この10月13日に、アンパンマンの作家・やなせたかしさんが亡くなられた。
亡くなる前年の93歳の時のインタビューを再放送しているのを、先日みて心から感動した。
早くそのことについてコメントしたかったが、すっかり遅くなってしまった。
やなせさんは、本当は大人を対象とした漫画家をめざしたが、なかなか目がでず・・・三越の包装紙のデザインをしたり(凄い!知らなかった)、「手のひらに太陽を」の作詞をしたりした(これもやなせさんだったとは・・・)。
漫画家としては、これという代表作を生み出せず日々が過ぎ、年齢を重ね、悶々とした時期を長く過ごしたという(お金には、他の仕事で問題はなかったらしいが)。
望んでいた自分の代表作・アンパンマンが売れ出したのは、なんと70歳近くで、大変遅咲きの漫画家だったという。
アンパンマンは、弱いヒーロー。水に濡れればダメになる。でも、戦争も経験し、正義の胡散臭さを身にしみるほど体験したやなせさんは、強いだけの正義を描くことができなかった。
最強ではないが、身近な人の幸せを願い、困った人を助けることこそが正義。飢えている人を飢えないですむようにできるのが正義と考えた。
だから、アンパンマンは自分の顔を食べさせ(自己犠牲)、人を元気づけ、自分はヨレヨレになってジャムおじさんに直してもらいに帰る。
そういうヒーローを、大人は「これじゃあ、人気はでない」といった。
でも、幼児達が文句なしに支持してくれたという。実は、最初は、幼児の本を書くことに自分も抵抗もあったという。でも、結局、気が付けば幼児が彼の作品の1番の理解者だったと気づいた。
そして、一番私が感動したのは、健康を害して仕事をもうやめようとした時、東北大震災が起きた。
アンパンマンを待望してくれる声に、辞めるわけにはいかないと被災地に劇団といっしょにでかけ歌も作り、被災者を励ましたという被災者へのメッセージの話。
僕の仕事で、何かが変えられるということはない。
汚れた水に1滴のきれいな水を足しても、きれいな水にはならないだろう。でも、信じて自分は1滴の水をたらし続ける。そうすると、他にも水をたらしてくれる人がたくさん現れてきて、絶望的と思われた水も、少しきれいになってくる。
瓦礫に囲まれていると絶望的になるかもしれないが、1歩ずつかたずけていけば、必ずその先には希望がある。僕は、そうして生きている。と話しているのを聞いて、胸にズシンと重く響いてくるものを感じた。
私も、その1滴の水になりたい、と心から思った。
それをして生きていくしかない。無駄に思えるような小さな1滴でも、心身を砕いてその1滴に力を注いで生きていこうと思った。
アンパンマンを幼児のために書くのに、彼が手をゆるめず、真正面に取り組んだのは、そのテーマソングに表れている。
なんのために生まれて なにをして生きるのか
こたえられないなんて そんなのはいやだ!
なにが君のしあわせ なにをしてよろこぶ
わからないままおわる そんなのはいやだ!
時ははやくすぎる 光る星は消える だから君はいくんだほほえんで
そう、時ははやくすぎるもの。消える前にしておきたいことが、私にもある。
微笑んで進んでいきたい。このいのちの星が消える前に。