はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

『街場の親子論』続き

2021年06月28日 | 

2021/06/28

 

『街場の親子論』の続きです。

 
高橋源一郎さんが、この本について紹介しているラジオ(NHK大人の教養講座)がありました。聴いてみると、私の感じ方とはかなり違ってました。
 
ラジオ放送はこちら ↓ 5:30頃からです。
 
 
 
高橋源一郎さんは、内田氏と共著を出したこともあるので、実際の親子のことをご存じなのだろう、そこから出ている感想もあるだろうな、と思って聞いていました。
 
それによると、これは父親が娘を教育する物語だということ。
 
るんちゃんは素人で、初めは書くことに不慣れでとても困っていた。親子といえども、お互いのことがわからなかった。しかし往復書簡を交わす1年間の間にるんちゃんは著しく成長した。
 
お互いを理解できて、さまざまなことに了解がついて、最後の書簡にはもう自分たちのことは書かないで、内田氏は自分の父親のこと、るんちゃんは祖母のこと(内田氏の母親)のことを書いて終わっていた。
 
手紙というのは、思いつくままに書くのだけれど、たぶん意図せずに偶然、父娘ともそうなって終わった。これがすごいという。
 
源一郎さんは小説家だから、この往復書簡を1つの物語として全体の構成まで見ている。その視点はなるほどと思いました。
 
私はるんちゃんが最初は書けなくて困っていた、というのが感じられなくて(実際、そう書いてありましたが)、最初、読んだときから、この人は書ける、と思ったのです。ストレートでやや辛辣な語り口が好もしい。この父にしてこの娘あり、というのが私の感じたことでした。

 

おもしろいと思ったところを抜き書き、引用します。

・・・・・

内田(父):自分は親から情が薄い、要領がいいと言われてきた。 あんたはこういう子だよと断定的に言われると、子どもはそれに合わせて自分を造形してしまう。(P.63)

娘:「親の言葉」ってはずみで出てきたような些細な放言でも、子どものほうは深く囚われてしまって、人生の方向性を決めてしまったり、生涯苦しんだりしてしまう。(p.73)

 

これは本当にそう思います。私自身、親に言われた言葉で自分を限定してしまったことがあり、親としても気をつけなければと思いますね。

・・・・・

父:自分は「共感性が低いキャラクター」。

精神科医の名越康文さんに「内田さんはサイコパスですよ」と言われた。(p.65)

少年たちのどういうふるまいが少女たちから見て「好ましい」もので、どういう振る舞いが許せないのか、どの辺が「あと一息」なのか、『若草物語』(オルコット)を読むことを通じて学習した。(p.68)

女の子の眼から男の子を見るように自分自身を見れば、自分の感情を制御する方法がわかるんじゃないかと思った。(P.68)

ぼくの「素のまま」を出しても理解されない。だって変な人だから。でも、「素のままの自分を丸出しにしても理解されないので困っている」という困惑のかたちには一般性がある。そういう人たくさんいますから。(p.69)

自分をそのまま出してもわかってもらえないので、わかってもらえるように、ちょっと遠くから眺めて「こういう人いますよね」というかたちで取り出してみる。(P.69)

自分のことを語る時、ほとんどの人は「説明不足」になります。自分のことを自分はよく知っているから。だから説明を省いちゃうんです。それだとわからない。(p.70)

自分のことを人にわかってもらおうと思ったら、仮説的に「他人の耳で聴く」「他人の眼で読む」という工程をひとつ挟む方がいい。(p.71)

 

・・・・・

 

国会議員が失言を咎められると、「誤解を与えたなら謝罪する」という定型的な言い訳をすること、あれも文章そのものの意味ではなくて、「私は謝らない(だって心に思っていたことを言っただけだし、これからも同じことを言い続けるつもりだから)」というメタメッセージのほうがずっと優先的であって、聴いている方だって、そう聴き取っているんだと思います。

あれはるんちゃんのいう通り、「身内」向けに「ヘヘヘ、オレ、謝ってないでしょ。タフでしょ、オレ」って言ってるんです。

日本人のメッセージでは、コンテンツよりも、それを差し出す時の発信者が「誰か」に対する親疎を示すことのほうが大切なんだと思います。(p.215 )

・・・・・

こんなふうに捉えたことはなかったけれど、おもしろいこと言ってますね。

 

前回はこちらです。

https://blog.goo.ne.jp/yoshieri/e/e810fde87eca02b3c051620a2d9ddec6

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする