月は朧に東山。今日は十三夜。
映像は、昨日までに盛り上げた「源兵衛清安」。
材は御蔵ツゲ。
目に優しいプロ好みのすっきりした無地柾目で作りました。
やや小型の「古水無瀬」の駒と盤のセット。
駒の材は、薩摩ツゲ根杢。彫り埋め仕上げです。
盤は30センチ✕27センチ。ヒバ製、厚さ30ミリの柾目。
小型の実用品として、この大きさがジャストサイズ。
実戦対局はもちろん、詰将棋、棋譜研究にもコンパクトで卓上で扱いやすい。
9月24日(木)、外は真っ暗。闇夜です。
昨日は、75歳以上の自動車運転認知度検査。
20人ほどが集められていました。
少々緊張気味に、約一時間の検査は5問ほど。
いまの日時や、映像を見せて記憶の程度に応えるものでした。
すぐに採点されて、結果は100点満点の90点。
75点以上が認知度に問題がないとのことで、まずまずの結果でヤレヤレでした。
次は1~2月後に、実技検査があるそうです。
今日の映像は昨日までに仕上がった「源兵衛清安」の一組。
普通通り、玉将と王将に作っています。
材は、無地柾目の御蔵島ツゲ。
2枚目の左下は、接写の時に生じたフラッシュの影。
10年前、「なんでも鑑定団」に登場した川井さん所蔵の「葵紋蒔絵の将棋盤」について、千太さんから、お尋ねがありました。それについて、私が分かる範囲で述べさせていただきます。
盤の厚みは4寸。素材は榧。4面の盤側それぞれには、輝きと色合いの異なる三つ葉葵家紋が3つずつ描かれています。
それらの輝きの違いは意図的に作られており、この内、真ん中の葵紋は通常の金粉を蒔いた金蒔絵で、右側の葵紋は金粉に銀粉を加えた金蒔絵で描かれています。これら二つの家紋は通常の蒔絵技法であり、コーテイングしてある漆の膜を通して見ることから、色合いや輝きは金そのものの輝きではなく、やや鈍い金色を呈しています。
これに対して左側の葵紋は、ピカーっとした金無垢の輝きそのものであり、模様を切り抜いた板状の金箔を漆で貼り付けて加飾する「金平文(きんひょうもん。金貝とも言う)」の技法で、金無垢の板を露出した形であり、光り輝いています。
周りにちりばめられている「唐草の葉」にも、光り輝いているものとがあって、ピカーっと輝いている葉っぱには、同じ金平文の技法が使われています。
しかし、金平文の弱点は「張り付けている土台(この場合は、カヤの木)と、張り付けた金箔との膨張率の違いによって、経年の温度変化の影響を受けて剥がれやすい」ことにあり、何十年、あるいは100年、200年が経つうちに徐々に剥がれが進行し、トラブルを起こすことです。
加えて、盤を抱えて持ち上げたり移動させるときには、盤側の剥がれ気味の家紋部分が、人体(腹や腰)に擦れたりし、一層、剥がれが促進するわけです。
テレビでは、剥がれ気味の家紋を指して、「3つの家紋のいずれかは、本来は婚姻元のものであるべきで、他家の家紋だったものが葵紋に付け替えている」という説明がなされました。しかしそれは徳川同士の婚礼もあった事実を無視して、理屈に合わない説明ではなかろうかと思うのです。
さて、この盤の出どころですが、盤はかなりの期間、ある商社のオーナーのもとにあったことがわかっています。経過をさかのぼると、もともとは水戸の徳川家にあった可能性があります。明治から昭和初期に至る時期には諸大名のお宝が頻繁に売りたてられて、そのような折に民間に流れたと考えます。
この盤は厚みや足の形、蒔絵の様式を考えると、江戸時代後期の19世紀に作られたものだと推測できます。類似品としては、名古屋の徳川美術館に、この時期の婚礼道具としての将棋盤が遺されていますが、この盤と様式的に異なる点は、それらは通常蒔絵による加飾のみであり、先述した「金平文(金貝)」の技法は使われておらず、珍しい「金平文」の技法が使われているのは、この盤のみであります。
この時代、江戸時代の工芸技術は、大名などパトロンの財力(バックアップ)により最も高められた時期であり、明治以降の現代とは比べ物にならないほどのレベルの違いがありことに加え、大変な財力も要します。
よって、お尋ねの「明治時代以降、似たような将棋盤が作成されることはないか」との質問に対しては、「それはない」と断言して間違いはないと思います。
1、日本産カヤ。一枚板。すっきりした柾目。厚み8分5厘。
2、日本産カヤ。一枚板。すっきりした柾目。厚み1寸。
3、日本産(日向)カヤ。2枚継。赤みの柾目。厚み2寸。
4、日本産カヤ。4枚継ぎ。柾目。厚み2寸。
4、新榧。柾目一枚板。厚み2寸。
9月19日(土)、晴れ。
空は夏の雲。空気はようやく秋の気配。そして虫の音。
将棋チェストの締め切りが迫りました。
これまでにいただいたのはトータル16台。
多くは2寸用ですが、今回は3寸用のリクエストが3台。これは想定外のことでした。
この後、最終的に一日待って、制作台数を確定しようと思います。
なお、引き出し式の駒引き出しの上に乗せる「駒台」については、ズレないように堀さんがいろいろ工夫しておられていることは、すでにこのブログで紹介しました。
それとは別に、私なりの考えも述べたいと思います。
滑り止めシートは安価で、且つ、いろいろなタイプのものをホームセンターや100円ショップで売っていますので、各種買い求めてテストし、その中から一番良いものを使えばよいでしょう。
穴の位置は、どこでもかまわないのですが、エッジから10ミリ程度入ったあたりの中央が良いでしょう。丸棒の出っ張りは、1ミリ以下にして、先は角張らないようにペーパーで擦って少し丸めておきます。
いかがでしょうか?
なお、上にのせる「駒台」は既存で売られているものを想定していますが、当方でも、リクエストがあれば、将棋チェスト用に別売りで作製しようと考えます。
価格はチェストと同時にお渡しで、5000円。
さらに、上記で述べました「完璧にずれない加工を施した本体と、駒台」をご希望の時は、6000円といたします。
9月17日(木)、曇りがち。
変わりやすい天気。雨も降りました。
仕事は相変わらず、このところは「源兵衛清安」を磨いたり盛り上げたり。同じ書体で御蔵島ツゲあり、薩摩ツゲありで4組目になります。
映像はそのうちの一組。材は御蔵ツゲ無地の柾目。流通には乗せにくい「双玉」に作りました。
回想記・その17、なんでも鑑定団・葵紋蒔絵の将棋盤。
放映の2週間ほど前のことでした。
「今、東京から帰ってきました。なんでも駒は2000万円。盤の紋が付け替えられているとのことで50万円。駒箱が70万円でした」と、川井さんの電話。
「鑑定額のことはさておいて、盤の紋が付け替えられていると言うのは、おかしなたコメントです」。川井さんとはそのようなやり取りをしたことを記憶しています。
「紋」とは、4つの盤側にそれぞれ3つづつある葵紋のこと。3つの内、左の紋が痛んでいて、それを指してのコメントでした。
その映像をいくつかアップします。
回想記・その16、何んでも鑑定団・八十五才象牙の水無瀬駒。
「八十五才象牙の水無瀬駒」が発見されて、ほぼ2年が経過したとき、テレビ東京「なんでも鑑定団」に、その盤駒が登場。
しかし10年も前のことで、記憶が薄れかけていることもあるかと思い、当時のDVDを見ながら振り返ってみます。
「なんでも鑑定団」に出展することは、川井さんから聞いていました。「世間に広く知ってもらうためには、いいことだ」と私も賛成し、収録は放映の2週間ほど前に行われ、その夜遅くのことでした。
「今、東京から帰ってきました。なんでも駒は2000万円。盤は盤は紋が付け替えられているとのことで50万円、駒箱が70万円でした」と、川井さん。
「へーッ。おかしなことですね」。だれの見立てですか?」。
「何だったかな・・」。川井さんとは、そんなやり取りしたのを覚えています。
放映は、10年前、平成22年6月22日。
録画したそのDVDを再生しながら、八十五才象牙の水無瀬駒の映像をアップします。(盤は次の章に回します)