住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

万燈会法話②

2018年08月25日 15時18分56秒 | 仏教に関する様々なお話
さて、2日目のお寺では御堂一杯の参詣があり、ついつい、こんな話題から話し始めた。

「今世界的に宗教は衰退していて、アメリカのカトリック神父の不祥事が報道されたばかりではありますが、日曜日に教会に行く人も急減して教会自体の存続が危ぶまれていたりしますが、それはヨーロッパでも同様で、神聖なるものへの信仰心などというものが希薄となり利益至上主義、経済第一というような考えが世界を席巻しています。日本でも都市部を中心に葬儀もしない法事もしないという時代を迎えています。

そうした中で、このように暗くなってからの法会にもかかわらず、沢山のお参りがあるというのは一筋の光明を見る思いが致します。熱心なまた敬虔な仏教徒である皆様ですから日常過ごす中で、信仰についてまた教えについていろいろと疑問に思うこともあろうかと思いますが、何か質問があれば」と申しますと、早速に、「死ぬと生まれ変わるんですか」とのご質問をいただいた。

「はい、少なくともインド文化圏にあるアジアの人々はそう信じていますし、私たち日本人も江戸時代まではみんなそう思って生きてきました。極楽に逝くなどと阿弥陀様の浄土に逝くのも生まれ変わるからですね。死んで何もない、無に帰するというのなら浄土に逝くこともかないません。

臨死体験という言葉は聞いたことがあると思うのですが、病気や事故で身体が仮死状態になったりしたときに、身体から心が出て、病室の上の方から自分の身体に家族が泣いてすがる様子を見ているとか、光のトンネルを抜けてお花畑の中にいたといった体験のことですが、私どものお寺の檀家さんも、大腸のポリープの手術で麻酔を打たれていたところ、気がつくとお花畑にいて、向こうに川が流れていて、向こう岸では亡くなった人が手を振っていたのでスッと行きそうになったら、亡くなった旦那さんの声で「おーい芋を見に行けよ」と声がして、気がつくとベッドの中にいたということでした。2週間前に芋の苗を植えたところだったとのことでしたが、この話をまともに聞いてくれたのは住職さんだけですと感謝されました。

五蘊という言葉があります。般若心経にもありますが、色受想行識、色は形あるもので身体のことですね、受想行識は心の働きのことです。これら五つが私ですということで、大きくは心と体ですから、心と体は別の物だということです。私たちはこの身体が自分と思っていますが、体と心は分離する、身体の寿命が終わり分離することを死と言います。身体は荼毘にふされますが、心は身体から出て、四十九日の間三次元の世界に止まり、満中陰の法事の後来世に旅立っていきます。

生前の様子にしたがって、来世があると考えるのです。地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天の六つですが、身体を必要とする畜生、人間にはなりにくい、他は化生といって、心のエネルギーだけの存在ですから、スッと行きやすい。一番行きがちなのは餓鬼です。そこで日本の仏教ではよく施餓鬼をするわけで、今日も皆さん餓鬼に施す作法をしていただきました。

冒頭キリスト教の話もしましたが、キリスト教も実ははじめの頃は輪廻ということを認めていました。ローマ帝国の時代、つまり四世紀頃、時の皇帝が聖書にあった輪廻転生の記述を異端であるとして削除したと、ブライアン・L・ワイスというアメリカの精神科医が『前世療法』(PHP文庫)という本に書いています。当時巨大化しつつあった教会の権威を弱めることになるとして人類の救済が輪廻転生を繰り返すことによって行われるということを認めることが出来なかったということです。

ですから、何度も生まれ変わることによって、私たちは、過去世でやり残したことをしたり、いろいろなことを学び、精神的に清らかになるべく生きているということになります。ではなぜ、江戸時代の御先祖方がみんなそう考えていたのに、今の私たちはそうしたことを認めていない、もしくは信じられないのでしょうか。

それは明治時代に、近代科学文明が怒濤の如く流れ込み、西洋化する中で、輪廻などという考え方は前近代的な発想である、断じて認められない、それがまた仏教の近代化でもあると勘違いしてしまったから、仏教者も言わなくなり、坊さんたちも口をつぐんでしまったのです。しかし、アジアの仏教徒たちはみんな今でも、生まれ変わると思っています。日本の仏教学者の中には、前世の記憶が無いから生まれ変わりなどないと馬鹿なことを言う人もあります。お釈迦様のように修行してもいない人が、軽はずみに経典の随所に書かれていることを否定してよいはずがありません。・・・つづく



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