12月21日の木村一基王位祝賀会会場にて展示公開された「木村一基書の駒」について、少し説明させていただきます。
「木村一基書の駒」誕生のきっかけは、金沢での棋王戦の夜。2年近く前のこと。木村一基さんを挟んだ居酒屋で、尾崎さんと3人でお話する機会がありました。その席で申し上げたのは「ご自分の筆跡の駒を作りませんか」という一言です。
棋士皆さんの中には、いい字で色紙を書く方もいらっしゃるのですが、木村さんの筆跡は、まろやかで安心できる文字なんですね。いつしか、この字で駒を作ってみたいと思うようになりました。
それを本人に話してみよう。そんな良い機会がこの日の夜でした。
「玉将」以下の文字は、ことさら駒を意識することなく色紙や半紙に何通りかを自由に書いてもらう。それを小生がいただいて、木村さんの筆跡文字にある癖を吸収するところから始める。文字は駒に合うように、多少のアレンジも加えて駒の文字とする。
これは、原田泰夫先生や谷川浩司さんの駒でも経験してきた手法であり、今回も良いものができる確信がありました。
今ももちろんそうですが、そのころの木村さんはお忙しい毎日。各種のタイトルには、もう少しで手が届きそうで届かない。そんな状況が続く中で、ある時は大阪での対局のあと、加茂の工房にもおいでくださいました。
そうこうして「木村一基書」が仕上がり、心の中で「タイトル獲得を」と念じながら、駒をお渡しできたのは、王位タイトル獲得をさかのぼる半年ほど前のことでした。
以上のことは、木村さんとスポンサーの一端を担われた尾崎さん、小生のみが知るところで、これまで公けにすることを控えておりました。今回、祝賀会で「駒」が公表展示されたことで、発表させていただきました。
綺麗に揃った虎斑ですね!
また、木村先生の丁寧な字母を柔らかで、肉筆感のある駒に盛り上げているところは熊澤先生の流石の技だと思います。
写真を通しても迫力が伝わってきます。
いつもですが、とにかく、一生懸命作っています。
ありがとうございました。