住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

あるべきようは3 (公民館でのお話草稿) 

2005年09月07日 13時09分43秒 | 仏教に関する様々なお話
こんな感じなのですが、少しでもインドのお釈迦様の雰囲気を感じていただけたなら、うれしいのですが。それで、この経典ははじめ、容色麗しい神様がお出ましになって、お釈迦様に「多くの神々や人々は幸せを望みつつ吉祥を考えてきました、最上の吉祥を説き給え」と申し上げます。それに答えてお釈迦様が幸せとは何かについて述べておられるのがこのお経です。

吉祥とは、人に成功や繁栄、幸せをもたらすものであり、そのまま幸せと言い換えてもいいものです。そこでこの吉祥経の内容を見ていくわけですが、そのまま読んでも良いのですが、このプリントでは、インドの古い慣習で人の生き方に四住期という考え方があるのですが、吉祥経をそれに従って四つの時期に分けて内容を見ています。

はじめに生まれてから親の所で生きる術を学ぶ学生期というのがあります。それから、家族を養い護る家住期、心の教えを学ぶ林住期、諸国を修行するために遍歴する遊行期があります。今日のインドでも、もちろんそのようにきっちりと住み替えて年を重ねていく人はあまりないといいますが、インドの人々の人生の捉え方として今も大切にされているものです。

ではまず学生期から見ていきましょう。人として生きる力を蓄える時期の幸せですが、
①愚かな人に近づかず、賢い人に親しむ。尊敬供養するに値する人を尊敬する。これは最上の吉祥である。
②適当なところに住み、先になされた功徳があり、正しい誓願を起こしている。これは最上の吉祥である。
③多くの見聞、技術、道徳を身につけて、きれいな言葉を語る。これは最上の吉祥である。

生きるために必要なものを蓄えることがここでの要点です。
人は人に学んでいくものです。と、ある南方仏教のお坊さんに教えていただきました。 南方の仏教では、今も目上のお坊さんには投地礼を三度して挨拶する習慣があります。そうして尊敬する心があってはじめて、その方から様々な教えを授かることが出来るのです。

どのような人を参考にし、尊敬して生きるかは、私たちにとってとても大切なことです。学も財もあるけれど、人の道に外れた人を手本にしていてはいけないのです。

この場合の賢い人とは、単に多くの事を知り語る人ではなく、心安らかで人に恨まれたり憎んだりということのない行いの清らかな人を指しています。特にその人の業績でなしに、そこに至る間に培った人格や考え方を尊敬すべきではないでしょうか。

そうした人たちを手本にして生きるのに相応しい場所に住まい、そして、善い行いの功徳を積むことを心がけ、それによってさらに正しい生き方に心を向けていくことも大切なことです。

そして、単に知識や学歴ではなく、より実用的な見聞や技術を身につけるべきであることはもとより、人として生きるための道徳やきれいな言葉も大切な要素です。

特に今の日本では重視されませんが、相手を尊重したきれいな言葉遣いは社会の中で自らが大切にされるためにも、とても重要なことです。また、道徳をわきまえていなくては、せっかく学んだ学問知識も正しく役立たないことは言うまでもありません。

次に、家住期です。結婚し家庭を持ち、家族、社会を養う時期です。
④父母を養い、妻子を愛し護る。混乱なき仕事をする。これは最上の吉祥である。
⑤施しと、法にかなう行い、親族を愛し護る。非難されない行いをする。これは最上の吉祥である。
⑥悪い行いをつつしみ離れ、酒類を飲むのを抑制し、徳行の実践を怠けないこと。これは最上の吉祥である。

結婚し、家族、親族そして地域社会をも導いていく存在としての役割を担う時期です。
これらのごく当然とも取れるものをクリアして初めて何の後ろめたさもない、誰からも非難されることのない幸せを享受できるのです。混乱なき仕事とは今様にはストレスの少ない仕事と言い換えれば分かりやすいでしょう。

また、法にかなう行いとは、より多くの者に利益がもたらされるように行うことです。欲や怒りにより、他を害するような行いをつつしみ、他の者と分かち合い共に幸せを感じられるよう行うことが大切です。

これに対し、自分の幸せだけを求めるばかりに悪いことをしでかすことは、今の社会問題でもあります。何でも出来る立場にあるこの時期、悪い行いをつつしむことは憂いや後悔を残すことなく幸せになるために不可欠なことです。

お金がたくさんあっても何かむなしさが残るのを多くの人が感じ、ボランティアに励む姿も見受けられます。徳のある善行が心豊かな幸せを感じさせてくれることは言うまでもありません。
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