今回は漆の艶について。
艶に関しては、塗り立て艶漆、艶なし漆、呂色漆などと種類も色々で、乾いたら艶が出る漆で、製法として2通りあります。
多いのは、中国産漆に艶の出る薬剤を混ぜたもので、比較的安価な大量生産のお椀などで使われ、「塗ったのが乾けば出来上がり」といった、どちらかというと安直な品物に使われる漆だと言えます。
日本産漆で、乾けば、艶ありで仕上がる漆もあります。
これは、某メーカーの製法特許で、自動車ボデー用に開発された漆です。ずっーと以前に買って試してみたのですが、余りにもテカテカで、小生の好みではなく、そのまま放置しています。
艶なし漆(無艶漆)は、表面が艶なし状態で乾固する漆で、中国産漆が使われて、艶が出ないような薬剤を混ぜたものとのことです。一部の駒にはこの漆で仕上げたものがあるようですが、小生は使ったことが無いので詳しくはわかりません。
呂色(ろいろ)漆は、蠟色漆とも書きます。
呂色(蠟色)とは、塗り立てとき、あたかも「蝋」のような鈍い光沢で表面になるところからこの名前で呼ばれ、基本的には混ぜ物をせず漆100%で精製したピュアな漆で、これにも中国産と日本産とがあり、値段も大きな違いがあります。
色では、黒漆と茶色っぽい木地色漆とがあります。
黒呂色漆は、木地色漆に鉄漿(おはぐろ)を混ぜることで黒くした漆で、一番ポピュラーな漆です。
呂色漆は乾固した状態では、光沢は鈍く、それを磨くことによって艶が出て、深みのある光沢へと変化させて仕上げます。
なお、箱などの拭き漆に使う漆は、生(き)漆と言って、チューブから出した直後の液体では乳白色で、空気と結合することで茶黒色に変化してゆきます。これは精製前の漆なのでかぶれやすく、取り扱いには注意を要します。
(この漆で箱を拭いたりするあとは、よくかぶれる。2週間前も、そうでした)
ところで、漆文字の艶についてですが、表面がキラキラしているのが好きな人と、キラキラしていないのが好みだという人が居ます。
小生の場合は「ほどほど」が良く、自然で穏やかな光沢の「中庸」が、好みです。
と言いますのも、キラキラ過ぎる駒の場合、実戦、特にタイトル戦では敬遠されることが多い。若い人なら、余りこだわりは無いのでしょうが、ある程度の年配者には、キラキラし過ぎる文字(駒)は、眼に触るという問題が潜在しているのです。
こんなことがありました。もう20年くらい前のことです。
この日は四国の某ホテル。明日は、ここでタイトル戦が開催されます。
あと一時間ほどで検分の時間。
ふと思い立って、持参した駒を念のため再確認しようとしたとき、駒の文字が天井のトップライトで、光ってギラッと見えた瞬間、違和感が走りました。
「これはちょっとマズイ。このギラギラを抑えなくては・・」と。
しかし、時間が迫っています。
でもとにかく、ありあわせの知恵と経験を総動員して、強すぎるギラギラを抑えることに成功。
「検分」では何の問題もなくパスしたことは、もちろんでした。