらないように」

もちろん、この注意は半ば冗談。
「××さん大丈夫?」という酒場の笑いのタネである。

みんなで街の人気者を守る、
そんな昔ながらの空気が、
僕の住む街には今も残っている。

アーサー・ミラーもびっくり

2016年05月22日 07時58分38秒 | コメディのかけら

劇場のトイレで、
若者が最近読んだ戯曲について、
友人に熱く語っていた。

「ホント、ヤバいよ…
 アーサー・ミラーの『サラリーマンの死』」

遠くせつない誕生日の知らせ

2016年05月21日 08時13分38秒 | ドラマのかけら

今もmixiを使っている。
それでしか繋がっていない人が数人いるからだ。

先日、あるマイミクが誕生日であることが表示された。
その日はちょうど僕の誕生日だった。

その人は知人の元・奥さんで、
もうかなり前になってしまうが、
何度か家にも招いて頂いた。

しかしその後、二人は離婚し、
僕はもともと夫と知り合いだったことと
彼女も実家に戻ってしまったようなので、
没交渉となっている。

離婚した夫はその後、再婚。
二人の子どもに恵まれ幸せに暮らしている。

だが、彼女の方は、今、どこで何をしているのかまったくわからない。

僕と同じ日に誕生日を迎えている・・・わかるのはそれだけだ。

もしSNSをやっていなかったから、
そんなことすらわからなかっただろうし、
そもそも彼女の、というか、あの夫婦と過ごした時間のことも、
思い出すことはなかっただろう。

それはなんとも遠く、そして少しせつない風景だった。

ファンはホームレス

2016年05月17日 10時39分38秒 | コメディのかけら

元ストリートでやっていたミュージシャンから聞いた話。

彼女が路上で歌っていると、
よく聴きに来るホームレスの男がいた。

いつもは数曲聴くと、その場を立ち去ってしまう。

しかしその日はなぜか、最後まで聴いてくれた。
その間、およそ2時間。

路上ライブを終え、
楽器を片付けていると、
その男が近づいてきた。

「今日は最後までありがとうございます」

とお礼を言うと、
男は手を差し出して、

「今日は全部聴いたんだ。だから2000円」

身奇麗なホームレス

2016年05月14日 09時44分51秒 | コメディのかけら

某ターミナル駅に身綺麗なホームレスがいるという。

どうしてそんなに身奇麗でいられるのか?

それは彼にタニマチ的人物がいるからだそうだ。

適当に金をくれ、
服もくれ、
週に一回、家の風呂に入れさせてくれる、
そんな存在がいれば確かに身綺麗にもなるだろう。

だが、家はない。

それにしてもそのタニマチ的人物は、
どういうつもりでそんなことをしているのだろうか。

ホッピー夜話

2016年05月12日 08時14分47秒 | コメディのかけら

近所の飲み屋で聞いた話だ。

カップルの客がやってきた。
初めて来る客だった。

「ホッピーセット」と男。

すると、女が、
「私は中」

ホッピーを知らない人のために説明しておくと、
ホッピー自体にはアルコールは入っていない。
ホッピーを焼酎で割って飲む。
普通は1本のホッピーで2~3杯分割ることができ、
おかわり用の焼酎を中と呼ぶ。

つまりこのカップルは、
中を2つ頼み、
1本のホッピーを分け合おうとしたのだ。
確かにそれだとかなり安く飲める。

しかし店としてはたまったものではない。
料理の値段を安くする分、酒類で補うのが飲み屋の常識だ。

その店も一人ワンドリンク制なので、
その旨を告げると、女性はレモンサワーを注文していた。

この話を聞いていたら、
こんな光景が浮かんできた。



大晦日の夜。
二人の中年男を連れた貧相な老婆がやってくる。
そして老婆が言う「ホッピーセットと中を2つ」

童話『一本のホッピー』

出だしは出来たので、この後、どう展開しようか。

何のためのフリガナなのか?

2016年05月10日 23時49分37秒 | 業界のかけら


某テレビ局では、
ある時刻を過ぎると通用口から入ることになる。

受付にはガードマンがおり、
そこで所定の用紙に名前や連絡先を記入する。

いつものように記入して渡すと、
受け取ったガードマンが用紙をしばし凝視した後、

「フリガナもお願いします」

正面受付の時はそんな細かなことは言われないのになあ。
あれって受付嬢がアバウトなだけなのかなあ。

などと考えながら「ヤマナヒロカズ」と記入して戻す。

ガードマンは再び用紙を凝視した後、
僕の前に用紙を差し出し、
漢字で書いた僕の名前を指さし、

「お名前は?」

・・・え?

何のためのフリガナなんだ?

ひょっとしてあのガードマン、音声入力なのか。

ブームと酒の味

2016年05月08日 12時04分55秒 | その他のかけら

近所のBarで店主とある酒蔵の方と話す機会があった。

二人が口を揃えて言うには、

「ウィスキーも日本酒も、
 ブームになって広く飲まれるようになったにも関わらず、
 味が安定しているようなら、
 ちょっと疑ってかかった方がいい」

もうひとつ興味深かったのは、

「酒蔵がコンテストを狙い始めると、
 普段使いの酒の味が落ちることが多い。
 だから賞をとると全国的には評価が上がるが、
 地元の評判は下がることが多い」

なるほど。

耳たぶに指

2016年05月04日 17時03分07秒 | その他のかけら

熱いものに触れてしまった時、
耳たぶに手をやるという行為には、
どこか懐かしさがある。

しかしながら実際にそうやっている人を見たことがあるかと考えると、
僕の記憶の中にはない。
あるのは『サザエさん』か何かで見た光景だけだ。

熱いものに触れた時、
耳たぶに手をやる人は本当にいたのだろうか。

今もやる人はいるのだろうか。

秘密のドリンク

2016年05月01日 08時16分47秒 | コメディのかけら

ある飲食店での話だ。

ドリンクのメニューを見ると、
アルコール類としてはビール、ワイン、ウイスキー、焼酎、日本酒があった。

何にしようか考えていると、店員がちょっと小さな声で言った。

「メニューには無いですけど、レモンサワーもありますよ」

裏メニューのレモンサワー。

そういう気分ではなかったので他のものを頼んでしまったが、
なぜあの時、注文しなかったのか、今になって軽く後悔している。