Book off の愛用者の私。出口前の100円コーナーでふと出会ったこの本に涙がこぼれた。
「電池が切れるまで」こども病院からのメッセージ すずらんの会編
まずは、この本の題名になった「命」という詩からお届けしよう。
命 宮越 由貴奈(小学4年)
命はとても大切だ
人間が生きるための電池みたいだ
でも電池はいつか切れる
命もいつかはなくなる
電池はすぐにとりかえられるけど
命はそう簡単にはとりかえられない
何年も何年も
月日がたってやっと
神様から与えられるものだ
命がないと人間は生きられない
でも
「命なんかいらない。」
と言って
命をむだにする人もいる
まだたくさん命をつかえるのに
そんな人を見ると悲しくなる
命は休むことなく働いているのに
だから 私は命が疲れたと言うまで
せいいっぱい生きよう
この由貴奈ちゃんは、たくさんの病院の友達に勇気を与えながら、この詩を残して11歳で亡くなったという。でも、本を読んでいると、他の子ども達の中に由貴奈ちゃんが生きていることが、詩を通してわかる。
ここには、字を書き始めたばかりの4歳の小さい子供から高校2年生までの詩と絵が掲載されている。 絵の下地が黒なので暗い印象なのが気になったが、詩は病気の子供の心情が記されていて、貴重な資料ともいえる。
子供たちの詩の後に、その後の子供たち本人や、子供達の親などのメッセージがあり、院内学級で教えた先生の文章もあり、詩をより深い知ることができる。
先生が紹介した、院内学級に子どもを通わせているお母さんの詩もひとつ、お届けしよう。
親の思い
五体満足で育っている子どもをもつと
子どものいない人をうらやむことがある
切って縫って体にきずをもつ子どもをもつと
元気で普通の子どもをうらやましく思う
一生をハンディの残る子どもをもつと
一時の治療ですむ子どもをうらやましく思う
余命宣告されたり子どもの死んでしまった親は
ハンディが残ってでも生きている子どもをもつ親をうらやましく思う
子供ができない親は
産める親をうらやましく思う
腹のそこから大笑いしているそんな時もよいけれど
私は いつも微笑んでいられる1日1日、瞬間瞬間を大切にしたい
この病院(長野県立こども病院)では、それまで開院10年で血液・腫瘍科で500人以上の子どもを受診。内140人以上の子が長期入院し、治って退院していく子どもたちもいる一方で31人の子どもが亡くなったという。
最後に、医師のあとがきがあり、これもまた示唆に富んだ文章だったが、これはちょっと掲載が大変なので、興味を覚えてくださった方は本を読んでほしいと思う。自分の恵まれた境遇を振り返るにも貴重な本だった。