はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

小田急線の事件で思ったこと

2021年08月13日 | 雑感

2021/08/13

 

8月6日に小田急線の車内で、10人の乗客が刃物で刺傷される事件がありました。

〈捜査関係者によると、対馬容疑者は今年に入って生活保護を受け始め、事件の数日前にも生活費を受け取っていた。事件当日には都内で食料品を万引きし、警察に通報されていた。調べに対し、こうした境遇への不満を口にしているほか、「大学や出会い系サイトで知り合った女性に馬鹿にされてきた。華やかな女性や一緒にいる男性の首を切りたいと思うようになっていった」「電車での大量殺人を前から考えていた」などとも供述しているという。〉

犯人は「逃げ場がなくて大量に人を殺せるから電車を選んだ」と供述をしているそうです。快速急行で、通過駅は10駅で8分間停車できない区間の犯行だったとのこと。

電車に乗るのも怖いなあと思いました。

火をつけようとサラダ油をまいたのですが、サラダ油では引火しなかったのがせめてもの救いです。

犯人は36歳の男で「幸せそうな女性を殺してやりたい」などと供述しました。

これを知った時、私は、またしても狙われるのは女なんだなと思いました。幸せそうに見えたらいけないのかな、と思う人も出てくるかもしれません。

なぜ、若い女なのか。

なぜ、勝ち組男ではないのか・・・。

 

福島瑞穂さんは「ミソジニー(女性蔑視)」といっています。

〈(容疑者から)「女性に見下されているような感じがした」という言葉も出てきている。無意識のうちに女性を見下す対象と思っているのに、その対象から見下されているということが怒りとかにもつながったとすれば、やはり根底にすさまじい女性差別があると思う。〉

https://www.asahi.com/articles/ASP8C73G1P8CUTFK01Q.html

 

上野千鶴子さんも事件の背景に「ミソジニー」があると分析しています。犯行が無差別だった場合と、女性を狙った場合とでは、事件の解釈や社会の受け止め方も変わります。

〈今回の小田急線刺傷事件と江南ミソジニー殺人に共通しているのは、無差別ではなく、加害者は逃げられない空間で、自分よりも弱い女性を真っ先に狙っていたということです。〉

〈貧困や非正規雇用、学歴崩壊などが背景にあるという解釈もできるでしょう。しかし、なぜそれで女性を狙うのでしょうか。解雇した会社や使用者、ピシッとしたスーツに革靴をはいた“勝ち組男”が狙われる可能性だってあるでしょう。しかし、使用者や勝ち組男に憎悪の矛先は向かわず、抵抗しない弱い対象に攻撃が向かうのです。DV夫がよそで受けたストレスを、弱い立場の妻に向けるのと構図が似ています。〉

〈社会の中で負け組になったと思う男性は、勝ち組男を恨まず、自分よりも弱そうな女性に憎しみを向けるのです。DVは世界中にありますし、韓国でミソジニー殺人が起きたように、女性への暴力は日本社会の特殊な事情ではありません。〉

〈秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大死刑囚(当時25)は、犯行前、携帯サイトに「彼女さえいればこんなに惨めに生きなくていいのに」といった書き込みをしていました。〉

〈彼女さえいれば、というのは、実際は、女性1人を所有すれば男としてのアイデンティティが保てたのに、という解釈の方が正しいでしょう。女性は男性のために存在するものだと無意識に思っているのです。〉

https://dot.asahi.com/dot/2021081300043.html?page=1

 

私は、女性蔑視というより、男の人はそんなにも女に愛されたいのかという、根源にある女性崇拝とも云うべきものを感じたのです。

愛の対象であったからこそ女を狙い、愛の対象ではなかったから、勝ち組男を狙わなかったと考えたら、間違いでしょうか。

小田急事件の容疑者は女性に対して「かわいさ余って憎さ百倍」になったのではないでしょうか。

生育歴などを知らなければ何とも言えないのですが、一応、私立大学にまで進み、見た目も今どきの若者風の容疑者の不幸や怒りは何だったのでしょう。

「貧困と学歴崩壊」が招いた犯罪なのでしょうか。

若い女性だった、幸せそうに見えた、というだけで被害にあった女性の心の傷は、いかばかりかと思うのです。

先日、『マチズモ』で書いた「女が道を歩くとき」の怖さ、気の使いようが、ここでも具現された事件だと思いました。

 

 

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