後水尾天皇が”花も香りもよく果実も佳なりとの意にて命じ給いしもの”と伝わる「花香実(はなかみ)」は、その通りの大きな実のなる野梅系の銘花です。(偕楽園田鶴鳴梅林)
「淋子梅」は杏系豊後性の不結実種、外側の花弁は卵円形で内側の花弁は楕円形やヘラ状をして周辺が小さく波打つ特徴があります。私の図鑑では来歴不詳と出ていますが、「綸旨梅(りんじばい)」のことで後水尾天皇由来の「花香美」である、また村上天皇と紀貫之の息女の故事が出てくる「鶯宿梅」の異名などという説もあります。(偕楽園)
「巻立山」は紅白咲分けと出ていますがまだ紅花は見つけたことがありません。花弁より長い雄しべが目を惹きます。李系難波性、不結実種とされています。(弘道館)
「藤牡丹枝垂」は豊後系ですが実はほとんど生りません。花の色は淡紅色で、蕾は紫色を帯びます。枝垂れの八重咲の代表的な品種です。個体差により花の色は違いも相当あり薄いものが多く見かけられますが、これはいちだんと濃い色です。(偕楽園田鶴鳴梅林)
「紅冬至」は野梅性の中輪。開花が早く、花つきがよいため正月用の盆栽として人気があります。(偕楽園田鶴鳴梅林)
「月の桂」は野梅系の一重、六弁花もあると図鑑には出ていますが、これは10枚以上に見えます。同じ仲間の月影と似ていて、その違いが雑草さんのブログに詳しく載っていますが、月影にも六弁花もあるそうで見分け困難のようです。(弘道館)
「東雲」です。「鈴鹿の関」「関の守」などとおなじ李系紅材性の結実種、花弁の真ん中が薄っすらと紅くなり、赤い筋が入ったりする底紅の花で混同しやすい仲間です。(偕楽園)
弘道館の鹿島神社境内の「鈴梅」です。神社の案内板によると、斉昭公が鹿島神社の右手に酒の香がする白梅「酒梅」を、左手に紅梅「緋の司」と白梅「鈴梅」を植えて歌を詠んでいる、酒梅と緋の司は戦災で枯木となると書かれています。相当の古木ですが異論もあるようです。
春めでし花もえならず神垣におふる鈴梅なるとこそきけ
白妙もあかきも花の色に出て神をとうとぶ心見えけり
しらたえにあけに匂へる梅の花心の色は神ぞ知るらん
白妙もあかきも花の色に出て神をとうとぶ心見えけり
しらたえにあけに匂へる梅の花心の色は神ぞ知るらん
「品字梅」には雌しべが4本見えます。これが結実して実が3個固まった姿を「品」の字に見立てたのが命名の由来です。偕楽園のホームページでは「座論」「八房」とも呼ばれると出ていますが、図鑑で見ると座論(紅)に似ています。(弘道館)
「蝶羽形(ちょうのはねかた)」という名札が付いていました。「蝶羽重(ちょうのはがさね)」は出ていますが、図鑑では見つかりませんでした。脱皮したばかりの羽のようには見えますが…。(偕楽園田鶴鳴梅林)
「里見紅」は豊後系、花弁の数が多く、内側へ入るほど小さくなり白い覆輪も見えます。(偕楽園田鶴鳴梅林)
現在は付いていませんが「塒出の鷹」と名札が出ていたという梅、苗の段階での間違いのようだと雑草さんのブログに出ています。名前はともかく薄紅の絞りのようで味のある花です。(偕楽園田鶴鳴梅林)
「未開紅」は野梅系の八重、名の由来は本願寺門主の乗如上人が有馬温泉入湯の折、梅の蕾の紅色が特に美しいのを見て名付けたと言われます。開花のとき、1,2弁咲き遅れるからという命名の説もあります。有馬温泉の林渓寺に樹齢二百数十年の古木があるそうですが、原種は京都誓願寺長仙院にあるものといわれています。(弘道館)