活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

印刷文化史の切り口に

2011-06-17 15:01:46 | 活版印刷のふるさと紀行
 印刷文化について書いたり、話したりしていて、いまひとつ釈然としな
いことがあります。社会現象や人間の日常生活に密着している印刷であっ
てみると、「印刷の歩み」を歴史の本みたいに“時代”や“事象”によっ
て整理する方法だけでよいだろうかという疑問です。

 私たちにとって「印刷」はひじょうに身近かなもので、切り口を工夫す
ることによって、もっと生なましくて、いきいきした印刷文化史をまとめ
ることが出来るように思います。

 極端な例をあげましょう。
 たとえば、『美空ひばりと印刷』という切り口で考えるとします。
ひばりが「リンゴ追分」でしたか、注目を集めたのは昭和28年でした。
同じ年11月に平凡社から雑誌『平凡』が創刊され、またたくまに50年
代を代表する100万部雑誌になります。はたしてそのころの「印刷」は
どうだったでしょうか。

 ひばりのポスターはいわゆろ描き版でした。人工着色で総天然色?だっ
たのです。『平凡』の本文活字はオール写植ではありませんでした。
映画「リンゴ園の少女」のころになるとポスターはオフセットになります
が彼女の晩年「川の流れのように」の時代は、ポスターはレイアウトスキ
ャナ整版のバッチリしたものに、雑誌はぜんぶDTP誌面。
 つまり美空ひばりの活躍した40余年の間の印刷技術の変遷を辿ると、
戦後日本の印刷の歩みと世の中の動きがよくわかります。

 写真に『時事新報』を掲げましたが、『福澤諭吉と印刷』といった切り
口でも明治の活版印刷の揺籃期がよく理解できるのではないでしょうか。
『学問ノススメ』の初版は?『時事新報』の活字は?


 


 


コメント
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