お墓の引越に
私の家にはお墓がある。もの心がついた時にはすでにそこにあった。時おり親に連れられてお参りしていた。
学校を卒業してサラリーマンとなり、その後は里帰り時にお参りする程度だった。両親の他界後はお墓参り前に、先ず伸び放題の木の枝切りや、竹の子や猪により荒れる道を手直しすることからとなった。66才になった今、仕事で都会にいる長男夫婦がお墓を守り易いように、お墓の引越しを計画した。
側まで車で行ける、日当たりの良い市の墓地だ。これで私としてはひと安心できる。父母は他界して今年来年に、33回忌を迎える。祖父の他界は66年前だが、お墓の手入れは凡そ65年ぶりだろう。祖父には子供がなく、祖母と家を繋ぐことに腐心されたという。
10才で養女となった母は、戦中に養母が他界し、その後は養父と二人で戦後を迎える。23才で結婚、25才の時養父が他界する。終戦を70才で迎えた祖父だが、戦中の共同行事には母が出ていたと、お年寄りと話すと聴ける。祖父は、私が生まれて凡そ半年後に他界した。病気療養中だったが、私が泣く声に、「苦しかろう」と乳母車に乗せてかどをぐるぐる回り、子守をしてくれたと母。かどにはたくさんの乳母車の跡が残っていたと。
私には長男がいる。しかし長男には男の子はまだできない。お墓を守る後継は孫の世代に不確実だ。子が考えてくれるだろうが、これまでに「家を繋いだ心」を、私は繋いでおかなければと、自分に言い聞かせる。こんなことを思いながら、お寺さんや石材店さんと、次の引越し手順を相談する。