2020/05/31
先日、NHKEテレの番組「又吉直樹のヘウレーカ!」で「皮膚は全て知っている」というのを放送していました。
興味があったので録画しておいて見ました。講師は皮膚科学研究者、資生堂 主幹研究員の傳田光洋さん。
〈近年の研究によると「皮膚」には私たちの想像をはるかに超えた能力「五感」が備わっているという。触ったときの感覚はもちろん、光の色の違いや耳に聞こえない音まで感じているというのだ〉
ヒトは目で見たもの、耳で聞いたものだけがすべてではなく、全身の皮膚がセンサーになって情報を得ているのです。
聴こえないはずの超高周波を聴いたり、色を区別したりしているのです。
虫の音、鳥の声、風のそよぎなど、はっきりと意識していない音や、耳に聴こえないはずの超高周波(ハイパーソニックエフェクト)は免疫機能を高める効果もあるようです。
番組を見ていて、前に傳田光洋さんのご本を興味を持って読んでいたことを思い出しました。
2013年のブログに書いてありますが、ここに改めて載せておきます。
2013年5月21日
傳田光洋著『皮膚感覚と人間のこころ 』(新潮選書 2013年1月1日)
私たちは日頃、自分の皮膚の感覚をどれだけ重視しているだろうか。
私はむずむず痒いのや、ひやっと冷たいのはいやだけれど、強烈で不快な刺激でなけれは、あまり注意を払うほうではない。
しかし、夫や息子は皮膚感覚が敏感で、ちくちく、ざらざらすること、べたべたすることなどが気になるらしい。
夫は肌着の縫い目が肌に当たって気になると言って、いつもシャツを裏返しに着ている。
思えば、皮膚感覚を表現する言葉はたくさんある。
触感ーざらざら、さらさら、べたべた、つるつる、ぶつぶつ、ちくちく、ひりひり
温度感覚ー熱い、冷たい あたたかい なまぬるい
湿った、濡れた、乾いた、押しつける、風を感じる etc.
著者は資生堂研究所主幹研究員で工学博士の傳田光洋氏。
本書の紹介文には、外界と直接触れ合う皮膚は、自己と他者を区別する重要な役割を担っている。
脳からの指令を受ける一方で、自ら状態をモニターしながら独自の情報処理を行う、とある。
人の心は、触れられてあやつられるそうだ。
お釣りを渡す時など、店員が約0.5秒、相手の手に触れると、タッチしない時よりタッチしたほうが、触れられた相手は好感を持つという。 これは男女に関係ないらしい。
親に、なめたり体をきれいにされた子マウスは、怖がることが少ない。皮膚の接触は、恐怖に対する行動を制御する脳の回路を形成することに役立っている。
なでられると心が落ち着き、穏やかになるのは、自分の経験でもわかる。
子どもは特に皮膚の接触が脳の発達にも大切だそうだ。マッサージは子どもの多動性、自閉症にも効果がある。
うつ状態、アルツハイマー病の行動の改善にもなるそうだ。
視覚、聴覚優位の社会にあって、皮膚感覚はあまり重きを置かれていないようだが、実は人を動かしているのは皮膚感覚なのかもしれない。
人の皮膚の表面積は大きく、それがすべて感覚器であるから、皮膚が受け取る情報は膨大で、脳の判断や気分に影響を与えるのは当然かもしれない。